浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

私たち

経済成長と社会保障の関係をどう考えたらよいのか?

香取照幸『教養としての社会保障』(6) 今回は、第3章 日本の社会保障-戦後日本で実現した「皆保険」という奇跡 の続き(p.74~)である。 まず、「高度成長との二人三脚」という節で、香取は以下のようなことを述べている。 皆保険制度ができた(1961年…

動物の行動は、「協力」によって特徴づけられている。人間は?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(5) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第3節 現実の自然状態 (p.32~) である。 競争と協力のどちらが優勢かを比較してみるために、まず自然界に目を向けてみることにしよう。…動物界の競争は、…

「植物人間」や「乳幼児」はもとより、「偽大人」であっても、共生社会の一員である

立岩真也『私的所有論』(23) 今回は、安楽死・尊厳死について書こうと思っていたのだが、後でもう少し詳しい話があるようなので、後回しにして、第4章 他者 第3節 自己決定 の第4項に進もう。 4 決定しない存在・決定できない事態について 植物状態や…

予算のプリンシプル(2) 偽造・変造された文書を公開されてもねぇ…

神野直彦『財政学』(9) 政治家や公務員でなくても、所属組織において、予算(収入・支出)に関わっている人であれば、予算原則の話は参考になるだろう。 今回は、第7章 予算のプリンシプル の続きである。前回は、1.完全性の原則、2.統一性の原則、…

富国強兵と安全保障と国連

久米郁男他『政治学』(23) 今回は、第8章 国際関係における安全保障 第1節 安全保障のジレンマとその回避 の続きである。 国際連合 本書の「国際連合」に関する記述は、「①武力による威嚇、武力行使の禁止、②安全保障理事会の権限強化、常任理事国(米…

「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられる

香取照幸『教養としての社会保障』(5) 今回は、第3章 日本の社会保障-戦後日本で実現した「皆保険」という奇跡 である。 日本の社会保障の特徴として、次のものが挙げられている。 国民皆保険、国民皆年金である。 社会保険方式に公費を投入し、保険料と…

「競争は避けられないものである」というのは自明ではない

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(4) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第2節 競争が避けられないものだという議論について である。 競争が避けられないものであることは、あたかも自明なものであるかのように暗黙のうちに前提と…

自分に関わることを自分で決めるなら、何も問題はないのだろうか?

立岩真也『私的所有論』(22) 今回は、第4章 他者 第3節 自己決定 である。 「自己決定」とは、「自分のこと(自分に関わること)は、自分で決める」ということである。他人から強制されて、嫌々〇〇することもあるかもしれないが、たいていは自分の意…

予算のプリンシプル(1)

神野直彦『財政学』(8) 今回は、第7章 予算のプリンシプル である。 「予算」(公共予算)とは、議会が、行政府に対して執行権限を付与し、その執行を管理することであった。この簡単な定義のどこに重点があるか。それは私たち[コミュニティのメンバー…

集団安全保障 - 戦争に訴えないという合意

久米郁男他『政治学』(22) 今回は、第8章 国際関係における安全保障 第1節 安全保障のジレンマとその回避 の続きである。 テーマは「集団安全保障」である。「集団的自衛権」の話とは異なる。 「勢力均衡」から「集団安全保障」へ 「勢力均衡」(≒大国…

概念とカテゴリー 複雑な現実世界

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(28) 今回は、第14章 思考 のうち、「概念と言語」である。まず概念とカテゴリーについて説明されているが、どうにも分かりにくい。 溝上慎一の説明を参照しよう。 私たちは乗用車を見て、それがオートバ…

セーフティネットの2つの意味

香取照幸『教養としての社会保障』(4) 今回は、第2章 基本哲学を知る 第3節 社会全体のリスク回避費用の最適化 と 第4節 セーフティネットの真の意味 である。 社会全体のリスク回避費用の最適化(第3節) 社会保障とは、それがあることによって、社会…

クイ・ボーノ(cui bono?) 誰の利益になるのか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(3) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか -「人間性」という神話 である。 第2章の構成は、次の通りである。あまり先走らないで、ゆっくりと見ていきたい。 第1節 「人間性」というカードを切ること…

領域と境界 自己と他者

立岩真也『私的所有論』(21) 今回は、第4章 他者 第2節 境界 の続きである。 第2節 境界 の小見出しは、1.境界という問題、2.境界線は引かれる、3. β~その人のものでないもの、4.α~その人のものであるもの、5.α/β である。前回は、1,2を見たので、…

政治家も大衆も公共の利益を掲げながら、自己利益を追求する?

