浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

読書ノート

「ステレオタイプ」と「今川焼」

山岸俊男監修『社会心理学』(24) 今回は、第4章 対人認知と行動のうち、「社会的カテゴリーとステレオタイプ」、「偏った対人認知」(p.106~)をとりあげる。テーマは「ステレオタイプ」である。 ステレオタイプとは、「多くの人に浸透している固定観念…

競争と自尊心

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(32) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心 の続き(P.186~)である。 競争における焦点は、他の人々に対する自分の優位性を証明することにあり、このこ…

集権と分権、共管領域と機能的集権

久米郁男他『政治学』(39) 今回は、第13章 中央地方関係 をとりあげる順番であるが、その記述を引用してコメントしたいとは思えなかった。 福祉国家における中央地方関係-新中央集権 地域の自己決定権 機能的集権化 機関委任事務制度 共管領域 本章タ…

条件文-逆・裏・対偶

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(9) 前回の最後に、 「と」を考えることによって、世界が広がる(ちょっと大袈裟か)。そこで、「GNLBHFRV-GB-WHAXN」(仮題)を書くことにした。 と書いた。この仮題は単純な暗号文で、アルファベットの文字を何文字か…

ドーナツの穴 - 言語学からのアプローチ

先日、BOOKOFFでぶらぶらしていたら、面白い本が見つかった。『失われたドーナツの穴を求めて』という本である。 タイトルに惹かれて手に取ってみると、右上に穴があいている。実際には、 こんな図の黒丸のところに穴があいているのだが、やや面白みに欠ける…

収益税、流通税、金融取引税

神野直彦『財政学』(37) 今回は、第15章 要素市場税の仕組みと実態(p.213~)をとりあげる。 神野は、生産物市場税(前章)と要素市場税(本章)に大きく区分している。次の説明は、唐渡広志による*1。 生産物市場:財・サービスを売買する市場。…企業…

生物の輪郭(内部と外部)

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(39) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「パターンの生成と個体の生成」(p.203~)である。 山口は次のようなことを述べている。 DNA分子が担う情報には、タンパ…

社会保障改革の方向性、社会保障の給付と負担

香取照幸『教養としての社会保障』(32) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第3節 社会経済の変化に対応できるシステムへと自らを改革する(p.266~)と第4節 成長に貢献する制度を作る(p.275~) をとり…

「無」は神より偉大である

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(9) 今回は、第3章 無の小史(p.72~)である。(久しぶりに本書を読むことにします*1)。 ホルトは、「何もない(無)とはどういうことだろう?」と問い、「存在しないもの」と答えている。 貧乏人はそれ(無)…

行為主体は、自由と順境に対する権利主張にコミットしているのか?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(23) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 2 普遍化可能性 の続き(p.78~)である。(D:正義論者、E:エゴイスト。緑字は傍点の代わり) 第3の疑問 Eが提起する第3の疑問は、「なぜエゴイストは…

非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)

山岸俊男監修『社会心理学』(23) 今回は、第4章 対人認知と行動のうち、「表情の認知」(p.104)である。 表情は、非言語コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション、non-verbal communication)の一つである。非言語コミュニケーションとは…

「競争」と「心理的な健全さ」について

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(31) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心 の続き(P.180~)である。 「協力は自尊心を高めるのに役立つが、競争はそれとは全く逆の効果をもたらす」と…

国士無双

久米郁男他『政治学』(38) 久しぶりに本書を読むことにする。 本人-代理人関係論(プリンシパル・エージェント理論、Principal-Agent Theory) 国会改革-委任の終わりか 日本官僚制論 迷える官僚 国士無双 利害調整 アイヒマン 今回は、第12章 官僚制…

☻ 人生に意味なんてあるわけないでしょ ☹

戸田山和久『哲学入門』(1) 読みたい本は多々あるのだが、本書もその1冊である。 哲学系としては、ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』の次にとりあげようかと思っていたのだが、忘れないようにここにメモしておこう。 本書の内容は、次の通りである…

「~は、陰謀論である」とまでは言えない

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(8) 今回から、第Ⅲ部 演繹 である。第7章 否定、第8章 条件構造、第9章 推論の技術 となっている。 冤罪 陰謀論 and の意味 野矢は「演繹」について次のように述べている。 演繹は、論証のための基本技術である。 正し…

輸出取引に係る消費税の処理は不合理ではないか?

