浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

希少性の原理、ミスキャンパス

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(20) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争 の続き(p.117~)である。 議論を進めていくために、より多くの財を生み出すこと[経済成長]が正当な目標であると仮定…

「存在の謎」解明の旅行記

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(3) 【目次】は、以下のとおりである。わくわくするようなタイトルが並んでいる。 第1章 謎との遭遇 第2章 哲学のあらまし 第3章 無の小史 第4章 偉大なる拒否者 第5章 有限か無限か? 第6章 帰納法を駆使す…

八方美人は中身がない?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(12) 今回も、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」の続き(p.41~)である。 *以下の文章が面倒な人は、脚注1で紹介する記事(「世渡り上手な女性」5つの特徴と嫌われないポイント)だけでも読ん…

租税の根拠、租税負担の配分、租税原則

神野直彦『財政学』(24) 今回は、第4章 租税 の続き(p.154~)である。前回は「租税の根拠論」であったが、今回は「租税負担配分原則」と「租税原則」である。用語が紛らわしいので、整理しておこう。税務大学校の「税法入門(令和3年度版)*1による。 …

内閣官房、内閣府は、何をしているところか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(11) 今回は、第7章 国民主権 第5節 内閣 の続き 「内閣の組織」と「内閣の機能と責任」についてである。 (今回で本書を終了し、次回より、久米郁男他『政治学』に戻る)。 浦部は、概略次のように述べている。 内閣は、首…

身軽な豚

山岸俊男監修『社会心理学』(12) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「つり橋実験」をとりあげる予定で、原稿を書き始めたのだが、 人は何らかの刺激を受けることによって、生理的喚起(心拍数の上昇など)が起こると、置かれている状況の…

赤字公債、子ども世代への付け回し

香取照幸『教養としての社会保障』(20) 今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 である。 香取のあげている数字を最近のものに置き換えて読んでみよう。 日本の債務残高(国と地方の長期債務残高)は、約1200兆円あり、…

経済的な競争

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(19) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争(p.115~)である。 資本主義を批判する人々のほとんどは、資本主義システムの基盤が競争にあるということよりも、資本主…

設計、制御、コピー、組立

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(27) 前回は、フォン・ノイマンの「自己増殖オートマトン[自動機械]」の作り方の説明がよくわからずパスしたのだが、ちょっと気になるので、説明を聞いてみよう。(今も理解できていないのだが、記録…

穴埋めをする神

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(2) 今回は、第1章 謎との遭遇 の続き(p.13~)である。 右派よりのテレビ番組で、脚の長い金髪美人タイプの司会者が、無神論者のヒッチンス(作家)を問い詰めた。 すべての世界が無から生まれたという考えは、…

失われし正義は回復さるべし

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(11) 今回は、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」の続き(p.37~)である。 配分的正義と匡正的正義 Wikipediaは、配分的正義と匡正的正義を次のように説明している。 配分的正義とは、各人に各人…

租税とは「社会共通の費用を賄うための会費」である。

神野直彦『財政学』(23) 今回は、第4章 租税 の続き(p.151~)である。 租税とは 神野は、「租税とは、政府が公共サービスを供給するために、強制的に無償で調達する貨幣である」という。 強制というのは、「政治システムが独占している暴力を背景に調…

行政機関による立法行為

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(10) 今回は、第7章 国民主権 第5節 内閣 である。 内閣の地位 内閣は行政権の主体であり、行政とは「法律の執行作用のうち司法以外のもの」をいう。 行政権とは何か? 国民主権原理に立脚する統治構造の下では、すべての具…

アイヒマン実験(2)- 社会的勢力(social power)

山岸俊男監修『社会心理学』(11) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「アイヒマン実験」の続きである。 アイヒマン実験(=ミルグラムの「服従実験」:被験者の65%が、危険=過激なショック をさらに超えた強さの450ボルトまでスイッチを入…

「医療・福祉」産業の就業者数は、1000万人近い!

