浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

遺伝子操作技術の功罪

立岩真也『私的所有論』(28) 体調不良で1週間の休みとなりました。新型コロナウィルス感染かと思いましたが、食あたりでした。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [4]離脱? を予定していたが、立岩の言わんとすることがよく分からな…

「正義よりも平和を」の意味

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(2) 井上は、「正義」に対して嫌悪を抱くような感情の3つの要因を挙げていた。 「正義よりも平和を」というスローガンに要約される発想。諦観的平和主義 正義に関するあらゆる思弁は、その本質において、支配…

議員は法律案を提出できるのに、なぜ予算案を提出できないのか?

神野直彦『財政学』(14) 今回は、第9章 予算過程の論理と実態 である。予算過程は、以下のように区分される。 立案過程…行政府が予算を準備する。 決定過程…議会で予算を審議し、成立させる。 執行過程…予算に基いて、行政府が財政を運営していく。 決…

国会議員は、特定階層や特定地域の代表者なのか?

久米郁男他『政治学』(28)、浦部法穂『全訂 憲法学教室』(1) 今回は、第10章 議会 第1節 議会の比較 の続きと、第2節 日本の国会 の予定だったが、ここで述べられていることを要約/引用する気になれない(一本筋の通った記述とは感じられない)の…

社会的促進と社会的抑制-得意なことはより得意に、苦手なことはもっと苦手に

山岸俊男監修『社会心理学』(2) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「社会的促進実験」*1である(p.24~)。 他者が近くにいる[見ている]ことで、慣れている作業や単純な課題の遂行が促進されることを、社会的促進と言う。 反対に、他者…

年齢区分別の将来人口推計(少子高齢化)

香取照幸『教養としての社会保障』(10) 今回は、第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きである。 人口構成の変化が経済にとってプラスに作用する状態を「人口ボーナス」、マイナスに作用…

「協力」は、「資源にゆとりがあるときにのみ許される贅沢」なのか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(9) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第5節 異文化における生活 の続き(p.60~)である。 マーガレット・ミード(1901-78、文化人類学者)の言葉を再掲しておく。 この調査から得られる最も基本…

「分類する」ということ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(17) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き「生物の分類」である。(p.88~) 下の写真は、「ぼうずコンニャクのWEB寿司図鑑」よりピックアップしたものである(最後の2枚を…

なぜドーピング(筋肉増強剤)は認められないのか?

立岩真也『私的所有論』(27) 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [3]私が私を作為することに対する他者の感覚 である。 立岩は、作為する(自分の身体に手を加える)ことの例として、スポーツでの筋肉増強剤の使用をあげている。これらは禁止され…

正義論-僕たちは世界を変えることができない?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(1) 積読本の中から1冊抜き出したところで山は崩れないのだが、それでも駆け足で斜め読みすることはなく、ゆっくりと読んでいこう。 映画『僕たちは世界を変えることができない。 But we wanna build a schoo…

桜を見る会 予算の移用と流用

神野直彦『財政学』(13) 前回は、一般会計のみではなく、特別会計も見ておく必要があるという話しであった。しかし他に、政府関係機関(いまは組織の変遷等があり、規模は大幅減少しているようだが)もあり、それぞれの予算の間で財源の繰入・繰出がある…

議院内閣制 - 権力集中と権力分散

久米郁男他『政治学』(27) 前回は、本書を読む前に、権力分立について概観し、「日本では、立法・行政・司法(三権)は分立していなくて、癒着しているのではないか?」 との疑問を提出しておいた。そこではあえて「癒着」という言葉を用いた。 今回は、…

傍観者効果(見て見ぬふり)

山岸俊男監修『社会心理学』(1) 本書の構成は、次のとおりである。 第1章 社会心理学とは? 第2章 社会心理学の歴史的な実験 第3章 社会の中の個人 第4章 対人認知と行動 第5章 集団の中の人間 第6章 文化と人間の心理 第7章 社会現象・社会問題の…

人口ピラミッドを登る

香取照幸『教養としての社会保障』(9) 今回は、第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 である。 日本の将来人口を、年少人口(~14歳)・生産年齢人口(15~64歳)・老年人口(65歳以上)に区分…

「未開人」に学ぶ

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(8) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第5節 異文化における生活(p.56~) である。 http://labaq.com/archives/51757732.html 非競争的な文化のいくつかについて、『未開人における協力と競争』…

