気の向くままに

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

私たち

目に見えない権力 パノプティコン

久米郁男他『政治学』(11) 今回は、第5章 国家と権力 第3節 権力をめぐる諸理論 である。*1 どのような国家観をとるにせよ、政治の問題を考える上で、権力の問題は、議論の中心的な位置を占めざるを得ない。しかしながら、権力とは何か、ということを巡…

いくらお金があれば、「健康で文化的な最低限度の生活」を送れるのか?

格差社会(7) 前回の記事(ケンカツ(健康で文化的な最低限度の生活)、「ふつうの生活」)の続きです。 「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護の基準が、来年2019年度より見直される。生活保護の中核となる「生活扶助」*1が、67%の世帯で…

不妊治療 生命倫理

立岩真也『私的所有論』(10) 今回は、第3章 批判はどこまで行けているか 第1節 自己決定の条件 である。本章のタイトルにある「批判」とは、「生殖技術(特に代理出産)に対する(倫理的)批判」である。第1節は、この批判を「自己決定」の観点から検…

法と経済学 コースの定理

平野・亀本・服部『法哲学』(49) 今回は、第5章 法的思考 第3節 法的思考と経済学的思考 である。 「法と経済学」または「法の経済分析」と呼ばれる法アプローチは、法と経済のかかわりを説くというよりも、法学の内部に経済学的思考を導入しようとする…

強行採決で成立した法令は遵守する必要がない !?

久米郁男他『政治学』(10) 今回は、第5章 国家と権力 第2節 近代国家とその正統化原理 である。 2013年以降、強行採決が以下の通り行われた。(Wikipedia) 特定秘密保護法(2013年) 安全保障関連法案(2015年) TPP承認案、関連法案(2016年) 介護保険…

におい(匂い、臭い)③ スメルハラスメント(スメハラ)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(15) 化粧品会社マンダムの調査によると、職場の「嫌だ」と感じるニオイは、1位は「体臭」で64.9%、続いて「口臭」59.3%、「タバコのニオイ」55.5%である。(2017/5/25、https://www.mandom.co.jp/releas…

入院生活 人の優しさ

先日、腰痛に関する記事を書いて数日後の夜、トイレに行こうと体を動かそうとした瞬間、腰に激痛が走り、全く身動きできないことに気づいた。幸い隣に妻が寝ていたので、救急車を呼んでもらった*1(一人で寝る時は、携帯など外部との連絡手段を確保している…

プラシーボ効果 現代の国民病「腰痛・肩こり」は、治療できません

私は、基本的に自分語りをしない方針なのですが、今回は自分語りから話を始めます。 先日、咳をしたとき、腰を痛めてしまいました(以前、ぎっくり腰になったこともあります)。長年のデスクワーク(姿勢の悪さ)による疲労が閾値を超えたものではないかと思…

ケンカツ(健康で文化的な最低限度の生活)、「ふつうの生活」

格差社会(6) 先週より、生活保護をテーマにしたドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)が始まった。 日本国憲法第25条 第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 第2項 国は、すべての生活部面につい…

私的所有の無根拠と根拠

立岩真也『私的所有論』(9) 本章(第2章)で、立岩が言わんとしていたことは何か。 何がある人のもとにあるものとして、決定できるものとして、取得できるものとして、譲渡できるもの、交換できるものとしてあるのか、またないのか。そしてそれはなぜか。…

法的正当化、解釈の検算、整合性、理性性

平野・亀本・服部『法哲学』(48) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第3項 解釈技法の使い方 の続きである。 法的正当化に対する制約 法的な正当化には、それを他の種類の正当化から区別する制約がある。第1に、法的正当化において援用…

三つの国家観

久米郁男他『政治学』(9) 今回は、第5章 国家と権力 第1節 三つの国家観である。 近代国家の定義 本書は、近代ヨーロッパが生みだした近代主権国家に限定した場合の近代国家を次のように定義する。 第1に、国境というかたちで明確に区切られた固定的な領…

内破、スプラッタ・イマジネーション(血しぶきの想像力)

Twitterより。(「スレッド」機能を使ったので、表示が重複しているようです。) ①以下は『名門大学の「教養」』(2011年、主婦と生活社)から、高橋敏夫(肩書省略)の発言の引用です。(P268-269)※ なお、このツイートは、「スレッド」機能を使ってみました。…

教養 多様な個性 ダイバーシティー(多様性)

格差社会(5) 前回までの統計数値の検討は一休みして、「企業社会と個性」について考えてみよう。これを「格差社会」の文脈で語ることが適切であるかどうかはわからないが…。 以下は、『名門大学の「教養」』(2011年、主婦と生活社)の早稲田大学編(2008…

Twitterリストによる情報収集

Twitterで何が可能か。もちろん呟いているだけでも良いのですが、私は関心ある事柄に関する「最新情報」を収集するのに役立つのではないかと考えています。 多種多様な人や組織をフォローしようにもタイムラインを読み切れない。そこでTwitterの「リスト機能…

サバイバル・ロッタリー(臓器くじ) ハッピー・リタイアメント法(老人駆除法)

立岩真也『私的所有論』(8) 今回は、第2章 私的所有の無根拠と根拠 第4節 正当化の不可能性 第1項 サバイバル・ロッタリーである。 哲学者(倫理学者)のジョン・ハリス(John Harris、1945-)は、次のような思考実験(臓器くじ=サバイバル・ロッタリ…

「虚偽の文書」をどう解釈すべきか?

