久米郁男他『政治学』(30)
今回は、第10章 議会、第2節 日本の国会 第2項 法案審議の流れ をとりあげる。
国会は「国の唯一の立法機関」であり、法を制定する。行政は法を執行する。…現実はどうか?
法律はどのような過程を経て成立するのか? 内閣法制局は、内閣が提出する法律案が成立するまでの過程を、次のように説明している。(法律ができるまで、https://www.clb.go.jp/recent-laws/process/)
以下、1.と4.のみとりあげる。
(1) 法律案の原案作成
内閣が提出する法律案の原案の作成は、それを所管する各省庁において行われる。
各省庁は所管行政の遂行上決定された施策目標を実現するため、新たな法律の制定又は既存の法律の改正若しくは廃止の方針が決定されると、法律案の第一次案を作成する。
この第一次案を基に関係する省庁との意見調整等が行われる。
更に、審議会に対する諮問又は公聴会における意見聴取等を必要とする場合には、これらの手続を済ませる。そして、法律案提出の見通しがつくと、その主管省庁は、法文化の作業を行い、法律案の原案が出来上がる。
国会に提出される法案には、内閣が提出する法案と、議員が提出する法案がある。
内閣法制局の「過去の法律案の提出・成立件数一覧」によると、内閣が提出する法案の成立率は91%、議員が提出する法案の成立率は17%である。*1
議員が提出する法案は「議員立法」と呼ばれている。(議員立法の詳細は、次回以降とする)
日本の国会において成立する法律案の大多数が行政府たる内閣提出のものである。慣行として内閣提出の法律案を優先して審議する傾向にあり、議員の発議による法律案は提出されてもほとんど審議されることなく廃案または継続審議となることが多い。こうした背景から、国会議員による立法を特に議員立法と呼ぶようになった。(Wikipedia、議員立法)
内閣が提出する法案は、各省庁つまり国家公務員(官僚)が作成する。国会議員は、官僚の作成した法案を審議することがほとんどである。*2
(4) 国会における審議
内閣提出の法律案が衆議院又は参議院に提出されると、原則として、その法律案の提出を受けた議院の議長は、これを適当な委員会に付託する。
委員会における審議は、まず、国務大臣の法律案の提案理由説明から始まり、審査に入る。審査は、主として法律案に対する質疑応答の形式で進められる。
委員会における質疑、討論が終局したときは、委員長が、問題[?]を宣告して、表決に付す。
委員会における法律案の審議が終了すれば、その審議は、本会議に移行する。(内閣法制局)
衆議院の「議案の審査」のページでは、次のように説明されている。
議案が提出されると、議長はその議案を所管する委員会に付託する。
委員会では、議案提出者や担当大臣から提案理由の説明を聴取した後、各委員が、提出者、国務大臣その他の政府関係者などに一問一答の形式で質疑をする。
必要に応じ、参考人を招いて意見を聴くこともある。場合によっては、委員会の中に小委員会を設けたり、関係のある他の委員会と連合審査会を開いたりする。特に、一般の利害関係者や学識経験者などの公述人を招いて意見を聴く公聴会は、総予算については必ず開かなければならないが、重要議案についても開かれることがある。(衆議院、https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_gian.htm)
一般に「会議」は、「関係者が集まり、特定の目的(議題)に関して意見交換・審議し、合意・施策などの意思決定をすること」(Wikipedia)という理解であるが*3、「議会」(国会、委員会)となると、どうも趣が違うようだ。国務大臣(実質は、法案作成の官僚)に対する一問一答の質疑とは、事前通告の質問に官僚作成の答弁書を読み上げるだけである。与党議員と野党議員が議論の上、より良い法律を作ろうという「対話の場」にはなっていない。
論理的でない受け答え「首相の器ではない」 上西充子法政大教授 (https://mainichi.jp/articles/20201128/k00/00m/010/222000c)
*1:第183回常会(平成25年1月28日~6月26日)から、第203回臨時会(令和2年10月26日~12月 5日)まで。https://www.clb.go.jp/recent-laws/number/ (R3年8月17日閲覧)
*2:2019/11/26 日本では、立法・行政・司法(三権)は分立していなくて、癒着しているのではないか? でもふれた。
*3:会議の意味や本来の目的は? 意思決定の場としての効率よい会議の進め方。https://www.kashikaigishitsu.net/contents/005/page1.html も参照。