浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

リアリティ

ハッピー・リタイアメント ― 敬老の日の妄想

総務省は、「敬老の日」(2022/9/19)にちなんで、統計からみた高齢者の状況(人口及び就業状況)を公表した。 www.stat.go.jp 2022年の高齢者(65歳以上)の人口推計は、 ・総人口が減少する中で、高齢者人口は3627万人と過去最多 ・総人口(12471万人)に…

セル・オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構…

秩序と無秩序、自己組織化

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シ…

現象を前にして、どのような理解枠組を設定するか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(35) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 の続き(p.187~)である。 科学的知識の創造性 ある分子を「プログラム」として理解すること(あるいは生命を「情報機械」として理解す…

Zをプログラムと呼ぶ観測者

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(34) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 である。 これまでに、 遺伝子が外的に観察可能な形質の情報を担っていると考えるのは。外在的視点からの読み込みである。 遺伝子から…

生命の機械論モデル

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(33) 今回は、第4章 機械としての生命 第2節 生命の機械論モデル である。 現代の生命科学は全て、デカルトに由来する機械論哲学を前提として構築されている。…カンギレムは、『生命の認識』所収の論…

都合により…

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(番外) 「都合により」本書の読書ノートは中断します。いつ再開するかは未定です。 ********** 「都合により」という言葉は便利な言葉で、私は時々使います。「理由」を述べる必要がない時、述べたくない時に使いま…

生命の分析に対するカンギレムの批判

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(32) 今回は、第4章 機械としての生命 第1節 生命の分析 の続き(p.170~)である。 我々は「あるがままの記述」を理解できない 生命を構成するすべての分子の運動を記述することができれば、それは…

存在に対して笑顔を浮かべる人たち

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(8) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.56~)である。 前回は、「存在に対して渋面をつくる人」(「存在への難色」派)として、ショーペンハウアーが挙げられていたが、J.P.サルトルやJ.アップダイクもそう…

TOMOHIDE IKEYA のリアル

TOMOHIDE IKEYAのWEBサイト(https://tomohide-ikeya.com/)から、3枚の写真をピックアップしてみた。*1 https://tomohide-ikeya.com/adovertising https://tomohide-ikeya.com/moon https://tomohide-ikeya.com/wave IKEYAは述べている。 スキューバダイビ…

因果関係 ― ブラックボックス(内部構造不明の暗い箱)、フラクタル(無限入れ子)

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(31) 今回は、第4章 機械としての生命 第1節 生命の分析(p.164~)である。 前章 第4節(遺伝子は外的に観察された形質の情報を担うか)では、次のようなことが述べられていた。*1 前章の内容を覚え…

存在に対して渋面をつくる人たち フラヌール(Flaneur、実存的遊歩者)

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(7) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.50~)である。 「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いを巡り、思想家の見方は3つに分かれて現在に至っている、とホルトはいう。次の3つである。…

「遺伝子」から「形質」への因果関係

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(30) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第4節 遺伝子は外的に観察された形質の情報を担うか(p.154~)である。 現在、一口に「遺伝子」と言われるものが、何らかの情報を担うものである点、その物質的実体…

パーティーガールがケーキから飛び出してきた

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(6) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.45~)である。 是非もない事実 五感が捉えることのできる証拠に基づく経験的真理は、科学研究の領分に属する。そして、なぜ世界が存在するのかという問いは、科学の…

「遺伝学における遺伝子」と「分子生物学的な遺伝子」の違い

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(29) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第3節 進化論・遺伝学における遺伝子概念(p.145~)である。 進化の総合説(ネオダーウィニズム)における遺伝子概念 ダーウィンの進化論は、自然選択によって生物…

「存在の謎」は存在しない?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(5) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.37~)である。 前回の最後に、 「無から」の創造という教義は、無という考えを純然たる存在論的可能性として認めるものだった。…その教義によって、「なぜまったく何…

DNA分子としての遺伝子は、形質の情報をも担うものであるか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(28) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.138~)である。 1970年頃の分子生物学 DNA分子は、それを構成する塩基の配列によって、タンパク質のアミノ酸…

ブンバ ボンボンボ ブンバ ボーン! ハッ!!

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(4) 今回は、第2章 哲学のあらまし である。 存在の謎の核心は、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いに尽きる。 この問いに答えようと努めることは、「人間の知性のとりわけ壮大な企て」であ…

COVID-19:「キャプシドを持たないウイルス」と「プラスミド」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(76) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 以前(2021/6/5)、中屋敷均『ウイルスは生きている』の第2章 丸刈りのパラドクス のうち、「ウ…

「存在の謎」解明の旅行記

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(3) 【目次】は、以下のとおりである。わくわくするようなタイトルが並んでいる。 第1章 謎との遭遇 第2章 哲学のあらまし 第3章 無の小史 第4章 偉大なる拒否者 第5章 有限か無限か? 第6章 帰納法を駆使す…

COVID-19:「ウイルス」と「トランスポゾン」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(73) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 ウイルスを「病原体」としてしか見ない偏向した見方を改めることが必要であろう。 今回とりあげ…

設計、制御、コピー、組立

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(27) 前回は、フォン・ノイマンの「自己増殖オートマトン[自動機械]」の作り方の説明がよくわからずパスしたのだが、ちょっと気になるので、説明を聞いてみよう。(今も理解できていないのだが、記録…

穴埋めをする神

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(2) 今回は、第1章 謎との遭遇 の続き(p.13~)である。 右派よりのテレビ番組で、脚の長い金髪美人タイプの司会者が、無神論者のヒッチンス(作家)を問い詰めた。 すべての世界が無から生まれたという考えは、…

自己増殖オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(26) 今回も、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.136~)である。 自己増殖のパラドックス 自己増殖というのは、論理的にはちょっとしたパラドックスである、…

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(1) 最近(といっても、1~2年前)、BOOK-OFFでウロウロして、目についたのがこの本である。ジム・ホルトという名前は知らなかったが、タイトルにひかれた。本のタイトルは大事です。 ジム・ホルトはアメリカの…

分子生物学のセントラルドグマ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(25) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.130~)である。 分子生物学における遺伝子概念(続) デルブリュック*1をはじめとする初期の情報学派の研究…

塩田千春、「不在のなかの存在」

2015_The+Key+in+the+Hand_Venedig+Biennale_Venedig_Photo+Sunhi+Mang_12 2020_The+Language+of+God_Gwangju+Biennale_photo+Lee+Se+Hyun_3 2018_installation_Absence+Embodied_AGSA_photo+by+Saul+Steed_43 2019_Sleeping+is+like+Death_Sunhi+Mang 2019_…

原因としての遺伝子、情報を担うものとしての遺伝子

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(24) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.126~)である。 遺伝暗号を担う非周期的結晶 「遺伝暗号を担う非周期的結晶」とはどのようなアイデアであっ…

遺伝子の量子力学的モデル

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(23) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開(p.121~)である。 分子生物学の登場と量子力学 分子生物学の成立は、遺伝子の物質的実体を探求するという20世紀初頭以…

「遺伝子」とは何か?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(22) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第1節 「遺伝子」概念の登場 (p.116~)である。 メンデルにおける遺伝子概念*1 メンデルは、遺伝現象の原因となる「原基」を仮定した。 メンデルの言う「原基(遺…