浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

私たち

私と他者(2)

立岩真也『私的所有論』(16) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第3項 他者である私 である。本項は1頁ちょっとの分量しかないが、なかなか手強くてよく分からないい。(私のコメントはどうでもよいので、引用した立岩の文章をよく読んでみて…

財政とは何か? 量入制出の原則 量出制入の原則 大英博物館

神野直彦『財政学』(1) 今回は、第1部 財政学のパースペクティブ 第1章 財政学への旅立ち である。 神野は述べている。 学問の世界を旅する者は、謙虚に先達の知恵に学ばなければならない。先達の知恵に学ぶことは、人間の能力の可能性を信じることでもあ…

主権国家システムの形成

久米郁男他『政治学』(16) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第2節 国民国家システムの形成と拡大 である。 本書における「国家」の定義とは、 近代ヨーロッパが生みだした近代主権国家に限定した場合の近代国家を次のように定義する。 第1に、国境と…

リスクの偏在と社会保障

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(5)*1 今回は、第5章 包摂政策を考える 第2節 これまでの社会保障を考える をとりあげる。阿部は、「現状の社会保障制度では、現代の貧困や社会的排除のリスクに対応することは難しい」という…

私と他者

立岩真也『私的所有論』(15) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第2項 私でないのは私達ではない である。 前項(制御しないという思想)においては、他者や世界は、「私が制御しないもの」、「私ではないもの」として在ると述べられていた。…

現代社会の規範問題

平野・亀本・服部『法哲学』(55) 第6章 法哲学の現代的課題 第3節 現代法の新たな課題 である。本節は、現代社会において特に大きな規範問題を生んでいると思われる「医療技術の進歩」、「環境保護の必要」、「情報社会の進展」をとりあげている(本書…

秩序ある世界(平和な世界)はいかにして形成されるのか?

久米郁男他『政治学』(15) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第1節 国際関係の特質 である。 古城(第7章担当)は、「国際関係の構造は、アナーキーであるとみなされている」と述べている。「構造」とか「アナーキー」という言葉の使い方が適切とは思…

マタイ効果:持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまで取り上げられるであろう。(マタイ福音書13章12節)

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(6) 今回は、第4章 本当はこわい格差の話 第5節 格差の増幅 のうち、「マタイ効果」をとりあげよう。 「マタイ効果」とは、「格差は自ら増長する傾向があり、最初の小さい格差は、次の格差を…

良識ある人間は、「他者性の破壊を抑制しようとする感覚」を持ち合わせているだろう。

立岩真也『私的所有論』(14) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第1項 制御しないという思想 である。 先に見た私的所有を正当化しようとする言説は、あるものがある人が作り出し制御するものであることによって、そのものがその人のものである…

28歳ローラの政治的影響力

インスタグラムで520万人のフォロワーを持つローラ(タレント、モデル)が、辺野古基地反対署名*1を呼びかけ話題を呼んでいる。この署名には、沖縄出身のタレント・りゅうちぇるをはじめ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔、ミュージシャンであるASIAN KUNG…

フェミニズムと多文化主義 問われる自由主義的な法秩序構成

平野・亀本・服部『法哲学』(54) 第6章 法哲学の現代的課題 第2節 同一性と差異 である。 人は、同じ人間であっても、性別、民族、人種、国籍、宗教、思想信条、年齢、健康、障害、能力、職業、趣味などの差異がある。そこには、同じ「人間」であるこ…

世界の中心で「君が代」を歌う

久米郁男他『政治学』(14) 今回は、第6章 市民社会と国民国家 第3節 ナショナリズムとコスモポリタニズム のうち、ナショナリズムをとりあげようと思ったのだが、どうも気分が乗らないのでやめにする。話題としては、ベネディクト・アンダーソンの『想…

地域コミュニティ 明るい農村 ひるのいこい

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(5) 今回は、第4章 本当はこわい格差の話 第3節 格差とコミュニティ をとりあげる。 地域コミュニティ 阪神淡路大震災後に、仮設住宅で多くの孤独死が起きてしまった反省もあって、東日本大震…

私の臓器や性は、根本的なもので、譲渡してはならないものなのか?

立岩真也『私的所有論』(13) 今回は、第3章 批判はどこまで行けているか 第3節 交換と贈与について である。 贈与と売買の差異および共通性 臓器の売買を認めている国は無い。代理母契約についても大勢としては認められていない。 では、善意の提供は認…

民主制と人権 市民的自由とは?