香取照幸『教養としての社会保障』(19) 今回は、第5章 社会保障はGDPの5分の1を占める巨大市場 第2節 経済を支える社会保障 の続きと第3節貯蓄から消費へ である。 経済を支える社会保障 香取は、2002年から2011年までの「主な産業別就業者数の推移」…

原因、結果、文脈などが等閑視されている

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(18) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第3節 生産性-個人主義的な発想をこえて(p.108~)である。 コーンは問う。 ここに2人の飢えた人間がおり、1人分の食事があるとしよう。こ…

自己増殖オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(26) 今回も、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.136~)である。 自己増殖のパラドックス 自己増殖というのは、論理的にはちょっとしたパラドックスである、…

なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(1) 最近(といっても、1~2年前)、BOOK-OFFでウロウロして、目についたのがこの本である。ジム・ホルトという名前は知らなかったが、タイトルにひかれた。本のタイトルは大事です。 ジム・ホルトはアメリカの…

いったん中断

立岩真也『私的所有論』 本書をまだ半分も読んでいないのだが、いったん中断する。 第6章 個体への政治 第7章 代わりの道と行き止まり 第8章 能力主義を否定する能力主義の肯定 第9章 正しい優生学とつきあう いずれも興味をそそるタイトルであるが、「気分…

等しきものは等しく、不等なるものは不等に扱わるべし

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(10) 今回は、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」の続きである。 正義の理念を定式化する最も有名な命題は「等しきものは等しく、不等なるものは不等に扱わるべし」である。この命題は、何が等し…

現代国家と租税

神野直彦『財政学』(22) 今回は、第4章 租税 の続き(政府収入の多様化、p.149~)である。 租税とは 家産国家 租税国家 公債国家 私的所有権 市場経済が機能するには、市場で取引される生産要素や生産物に、私的所有権が設定されなければならない。 神…

財政民主主義 予算委員会 忖度官僚

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(9) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 3国会の権限 ⅳ財政に関する権限(p.543~) である。財政については、神野直彦『財政学』を読んでいるので、ここでは簡単にみておこう。 財政に関する権限 総務省幹部の接待問題 財…

アイヒマン実験(1)- 服従

山岸俊男監修『社会心理学』(10) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「アイヒマン実験」をとりあげる。 アイヒマン実験とは、心理学者S.ミルグラムが行った「服従」実験である。ミルグラム実験ともいう。 「服従」とは、権威者からの命令や…

社会保障と経済成長

香取照幸『教養としての社会保障』(18) 今回は、第5章 社会保障はGDPの5分の1を占める巨大市場 第1節 GDPに占める社会保障の規模 と、第2節 経済を支える社会保障 である。 香取は、本章の結論を先に述べている。社会保障は「単なる負担」ではなく、…

ヤーキーズ・ドットソンの法則

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(17) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第2節 競争がなにもならないものだという説明 の続き(p.101~)である。 資源のより効率的な利用は、競争ではなく、協力によって可能となる。…

分子生物学のセントラルドグマ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(25) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開 の続き(p.130~)である。 分子生物学における遺伝子概念(続) デルブリュック*1をはじめとする初期の情報学派の研究…

線引問題 -「人間でないもの」を、処分、消去、侵犯、殺害してよいのだろうか?

立岩真也『私的所有論』(35) 今回は、第5章 線引き問題という問題 の第2節 線はないが線は引かれる の第1項 線引きの不可能 である。 いつからヒトを人とするのか? ヒトと人の境界はどこにあるのか? https://192abc.com/15956 卵子や精子は「ヒト」…

形式的正義-スゥーム・クイック(suum cuique、各人に各人のものを)とは?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(9) 今回は、第2章 エゴイズム 第2節 形式的正義の「内容」である。 権利と正義 「正義」とは何だろうか? 長尾龍一は、「各人に彼のものを(suum cuique)」あるいはより明示的に「各人に彼の権利を(jus su…

無産国家、租税国家

神野直彦『財政学』(21) 今回から第4編 租税にはいる。内容(各章タイトル)は、「租税原則」、「租税の分類と体系」、「人税の仕組みと実態」、「生産物市場税の仕組みと実態」、「要素市場税の仕組みと実態」、「オプションとしての公債と公債原則」で…

国会の権限、憲法改正の発議権ほか

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(8) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 3国会の権限(p.537~) である。 国会の権限には、1.憲法改正の発議権、2.立法権、3.条約承認権、4.財政に関する権限、5.その他の権限 がある。 憲法改正の発議権 いまは、憲法改正…