今年最初の記事 「グレゴリオ暦」と「気候」(2023/1/4)で、
「1年」の定義は何か? 「1日」の定義は何か? 1年も1日も「時間」に関わる概念であり、同一の基準で定義されていれば、上記のような調整[閏年の調整]が必要ないのではないか。
と問うた。今回はこの続きである。(最初の議論が面倒な人/知っている人は、「ここまでの結論」に飛んでください)
<目次>
1日とは?
何をもって「1日」と称するのか? (以下を読む前に答えてみて下さい)
次の中学生向けの記事がわかりやすい。
https://kagakuhannou.net/diurnal-motion-of-the-sun/
NHKの中高生向けの次の動画もなかなか良くできていると思う。
「南中、南中高度、天頂、天の子午線、太陽(星)の日周運動、地球の自転」という言葉の説明ができれば、上記記事/動画は参照する必要がない。
しかし、上記記事/動画は、「太陽(星)の日周運動、地球の自転」を説明するものであって、どこにも明示的に「1日」の定義はされていない。
Wikipediaによれば、1日の定義は次のとおりである。
歴史的には、太陽日の長さが、日の長さであった。その後、均時差*1が発見されて太陽日が季節によって変化することがわかったので、太陽日を1年間にわたって平均した平均太陽日が1日の定義となった。(Wikipedia、日)
太陽日とは、
われわれは太陽の日周運動をもとにした時間で生活している。つまり、日の出とともに起きて活動を初め、太陽が南中(真南に位置すること)するころに休憩し、日没後は休むという感じである。だから、太陽が南中してから再び南中するまでを1日とした方が都合がよい。これを太陽日という。(山賀進、https://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/jikokutokoyomi-01.htm)
恒星日とは、
遠い恒星は見かけの位置を変えないので、基準として適している。つまり、ある恒星が南中から南中までの周期を1日とするのである。これを恒星日という。1恒星日=23時間56分4秒。
この周期はわれわれがふつう1日としている24時間より約4分短い。だから、ある恒星の南中時刻は1日で4分ずつ早くなる。1か月では2時間早くなり、半年後には12時間早くなる。(山賀進)
であれば、「適当な恒星の南中から南中までの周期を1日とする」のが一番良いのだろうか。(太陽日であれ、恒星日であれ、地球の自転に基づく定義である)
ここでWikipediaの説明に戻る。
20世紀なかばごろ、わずかではあるが地球の自転が徐々に遅くなっている(1日の時間が徐々に延びている)ということが知られるようになり、1956年の国際度量衡委員会で、平均太陽時とも地球の自転とも無関係な秒を定め、秒を基にして他の時間単位を定めることにした。これによって、「日によって秒を定める」から「秒によって日を定める」へと変化し、時間単位の定義と従属との関係が逆転した。
その結果、現代の計量単位系においては「秒 (s)」が時間の基本単位となっており、日は秒に換算して位置付けている(1日=24時間、1時間=60分、1分=60秒)ので、単純な掛け算によって、1日 = 24時間 = 1440分 = 86400秒とされる。(Wikipedia、日)
つまり、「86400秒を1日とする」というのが、最新の定義で科学的に最も妥当ということになるのだろうか。こうなると、「秒」の定義*2が気になるところであるが、これは難しい(私には理解できない)。
ただし、日本の計量法体系では、「日」は時間の単位とは定義されておらず、暦の単位として位置づけられている。すなわち、計量法における時間の単位は、10の整数乗倍のものを除いては、秒・分・時だけである。日・週・月・年は暦の単位であり、計量法における単位の使用規制の対象外である。したがって、暦の単位として「日(単位:d)」を取引または証明に用いることは可能である。(Wikipedia、日)
「日」(週、月、年も)を「時間の単位」ではなく「暦の単位」とする、これは妥当な考え方である。先の「86400秒を1日とする」というのは、「1日は(およそ)86400秒である」というのではなく、「86400秒を1日と言い換えることができる」という意味である。