平野・亀本・服部『法哲学』(53) 第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か の続きである。 投票制度としての民主制 経済学者の一部は、社会的選択理論と呼ばれる分野で、民主制を純粋な投票集計制度とみなして精緻な分析を展開している。……

人権とは何でしょうか? 谷川俊太郎訳の「世界人権宣言」

一昨日の記事(2018/11/17、セックスワーカーから繊維工場労働者へ ファストファッションの光と影 エシカル・ファッション)は、今回の「人権」の記事のイントロとして書いたものである。 ファストファッションの陰で起きている環境破壊や人権侵害、搾取。 …

セックスワーカーから繊維工場労働者へ ファストファッションの光と影 エシカル・ファッション

次の動画をご覧ください。エシカルファッション(ethical fashion)の話です。 鎌田安里紗「ベルリンの社会派ファッションショー」 エシカルファッションについて [モーニングCROSS] 2013年4月、バングラデシュの首都ダッカのラナ・プラザという縫製工場が倒…

市民社会の多義性 市民団体の可能性

久米郁男他『政治学』(13) 今回は、第6章 市民社会と国民国家 第2節 市民社会 である。本書を読む前に、植村邦彦*1に対するインタビュー記事<日本に「市民社会」は存在しないのか?>(2018/1/12) を参照しよう。 civil societyという言葉は、当初は…

社会の仕組みが、人々をより孤立へ、排除へ、貧困へ、追い込んでいるのではないだろうか?

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(4) 今回は、第4章 本当はこわい格差の話 第1節 排除と格差、第2節 格差と人間関係 をとりあげる。 社会的排除とは、社会の中で「居場所」がなく、「役割」がなく、他者との「つながり」がない…

人工授精・体外受精等の生殖技術は、富裕層のためのものなのか? From Russia With Love

立岩真也『私的所有論』(12) 第3章 批判はどこまで行けているか は、人工授精・体外受精等の生殖技術への批判の言説を検討している。今回は、第2節 公平という視点 である。本章は、「人工授精・体外受精等の生殖技術」について議論しているが、これは…

自由主義とブルジョアジー(城壁の中の住民)

平野・亀本・服部『法哲学』(52) 現在、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か を読んでいるところだが、今回は、本書を離れて、「自由主義(liberalism)」について、「ブリタニカ国際大百科事典」(以下B)と「日本大百科全書」(以下…

自由と民主主義

平野・亀本・服部『法哲学』(51) 今回は、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か の続きである。 亀本(本節担当)は、自由とデモクラシーとの関係を以下のように述べている。 デモクラシーと自由 民主制は、支配者と被支配者の同一性と…

28歳テイラー・スウィフトの政治的影響力

今回は、第6章 市民社会と国民国家 第1節 「公」と「私」 である。…最初の二つは内容が無いので、そこを飛ばして、フェミニズムの項だけ見てもらっても構わない。トランプ大統領、テイラー・スウィフト、安倍首相、綾瀬はるか、石原さとみ

私の居場所がない 社会的排除と包摂

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(3) 今回は、第3章 「つながり」「役割」「居場所」をとりあげる。 社会的排除 人の生には、金銭的・物質的な指標では測れない、「質の問題」があることも事実である。ある程度の水準の金銭的・…

<「Aとも言えるが Bとも言える」は、何も考えていないだけ>なのだろうか?

たまたま、<「Aとも言えるが Bとも言える」は、何も考えていないだけ。>という記事が目に入ったので、これについて少し考えてみよう。 ブロガーの「ちきりん」さん(以下、Yと呼ぶ*1)が、こんなことを言っているらしい。検索してみたら、<「Aともいえる…

生殖医療技術と生命倫理 夫のものではない精子、妻のものではない卵子を使って子どもを持ちますか?

立岩真也『私的所有論』(11) 第3章 批判はどこまで行けているか は、人工授精・体外受精等の生殖技術への批判の言説を検討している。前回は、その内容をみる前の予備知識の収集で終わった。立岩は、このテーマを「私的所有・自己決定、市場への境界設定…

デモクラシーとは何か?

平野・亀本・服部『法哲学』(50) 今回は、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か である。 「デモクラシー」という言葉の原義は、「民衆による支配」である。デモクラシーという言葉は、その制度面に着目するときは「民主制」と訳され、…

目に見えない権力 パノプティコン

久米郁男他『政治学』(11) 今回は、第5章 国家と権力 第3節 権力をめぐる諸理論 である。*1 どのような国家観をとるにせよ、政治の問題を考える上で、権力の問題は、議論の中心的な位置を占めざるを得ない。しかしながら、権力とは何か、ということを巡…

いくらお金があれば、「健康で文化的な最低限度の生活」を送れるのか?

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(2) 前回の記事(ケンカツ(健康で文化的な最低限度の生活)、「ふつうの生活」)の続きです。 「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護の基準が、来年2019年度より見直される。生…

不妊治療 生命倫理

立岩真也『私的所有論』(10) 今回は、第3章 批判はどこまで行けているか 第1節 自己決定の条件 である。本章のタイトルにある「批判」とは、「生殖技術(特に代理出産)に対する(倫理的)批判」である。第1節は、この批判を「自己決定」の観点から検…