浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

赤字公債、子ども世代への付け回し

香取照幸『教養としての社会保障』(20)

今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 である。

香取のあげている数字を最近のものに置き換えて読んでみよう。

日本の債務残高(国と地方の長期債務残高)は、約1200兆円あり、GDP国内総生産)の約2.2倍ある(2020年度末見通)*1。単純に言えば、収入の約2倍の借金があるといったイメージか。

「国に借金があっても国民が資産を持っているから大丈夫」とか「外国政府に借金しているわけではない」といった意見を述べる経済学者がいる。香取は、「経済学者ではないので、そういった意見が的を射ているかどうか判断するのは控える」と前置きしたうえで、次のように述べている。

実際に霞が関で長い間行政に携わってきた者の実感で申し上げれば、巨額の財政赤字は政府の政策選択の幅を狭め、自由度を奪い、問題解決能力を著しく阻害していることは事実です。さらに言えば、今の我が国の財政構造は恒常的に財政赤字を積み上げていく構造になっています。毎年のように、もっと言えば、日々借金を積み上げながら暮らしているのが今の日本です。

確かに、巨額の財政赤字は政府の政策選択の幅を狭めているようだ。(増税には、なかなか合意を得られない)

2021年度の予算は、一般歳出:67兆円、地方交付税等:16兆円、国債費(償還):24兆円、総額:107兆円の歳出であり、歳入は、税収:57兆円、公債:44兆円、その他を含めて、総額:107兆円であり、公債依存度は41%である。(2020年度の当初予算では、公債依存度32%)

香取は、次のように言っている。

私たちは、自分たちが受けている行政サービスや社会保障給付の費用、借金返済の全額を負担していません支払いの4分の1は手形を切って子ども世代に任せて先送りしている。それを毎年のように繰り返し、積みあがった借金が1100兆円[1200兆円]。これが現実の姿です。

毎年の予算編成で足りない分を補うために発行する公債(借金)を、特例公債(=赤字公債)というが、その推移は次図のとおりである。

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2020年度の特例公債(=赤字公債)の急増は、もちろん新型コロナ対策のためである。

我々の世代は自らの世代の社会を支えるために必要な費用を全部負担しないで子や孫の世代に先送りしているのです。これこそが最大の付け回し、世代間格差の元凶と言ってもいいような話ではないでしょうか。

若者世代は、(1)風邪で済むような新型コロナのために、ツケをまわされてはかなわない。(2)親世代を見捨てるわけにはいかないから、費用は負担しよう。どう考えるだろうか。

親世代(高齢世代)は、(1)まだ死にたくない。子どもたちの成長を見届けたい。(2)そろそろ寿命だから、コロナで死ぬようなことがあっても致し方ない。子どもたちに負担をかけることはしたくない。どう考えるだろうか。

 

(補足)

ツケとは、帳簿につけておくこと。請求書。ツケ回しとは、請求書を他人に回して、自分が払わないこと。

キャバクラ[接待を伴う飲食店]でのキャバ嬢の付け回しとは異なる。

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中洲で最も愛されたキャバ嬢(https://luline.jp/magazine/35517)…この記事なかなか面白い。

*1:我が国の財政事情(R3年政府予算案)。2021年度もほぼ同様な見通し。