神野直彦『財政学』(7) 今回は、第6章 財政のコントロール・システムとしての予算 の続きである。 財政民主主義の制度化:近代予算制度の形成 被支配者つまり被統治者が、予算を通じて統治し、財政をコントロールする。 被支配者は、代表を選出して、間接…

核兵器のない世界 オバマ大統領演説 人類という1つの家族

久米郁男他『政治学』(21) 今回は、第8章 国際関係における安全保障 第1節 安全保障のジレンマとその回避 の続きで、「安全保障」の話(国際連盟・国際連合や核兵器削減条約・核実験禁止条約など)なのだが、本節を読む前に、2016年5月27日、オバマ大…

「問題の把握」の難しさ  愛はかげろう?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(27) 今回は、第14章 思考 のうち、「問題解決」をとりあげる。問題解決と言うと、ビジネスにおけるノウハウとしての問題解決技法が思い浮かぶが、認知心理学における問題解決の研究とは、問題を解決する…

社会保障 「自助」(自己責任)を基本にして良いのだろうか?

香取照幸『教養としての社会保障』(3) 今回は、第2章 基本哲学を知る(「共助」や「セーフティネット」が社会を発展させた)の第1節 社会保障制度の教科書的理解 及び 第2節「共助」の意味 である。 「老後資金は2000万円不足するから投資せよ」という話…

「競争」は良いことである、という「4つの神話」

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(2) 今回は、第1章 「ナンバー・ワン」の強迫観念 の続きである。 人は何らかの行動をする場合に、明示的(意識的)でないにせよ、何らかの目標を持っている。「~のために~をする」というわけである。コーンはそ…

処分/決定してよい・よくないの境界はどこにあるのか?

立岩真也『私的所有論』(20) 今回は、第4章 他者 第2節 境界 である。本節に入る前に、このブログでは省略した第1章(私的所有という主題)の一部を見ておこう。 自己決定と私的所有 近代的な意味での所有権は、単に所持する権利ではなく処分権である…

「予算」とは、行政府に対して執行権限を付与し、その執行を管理する文書である。

神野直彦『財政学』(6) 今回は、第6章 財政のコントロール・システムとしての予算 である。 財政民主主義 予算とは、一定期間における予定収支でもなければ、拘束力のない財政計画でもない。予算とは一定期間の財政をコントロールする拘束力のある文書で…

勢力均衡(Balance of power)、恐怖の均衡(Balance of terror)

久米郁男他『政治学』(20) 今回は、第8章 国際関係における安全保障 第1節 安全保障のジレンマとその回避 である。 国際関係において最も重要な課題の一つは、どのようにして武力の行使を抑え、武力紛争(戦争)が起こるのを防ぎ、国際関係の安定をつ…

令和元年 歴史は繰り返す AI兵器の開発競争

私たちは、「戦争を知らない子どもたち*1」である。歴史に学ぶことをせず、AI兵器等の開発にいそしんでいる*2。 1.日本海軍(1904年、明治37年) [軍歌]日本海軍現代版(リメイク) 2.わからない節(1906年、明治39年) 添田唖蝉坊・新わからない節 / …

「合理的無知」は克服可能であろうか?

香取照幸『教養としての社会保障』(2) 今回は、第1章 系譜、理念、制度の体系(ギルドの互助制度を手本としたビスマルク)の続きである。 4.社会保障の理解の難しさ 社会保障は、医療や介護、保育といった産業を動かしている。そこには大きな雇用があり…

なぜ社会保障はうまくいかないのか?

香取照幸『教養としての社会保障』(1)*1 本を読むのに色々な読み方がある。私は、本書を「なぜ社会保障はうまくいかないのか?」という問題意識を持って、読み進めたいと思う(社会保障はうまくいっていないと感じているので)。なお、私は「社会保障」の…

「私が制御しないもの」(他者、自然、世界)を尊重する(享受する)

立岩真也『私的所有論』(19) ここまで立岩が本節(第4章 他者 第1節 他者という存在)で述べてきたことを振り返っておこう。 私が制御できないもの、私が制御しないものを、「他者」と言う。 他者は、ただ私ではないもの、私が制御しないものとして在…

「勝利」は「成功」を意味しない。安らかな心は、自分は最善を尽くしたという自己満足からのみ得られる。

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(1)*1 本書の内容は、次の通り。いずれも興味をそそられるタイトルである。 第1章 「ナンバー・ワン」の脅迫概念 第2章 競争は避けられないものなのだろうか-「人間性」という神話 第3章 競争はより生産的なものな…

「公共選択論」というお伽話

神野直彦『財政学』(5) 今回は、第5章 現代財政学の諸潮流 である。 本章で私が興味を持ったのは、「マーシャルの公共財」と、「財政における政治(財政の決定過程)」である。 公共選択論は、官僚・利益集団・政治家を批判すること(民間部門の利益を貪…

財政は、社会・政治・経済との関連でマクロに考察しなければならない。

神野直彦『財政学』(4) 今回は、第3章 財政学の生成、第4章 財政学の展開 である。財政学説史なので、逐一コメントのスタイルではなく、ポイントと思われる部分の引用にとどめる。 ドイツ正統派財政学とか財政社会学は、あまり馴染みがない分だけ面白く…

エージェントと構造 プリンシパル=エージェント関係

久米郁男他『政治学』(19) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第3節 国際関係をどう見るか の続き、「エージェントと構造」である。ここで述べられていることは、「国際関係では、国家の行動が国際関係における国家間のパワーの配分という構造によって…