ここでは物理的時間ではなく、「暦の時間」が関心事なので、話を「暦の時間」に限定しよう。
ということで、暫定的に「1日とは、平均太陽日の長さ(時間間隔)」であるとしておこう。
「月」と「週」
月の「満ち欠け」を元に決めた暦は太陰暦と言い、地球から月を見ると月の明るい部分の形は毎日変化し約29.5日周期で同じ形となっており、この変化の周期を元に暦を決めたものである。(Wikipedia、月)
一年を太陽の運行から定める太陽暦は、ナイル川の氾濫が太陽年の周期で起こる古代エジプトで発明され、古代ローマのユリウス暦に取り込まれてヨーロッパに広まり、改暦を経たグレゴリオ暦として世界中に広まり、時間の「月」はその基準を天体の月から太陽へ移されることになった。
現代では、月の変化の周期を暦として定める(太陰暦の)必要性は無いと考えられるので、「1年」を区分するのに、12月にこだわる必要はなく、適宜に区分すればよいと考えられる。
週…日数7日を単位とした暦法上の周期をいう。週の起源は古く、諸説があり、古代ローマでは8日の週が、古代エジプトでは10日の週が用いられた。バビロニアでは各月の7、14、21、28日を安息日としたといわれる。ユダヤ人は、『旧約聖書』創世記に、神が6日の間に天地を創造し、7日目に休息した、とあることから、7日の週を用い、7日目をサバットとよんで休日とした。このサバットは現在の週日の土曜日に相当する。
暦法を組み立てている日、月、年はそれぞれ、昼夜、月の満ち欠け、季節の移り変わる太陽の運行という自然の周期であるが、週だけは人工的な周期である。(渡辺敏夫、日本大百科全書)
週は人工的な周期である。従って、(7日の)「週」というものにこだわる必要はなく、必要あれば、適宜に区分して定めればよい。
1年とは?
Wikipediaによれば、1年の定義は次のとおりである。
地球上で生活する上で、1年の長さとは春夏秋冬という季節が一巡する期間を指す。そしてこれは、地上から見た太陽の高さと日照時間の変化でもたらされる。
太陽年とは、
春分点を基準として、地球が太陽の周りを公転するのにかかる時間の平均値。約365.24219日。
地球の自転軸は歳差により約26,000年の周期で自転と反対方向に回転するため、太陽に対する地球の自転軸の向きは、空間に静止した座標系で考えた1周(恒星年、365.25636日)よりも短い時間でもとに戻る。この向きこそが地球の季節を決定しているので、暦の1年は恒星年でなく太陽年を用いて決められている。(天文学辞典、https://astro-dic.jp/tropical-year/)
この説明を十分に理解することは難しい。(天文学辞典は、この説明を高校生レベルと言っている)
ここでは、太陽年を「地球が太陽の周りを公転するのにかかる時間の平均値」と理解しておく。ただそれではちょっとお粗末なので、NHKの動画を見ておこう。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005110148_00000
難しい言葉を使わずに、星の動きに関連付けて、地球の公転を説明しているので、わかりやすいかと思う。
ここで留意しておきたいのは、1年を「日」で測定しているという点である。それは「平均値」であり、約365.24219日とされている。「日」(太陽日)とは先に見たように、地球の自転をベースにしたものである*3が、自転と公転では(直観的に)線形関係にはないと考えられるので、半端な365.24219日のような数字が出てくる。
ここまでの結論
- 1日とは「地球が1回転するのにかかる時間」である。[自転周期]
- 1年とは「地球が太陽のまわりを1回転するのにかかる時間」である。約365.24219日。[公転周期]
- 1日も1年もさまざまな要因で変化するので、不変の時間ではない。
- 現在は、「日」は「時間」の単位ではなく「暦」の単位とされる。
- 「月」は、月の運行に基づくものであるが、現在は意味を持たない。
- 「曜日」は自然現象に基づくものではなく、人為的な区分である。
新しいカレンダーを考える
上記結論を前提とすれば、新しいカレンダーを考えることができる。
とはいえ、全く突飛なカレンダーを作ろうというのではなく、基本的な前提がある。それは、
<日々の生活を充実させ、四季の巡りを感受する心を大切にする>
という価値前提である。