神野直彦『財政学』(36) (前々回の続き) 1.輸出取引に係る消費税の処理 2.「消費税」再考 3.「輸出取引に係る消費税の処理」再考 4.取引高税の可能性 5.取引高税の逆進性 1.輸出取引に係る消費税の処理 今回は「輸出取引に係る消費税の処…

インボイス制度 → 個人事業主の受難(続)

神野直彦『財政学』(35) (前回の続き) 免税点制度 1.「消費税」と「売上税」と「付加価値税」 2.「消費税」という言葉の誤用 3.国税庁による「消費税」の説明は正しいか? 免税事業者の大部分は個人事業者や自営業者であり、一部小規模企業が含…

インボイス制度 → 個人事業主の受難

神野直彦『財政学』(34) 「インボイス制度」の導入(2023/10)が話題になっている(※)。今回は、第14章 生産物市場税の仕組みと実態 の続き(p.202~)であるが、インボイス制度にも言及がある。 (※)課税事業者が消費税を算定するにあたり、仕入控除…

砂山くずし

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(38) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き「自己組織化臨界」(p.202~)である。 カウフマンは、「生物圏の共構築を支配する法則の候補」を、「カオスの縁」や「自…

価値判断/規範を結論とする論証

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(7) https://classy-online.jp/fashion/176426/ 1.マスクをすべきである/マスクをする必要はない。(規範) 2.マスクを外しても美人である/美人ではない。(価値判断) この主張の根拠は何であるか? そして説得力は…

普遍化可能性の原理は、当為言明に妥当するのか?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(22) 「正義の理念が含意する禁止」、「集団的エゴイズム」の概念を念頭に、下の写真を見てみよう。 8日、キーウ(キエフ)の街角に飾られた「クリミア橋」爆破を描いたアート作品を前に記念撮影するウクラ…

「3歳児神話」と経済成長

香取照幸『教養としての社会保障』(31) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第2節 持続可能な社会をつくる である。 香取は、次のようなことを述べている。 経済成長を遂げて日本社会と社会保障を維持する…

行動の原因帰属(個人の特性か環境か)と帰属バイアス

山岸俊男監修『社会心理学』(22) 前回は、第3章 社会の中の個人 のうち、「内発的動機付け」であった。次に「自己効力感*1」、「セルフ・モニタリング*2」と続くが、これは面白くないので省略する。 次は、第4章 対人認知と行動 である。最初に「対人認…

出版バイアス、介入の「波及効果」分析

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(13) 今回は、第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る の続き(p.249~)である。 外的妥当性[一般化可能性]の問題と関連して、「出版バイアス」と「パートナーシップ・バイアス」の問題…

『なぜ? どうして?』という謎に答えるには

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(6) 今回は、第Ⅱ部 論証 第5章 演繹と推測(p.71~)である。 演繹と推測はどう違うのだろうか? 演繹も推測も、ある事柄を根拠として何らかの結論を導くものである。 演繹と推測は、その使われる目的が全く異なってい…

競争から共創へ

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(30) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心である。 コーンは、次のように述べている。(p.179) ①アメリカ社会のような競争社会においては、ふつう協力に…

セル・オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構…

秩序と無秩序、自己組織化

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シ…

異なる道の可能性、「あえて反論する」という方法

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(5) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 の続き(p.64~)である。 根拠となる主張の (1)意味規定、(2)事実認識については前回みたので、今回は (3)価値評価である。 (3)価値評価 価値評価に関わる主張には、…

根拠となるその主張は適切なのか?

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(4) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 である。 ここで「論証」とは、「なぜ」の問いかけに対して「なぜなら」と答えていく、日常的に為されるそうしたやり取りのことである。(p.56) 論証の構造 論証とは…