浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

モチベーションと組織の「まともさ」

山岸俊男監修『社会心理学』(21)

今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、内発的動機付け である。

本書は、認知(学習理論)や食欲(動因低減理論)から話を始めているが、そういった生物学寄りの話は、簡単にはいかないので、「社会心理」の範囲に限定して考えよう。ここで「社会心理」というのは、「組織(集団)」におけるメンバーの行動心理」という意味である。

「内発的動機づけとは何か、その仕組みとは?」(https://asana.com/ja/resources/intrinsic-motivation)という記事が、「内発的動機づけ」についてより詳しく、適切に説明していると思うので、これを参照しよう。

 

内発的動機づけと外発的動機付け

内発的動機づけとは、内的で本質的な欲求によって引き起こされる行動のことです。言い換えると、個人の行動の要因となる、内面から湧き上がる動機づけ (モチベーション) のことです。この場合、モチベーションは、報酬や称賛など、外部からの誘因に関係なく、自分自身からのみ発生しています[内的な欲求]。…個人的な満足感につながる動機づけです。内発的動機づけの原動力は、好奇心や新しいことへの挑戦などです

一方、外発的動機づけとは、内的な欲求からではなく、外的報酬や罰によって引き起こされる行動を指します。つまり、外発的動機づけに関しては、いずれにせよ外部誘因が存在するモチベーションであり、報酬や恐怖のどちらもが関与する場合がありうるということです。…懲罰を回避する、報酬を求めるなど、外的要因による動機づけです。

 

https://lsaglobal.com/blog/intrinsic-vs-extrinsic-motivation-create-high-performance/

 

動機づけの要因

「内発的動機づけ」の要因と「外発的動機づけ」の要因が、以下のようにまとめられている。

https://asana.com/ja/resources/intrinsic-motivation

 

私たちは、職場や学校や同好会や各種団体や国など様々な組織(集団)に所属している。その組織のメンバーとして、私たちはどのように振る舞うか? その組織の存立目的・態様によっては、内発的動機によって行動することも、外発的動機によって行動することもありえよう。

私は、「内発的動機づけ」の要因のうち、「好奇心」が最も重要な要因かなと思う。他の要因は「好奇心」から派生しているようである。この世界・社会は、「不思議なこと」、「わからないこと」に満ちている。大人たちは、わかったような顔をして「教育」をするが、例えば「人はなぜ死ぬのですか?」とか、「なぜ争いがなくならないのですか?」という疑問に、どれほど答えられるか。むしろ、そういう疑問を発しないこと、外発的動機づけを奨励することで世の中は回っていると教育することで、好奇心の芽を摘んでいるのではないか。

 

補足しておこう。「所属意識」とは、組織メンバーと協力するということである。そうすれば、組織を「自分の居場所として感じられるようになる」。「自己承認」とは、自分の「役割」を果たしていると認めることである。自分は劣っていると卑下することもなく、自分は優れていると尊大になることもない。

「報奨」とは、努力や行為に報い奨励することであるが、「報奨金」(→金銭)や「賞品」(→賞賛)を伴うことが多い。このような「報奨」はよく見られるところであるが、「報奨」目当ての行動(報奨が無ければ行動しない)は自発的な行動とは異質なものであることは明白である。なお類似の言葉として「称賛」があるが、これは金品を伴わないものであり、「挑戦」や「問題解決」をほめたたえるものである。

「競争」については、本ブログの読書ノート:アルフィ・コーン『競争社会をこえて』を参照。

 

私は、組織(「グローバル・コミュニティ」を含む)の「まともさ」は、メンバーが「内発的動機」により行動することが可能かどうかに規定されると考える。