植物と動物の中間

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(16) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き 「博物学」についてである。 博物学とは、「およそこの世界にある森羅万象を知り得る限り列挙して記述しようとする学問」(本書…

脳の改変 欲望の空虚

立岩真也『私的所有論』(26) 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [1]技術、[2]「私」 である。*1 *2 ここで言う技術とは、人体に対する操作技術を意味するだろう。 この人体に心を含めるかどうか。人体に脳を含めると心が問題になってくる。 この…

母屋(一般会計)と離れ座敷(特別会計)

神野直彦『財政学』(12) 今回は、第8章 予算制度の構造と機能 の続き である。 私たちの税金(や保険料)がどのように使われているのかを把握するためには、予算制度をしっかりと理解しておくことが必要だろう。さもないと……。 今回は、本書ではなく、…

日本では、立法・行政・司法(三権)は分立していなくて、癒着しているのではないか?

久米郁男他『政治学』(26) 今回から、第2部 統治の効率-代理人の設計 第10章 議会 に入るが、本書を読む前に、権力分立について概観しておきたい。 おそらく教科書的な解説は、次のようなものであろう。 権力の濫用を防止し、国民の政治的自由を保障す…

「ウィーン地下鉄の改札口」が意味するものとは?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(33) 前回の「認知症」は病気なのか? の続きを書こうと思っていたのだが、これは別記事とし、本書に戻る。 残りは、第17章 社会のなかの人、第18章 心と社会 であり、これは「社会心理学」のカテゴリー…

人口減少、少子化、高齢化の衝撃

香取照幸『教養としての社会保障』(8) 第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化で「安心」が揺らぎ始めた の目次は、次の通りである。 (1) 人口減少、少子化、高齢化の衝撃 (2) 人口オーナスとライフスタイルの変化 (3) 経済縮小と消費縮小…

「競争」は教え込まれたものではないか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(7) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第4節 競争から学習するのか、それとも協力から学習するのか(p.40~) である。 本節のタイトルは意味不明である。「学習する」というが何を学習するのだ…

微生物マットはいかなる機械であるか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(15) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 である。山口は、前節(「物質と生命」という区分)では、生命をめぐる諸概念の成立構造を検討してきたが、本節では生命理解の歴史的な…

自己決定と過剰医療

立岩真也『私的所有論』(25) 今回は、第4章 他者 第3節 自己決定 の第6項 「条件を問題にするということ」である。(テーマは「自己決定」であり、第1項から第5項の議論*1を思い起こそう。) 最初の部分は省略して、「医療の場」を例に議論を進めて…

原則と例外 どちらが重要か?

神野直彦『財政学』(11) 今回は、第8章 予算制度の構造と機能 の続きである。 財政法では、予算の内容を、①予算総則、②歳入歳出予算、③継続費、④繰越明許費、⑤国庫債務負担行為、という5つに規定しているのだったが、今回は③以降をみる。 本書の説明を…

経済のグローバル化について

久米郁男他『政治学』(25) 今回は、第9章 国際関係における富の配分 である。本章の内容は、 第1節 国境を越える経済的交流の増大 経済的相互依存状況の進展(経済のグローバル化、高次元の政治・低次元の政治、ニクソン・ショック、石油危機、国際経…

「認知症」は、病気なのか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(32) 今回は、第16章 脳損傷と心の働き の続きである。 運動野や感覚野に病変が存在すると、運動麻痺や感覚の障害など、入力・出力部分の機能が障害される。 連合野に病変がある場合には、損傷を受ける領…

先進医療 スウェーデンの医療システム改善

香取照幸『教養としての社会保障』(7) 今回は、第3章 日本の社会保障-戦後日本で実現した「皆保険」という奇跡 第6節 日本の社会保障の現状と評価(p.85~)である。 日本の社会保障制度は国際的にどう評価されているか わが国が実現してきた社会保障制…

自分たちになぞらえた自然(動物の行動)を利用して、自らを正当化する。

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(6) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第3節 現実の自然状態 の続き(p.37~) である。 コーンの問いは、「動物の行動は、協力によって特徴づけられている。にもかかわらず、ホッブス[万人の万…

生命とは、子作り機械か? 物質の離合集散か?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(14) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第1節 「物質と生命」という区分 の続き(p.77~)である。 生命は増殖を目的とするという理解 自然選択説では、生物は「増殖を目的として構成された機械」である…