この価値前提と上記前提から、自転ベースの1日と公転ベースの1年の概念を保持しつつ、「月により日数が変わること(30日と31日)、2月という変な月があること(28日と29日)」という「美しくない配分」を改めたいと思うのである。(まあ、見方によってはどうでもよい話だが…)。あわせて、「曜日」についても考えたい。
まっさきに思い浮かぶのは、「二十四節気と七十二候」(「グレゴリオ暦」と「気候」参照)である。
七十二候って何? 四季の移ろいと日本の気候一年図(https://www.beatstaff.com/post-289/)
即ち、1年を360日(公転の円は360度)とし、これを24等分したものを「節」(15日)と呼ぶ(従来の「月」は廃止する)。さらに3等分したものを「候」(5日)と呼ぶ。
しかしこれだけでは、5.24219日の差異が生じる。1日と1年の両方を大切にしたいので、これは問題である。
そこで私は、これは平面で考えていたのでは埒があかない、立体的に考えなくてはならないと思いつき、「棒を立てる」ことにした。
円は、地球の公転である(360日)。日と年(365.24219日)の調整は、環の不足を補うものではなく、一つの環(1年)と次の一つの環(1年)を繋ぐことを意味する。連結棒である。ただ連結棒と呼ぶのは風情が無いので、「天橋立」(あまのはしだて)と呼ぶことにしよう*4。即ち、「1年は72候と天橋立からなる」と考えるのである。
では、特別候たる天橋立は具体的に何日とするか?
差異は、5.24219日なので、最低5日は必要である。そのようにしても、0.24219日の差異が残る。この差異を解消するためには、4年に1度は6日にする必要がある。ということは、これはユリウス暦と同じ考え方である。しかるに365.24219日は測定値であり、常に精度の問題は残る*5。そこでグレゴリオ暦が出てきたのであるが、400年に97回の調整とかそんなことは言わずに、簡便に調整できるように思われる。
それは、<差異累計が1日を超える年の年末に調整する>というやり方である。これは、初期値365.24219が与えられれば、足し算・引き算で計算できる。(途中で、初期値が見直されても良い)
実務的にはここは大事なところだろうが、私の今回の記事の力点は、<日々の生活を充実させ、四季の巡りを感受する心を大切にする>という価値前提と「天橋立」という連結棒のアイデアにある。
曜日を考える
カレンダーに「曜日」はつきものである。しかし、曜日の数を7にする理由はないので、私はこれを「候」の5曜日とするのが、上述のところから妥当ではないかと考える。名称は何でもよい。第X候の1,2,3,4,5と呼んでも良い。(少なくとも、日月火水木金土の名称は廃止する)。
こういう些細な提案でも、実際に導入しようとなると法整備が大変で、「専門家」を集めて「ああでもない、こうでもない」という議論になるのだろう。
*1:均時差…天球上を一定な速さで動くと考えた平均太陽と、視太陽(真太陽)との移動の差。(Wikipedia)
*2:秒(記号は s)は、時間の SI 単位であり、セシウム周波数 ∆νCs、すなわち、セシウム 133 原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位 Hz(s−1 に等しい)で表したときに、その数値を 9192631770 と定めることによって定義される。(Wikipedia、秒)
*3:
ちなみに天文学辞典は、太陽日を次のように説明している。
太陽日とはいわゆる「1日」のことである。視太陽時あるいは真太陽時で測った1日、すなわち太陽が一度南中してから次に南中するまでの時間を視太陽日あるいは真太陽日と呼び、季節によらず一様な時刻系である平均太陽時で測った1日を平均太陽日と呼ぶ。平均太陽日を基準とすると、視太陽日の長さは季節により±30秒程度の幅で変動する。視太陽時と平均太陽時の差は均時差と呼ばれる。……
*4:太陽は銀河中心の周りを回転しているので、地球は全く同じ平面を繰返し回転しているわけではない。これをイメージとして図示するためにも「天橋立」はある。違うかな?
銀河系と太陽系 黄道座標系(https://astro-dic.jp/ecliptic-coordinate-system/)
*5:現在の太陽年は、平均して約365.242189日(2015年時点)とされる。