平野・亀本・服部『法哲学』(47) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第3項 解釈技法の使い方 である。解釈技法が、法解釈の実際の場面でどのように使用されるべきかについて述べられている。 以下の議論は、抽象的でたぶん面白くないだ…

自分の居場所がない 社会保障を考える

久米郁男他『政治学』(8) 第4章 福祉国家 の構成は、第1節 福祉国家の政策レパートリー(公的扶助、社会保障、社会扶助)、第2節 福祉国家をもたらしたもの 第3節 福祉国家がもたらしたもの である。今回は、第2節、第3節をとりあげようと思っていたのだ…

正規労働と非正規労働 どのような「格差」があるのだろうか?

格差社会(5) 次のグラフは、平均年収を、(事業規模別)正規労働者・非正規労働者別にみたものである。(正規労働、非正規労働の意味は後述) このグラフを見れば、一目瞭然だが、 ・非正規労働者の年収は、事業規模とはほとんど関係ない。 ・正規労働者…

コモンズの悲劇(2) ウンコな議論?

立岩真也『私的所有論』(7) 共有地(コモンズ)の悲劇とは、「多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって資源の枯渇を招いてしまうという経済学における法則」*1(Wikipedia)であった。例えば、牧草地とか漁場が、共有地(コモンズ)である。…

概念法学と感情法学

平野・亀本・服部『法哲学』(46) 法解釈の話を、六法全書に書かれている法の解釈に限定すべきではない。会社をはじめとする様々な組織における各種のルールをどう考えるかという話でもある。 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第2項 …

将来に対する不安 社会保障制度は機能しているのか?

久米郁男他『政治学』(7) まず最初に、次のグラフを見てみよう。これは、全国の15~64歳の働く人の意識調査*1の一部で、「将来に対する不安」を聞いたものである。(n=1036) 将来に対する不安を「非常に感じる」が38%、「やや感じる」が39%で、…

賃金構造基本統計調査 - 大企業の課長の年収はどれくらいか?

格差社会(4) 「格差」の話は、もう少しお預けにして、給与の統計を見ておこう。前回は、国税庁の「(平成28年)民間給与実態統計調査」(H29/9)であったが、今回は、厚労省の「(平成29 年)賃金構造基本統計調査」(H30/2)である。 これはどういう統計…

おならをして、犬を叱る

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コモンズの悲劇

立岩真也『私的所有論』(6) 第2章 私的所有の無根拠と根拠 第3節 効果による正当化と正当化の不可能性 第3項に、共有地(コモンズ)の悲劇がとりあげられている。「コモンズの悲劇」といっても、ドラマティックな話ではない。しかし、「社会の有りよう」…

杓子定規な考え方を打破する

平野・亀本・服部『法哲学』(45) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第2項 解釈の技法 である。 この「解釈の技法」の話は、法解釈にとどまらず、円滑なコミュニケーションのためには、非常に有用な技法である。場合によっては、屁理屈…

貧困とセーフティネット 生活保護とスティグマ

久米郁男他『政治学』(6) 今回は、第4章 福祉国家 第1節 福祉国家の政策レパートリー である。 病気、老後の不安、失業、子育て等にどう対処するのかという話である。「そんなもの、関係ない」などと思っていると痛い目に合う。 本書は、福祉国家が提供…

民間給与実態統計調査 - あなたの給与はどのレベル?

格差社会(3)*1 私たちは、社会生活を送るにあたり(世の中で生きていくためには)、それなりの「衣・食・住」を必要とする。必要な衣食住は「お金」を媒介として得られる。その「お金」は、多くの人にとって、会社等で働くことによって得られる。それは「…

人間の敗北である単なる事実を正義と言いなす

立岩真也『私的所有論』(5) 立岩は、決定の分散と集権について、次のように述べていた。所有の「初期値」をなぜ問題にしないのか? 参照。 決定の分散が決定の集権化よりも好ましいものだとしても、それはある特定の、例えばこの社会における分散された決…

「法の欠缺」(ルールの不存在)に、どう対処すべきか?

平野・亀本・服部『法哲学』(44) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第1項 法の解釈とは何か である。*1 ここで「法」を、いろいろな組織、団体、グループの決め事、行動の手順(仮に「ルール」と呼んでおく)と考えれば、ルールの解釈…