浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

「遺伝学における遺伝子」と「分子生物学的な遺伝子」の違い

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(29) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第3節 進化論・遺伝学における遺伝子概念(p.145~)である。 進化の総合説(ネオダーウィニズム)における遺伝子概念 ダーウィンの進化論は、自然選択によって生物…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(4) 「答えたい問い」のためにデータを作りにいく

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(92) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(4) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 今回は、第2章 現実の世界で「実際…

「存在の謎」は存在しない?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(5) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.37~)である。 前回の最後に、 「無から」の創造という教義は、無という考えを純然たる存在論的可能性として認めるものだった。…その教義によって、「なぜまったく何…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(3) RCTの3つの鉄則

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(91) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(3) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 緊急事態宣言や人流抑制や飲食店等…

正義の女神は、卑劣漢を憎むと同時に、道徳的英雄にも嫉妬する

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(14) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題(p.49~)である。 普遍主義 正義定式が含意する根本的な平等主義と抽象主義は、一つの明確な規範要求である。 正義定式とは「等…

租税負担の転嫁

神野直彦『財政学』(26) 前回は、第12章 租税の分類と体系 であったが*1、本書ではなく、「税法入門」*2により、「租税の分類」と「租税体系」を見てきた。そこでは、「直接税と間接税の区分は、転嫁の有無によって説明される」とあった。 今回は、この…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(2)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(88) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(2) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 今回は、『データ分析の力 因果関係…

法案の作成と審議 ― 官僚と議員

久米郁男他『政治学』(30) 今回は、第10章 議会、第2節 日本の国会 第2項 法案審議の流れ をとりあげる。 国会は「国の唯一の立法機関」であり、法を制定する。行政は法を執行する。…現実はどうか? 法律はどのような過程を経て成立するのか? 内閣法制…

ヒューリスティックス(経験則と先入観)

山岸俊男監修『社会心理学』(14) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、ヒューリスティックスである。 ヒューリスティックス(heuristics)とは何か。 ヒューリスティックスとは、問題を解決する際に、必ず正解にたどり着けるとは限らないが、うまくい…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(1)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(85) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 新型コロナ関連の、テレビ・新聞・雑誌・ネットの報道を見ていて、データ分析が小学生レベルで…

高齢世代と現役世代の支えあいは可能なのだろうか?

香取照幸『教養としての社会保障』(22) 今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 の続き である。 本章は、社会保障と国家財政について考えるものであるが、次のような項目からなっている。 (1)巨額の財政赤字―世界最大…

自由競争、万歳 !?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(21) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争 の続き(p.115~)である。 市場にもっと競争を導入するという目的で規制が緩和されるならば、こうした競争の真の結果が…

DNA分子としての遺伝子は、形質の情報をも担うものであるか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(28) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.138~)である。 1970年頃の分子生物学 DNA分子は、それを構成する塩基の配列によって、タンパク質のアミノ酸…

ブンバ ボンボンボ ブンバ ボーン! ハッ!!

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(4) 今回は、第2章 哲学のあらまし である。 存在の謎の核心は、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いに尽きる。 この問いに答えようと努めることは、「人間の知性のとりわけ壮大な企て」であ…

正義定式と「理想的男性」

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(13) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム の続き(p.47~)である。 正義定式の平等主義的性格と抽象主義的性格 正義定式(等しきものは等しく、不等なるものは不等に扱わるべし)は平等主義的…

租税の分類と体系

神野直彦『財政学』(25) 今回は、第12章 租税の分類と体系 である。 本書では聞きなれない(一般的ではない?)用語が多数出てくる。租税主体、租税客体、課税の衝撃点、要素市場税、生産物市場税、家計税、人税、物税などである。そこで、まずは「税法…

無観客の見世物としての「アリーナ」

久米郁男他『政治学』(29) これまで、浦部法穂『全訂 憲法学教室』に寄り道していたが、今回より本書に戻る。 第2部 統治の効率―代理人の設計 の各章は、次の通りである。 第10章 議会 第11章 執政部 第12章 官僚制 第13章 中央地方関係 第14章 国際制度…

態度と行動の一貫性、合理的行動理論

山岸俊男監修『社会心理学』(13) 今回から、第3章 社会の中の個人 に入る。第2章は歴史的な実験の話だったので何か古い感じがしたが、これからは、「現代社会」を見据えた「社会心理」の話として期待できるだろうか。 第3章のテーマは、(1)態度、(2)ヒ…

赤字公債、子ども世代へのツケ回し(2)

香取照幸『教養としての社会保障』(21) 今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 の続き(p.167~174)である。 税収、歳出総額、公債発行額の推移 前回、特例公債(=赤字公債)の発行により、子や孫へのツケ回しが行わ…

希少性の原理、ミスキャンパス

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(20) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争 の続き(p.117~)である。 議論を進めていくために、より多くの財を生み出すこと[経済成長]が正当な目標であると仮定…

「存在の謎」解明の旅行記

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(3) 【目次】は、以下のとおりである。わくわくするようなタイトルが並んでいる。 第1章 謎との遭遇 第2章 哲学のあらまし 第3章 無の小史 第4章 偉大なる拒否者 第5章 有限か無限か? 第6章 帰納法を駆使す…

八方美人は中身がない?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(12) 今回も、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」の続き(p.41~)である。 *以下の文章が面倒な人は、脚注1で紹介する記事(「世渡り上手な女性」5つの特徴と嫌われないポイント)だけでも読ん…

租税の根拠、租税負担の配分、租税原則

神野直彦『財政学』(24) 今回は、第11章 租税原則 の続き(p.154~)である。前回は「租税の根拠論」であったが、今回は「租税負担配分原則」と「租税原則」である。用語が紛らわしいので、整理しておこう。税務大学校の「税法入門(令和3年度版)*1によ…

内閣官房、内閣府は、何をしているところか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(11) 今回は、第7章 国民主権 第5節 内閣 の続き 「内閣の組織」と「内閣の機能と責任」についてである。 (今回で本書を終了し、次回より、久米郁男他『政治学』に戻る)。 浦部は、概略次のように述べている。 内閣は、首…

身軽な豚

山岸俊男監修『社会心理学』(12) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「つり橋実験」をとりあげる予定で、原稿を書き始めたのだが、 人は何らかの刺激を受けることによって、生理的喚起(心拍数の上昇など)が起こると、置かれている状況の…

赤字公債、子ども世代へのツケ回し

香取照幸『教養としての社会保障』(20) 今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 である。 香取のあげている数字を最近のものに置き換えて読んでみよう。 日本の債務残高(国と地方の長期債務残高)は、約1200兆円あり、…

経済的な競争

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(19) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争(p.115~)である。 資本主義を批判する人々のほとんどは、資本主義システムの基盤が競争にあるということよりも、資本主…

設計、制御、コピー、組立

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(27) 前回は、フォン・ノイマンの「自己増殖オートマトン[自動機械]」の作り方の説明がよくわからずパスしたのだが、ちょっと気になるので、説明を聞いてみよう。(今も理解できていないのだが、記録…

穴埋めをする神

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(2) 今回は、第1章 謎との遭遇 の続き(p.13~)である。 右派よりのテレビ番組で、脚の長い金髪美人タイプの司会者が、無神論者のヒッチンス(作家)を問い詰めた。 すべての世界が無から生まれたという考えは、…

失われし正義は回復さるべし

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(11) 今回は、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」の続き(p.37~)である。 配分的正義と匡正的正義 Wikipediaは、配分的正義と匡正的正義を次のように説明している。 配分的正義とは、各人に各人…