浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

ネットワークの構造(2) スモ-ル・ワールド性、クラスター性

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(9) ネットワークには、3つの性質(スケールフリー性、スモール・ワールド性、クラスター性)があるということだったので、今回はスモール・ワールド性とクラスター性について見ることにしよう。 2.ス…

「私が制御しないもの」(他者、自然、世界)を尊重する(享受する)

立岩真也『私的所有論』(19) ここまで立岩が本節(第4章 他者 第1節 他者という存在)で述べてきたことを振り返っておこう。 私が制御できないもの、私が制御しないものを、「他者」と言う。 他者は、ただ私ではないもの、私が制御しないものとして在…

「勝利」は「成功」を意味しない。安らかな心は、自分は最善を尽くしたという自己満足からのみ得られる。

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(1)*1 本書の内容は、次の通り。いずれも興味をそそられるタイトルである。 第1章 「ナンバー・ワン」の脅迫概念 第2章 競争は避けられないものなのだろうか-「人間性」という神話 第3章 競争はより生産的なものな…

「公共選択論」というお伽話

神野直彦『財政学』(5) 今回は、第5章 現代財政学の諸潮流 である。 本章で私が興味を持ったのは、「マーシャルの公共財」と、「財政における政治(財政の決定過程)」である。 公共選択論は、官僚・利益集団・政治家を批判すること(民間部門の利益を貪…

財政は、社会・政治・経済との関連でマクロに考察しなければならない。

神野直彦『財政学』(4) 今回は、第3章 財政学の生成、第4章 財政学の展開 である。財政学説史なので、逐一コメントのスタイルではなく、ポイントと思われる部分の引用にとどめる。 ドイツ正統派財政学とか財政社会学は、あまり馴染みがない分だけ面白く…

エージェントと構造 プリンシパル=エージェント関係

久米郁男他『政治学』(18) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第3節 国際関係をどう見るか の続き、「エージェントと構造」である。ここで述べられていることは、「国際関係では、国家の行動が国際関係における国家間のパワーの配分という構造によって…

パブロフの亀

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(24) 今回は、第13章 学習 である。本書の記述*1は相変わらずつまらないので、例のごとくWikipedia等を参照したが、とりたてて興味を引くものがない。そこで本章のテーマ「学習」についてはパスするが、…

「野蛮な社会」と「すべての人が暮らしやすい社会」

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(10) 今回は、第5章 包摂政策を考える 第3節 社会のユニバーサル・デザイン化 の続き である。 ベーシック・インカム ベーシック・インカムとは、基本的な生活を保障する一律の給付を、すべ…

ネットワークの構造(1) スケールフリーとは?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(8) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第3項 ネットワークの構造 である。山口は、前項「システム生物学の登場」の最後のほうで、生物学研究…

人間中心主義

立岩真也『私的所有論』(18) 今回は、第4章 他者 の注6*1「人間中心主義」である。 人間中心主義Aは、生存のための資源という視点から自然に対する。「道具主義的人間中心主義」と呼んでもよい。だから自然を改変する。しかし、生存のために自然を(…

エッケ・ホモ(この人を見よ)

神野直彦『財政学』(3) 今回は、第2章 財政と三つのサブシステム の続きである。三つのサブシステムとは、社会システム、政治システム、経済システムである。神野はシステム*1という言葉を多用しているが、これは理解を曖昧にするもののように思えるので…

リアリズム(現実主義)、リベラリズム(自由主義)

久米郁男他『政治学』(18) 第2節の最後に、現代の国際システムは、17,18世紀の国際システムからかなり変容を遂げているとして、国民国家の数の増大、地理的範囲の地球大への拡大、国民国家(主権が国民に帰属)がほとんどを占めること、国際関係に影響…

スキーマとスキーム

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(23) 今回は、第12章 記憶 のうち、「知識とスキーマ」をとりあげる 私は「心理学」を試験勉強しているのではなく、人間心理や認知機構に興味があるので、本書の叙述にしたがい、基本用語をとりあげてい…

障害の社会モデル 評価と承認

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(9) 阿部は、次のように述べていた。 この考え[貧困は自己責任であるという発想]には、彼らの生活困難はそもそも彼らが社会に貢献できるような労働市場における条件整備が出来ていないからで…

生物とは「情報機械」なのか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(7) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第2項 システム生物学の登場 である。 バイオインフォマティクス(生命情報学) 金子邦彦は、遺伝子・…

私が制御しないもの、「自然」があることにおいて、私たちは生を享受している?

立岩真也『私的所有論』(17) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第4項 「自然」である。 「操作しない」という主張は、操作することに対する恐れ、畏れのようなものとして表出されることもある。これまで幾度もそうであったように、短期的・部…

人間性回復の経済学

神野直彦『財政学』(2) 今回は、第1編 財政学のパースペクティブ 第2章 財政と三つのサブシステム である。 人間性回復の経済学 神野は、財政学を「人間性回復の経済学」と言っている。何故かというと、経済学は 人間を、苦楽を一瞬のうちに計算する「機…

主権国家と国民国家 クラズナーの主権概念

久米郁男他『政治学』(17) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第2節 国民国家システムの形成と拡大 の続きである。 前回、「主権国家システムの形成」について説明があったが、復習しておこう。 ウェストファリア条約(1648年)を契機として、諸国家は…

長期記憶(意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(22) 今回は、第12章 記憶 のうち、長期記憶 をとりあげるが、本書の記述やネット検索での用語解説もあまり面白くない。「ふ~ん。それで?」という感じである。文脈なしで、用語解説だけを読んでいるか…

あなたは「生活困窮者」になるかもしれない。「私たち」は、あなたを助けないであろう。

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(8) 今回は、第5章 包摂政策を考える 第2節 これまでの社会保障を考える の続きである。 後半の「新しい潮流」「問題の所在」の項における阿部の主張は特筆に値すると思われるが、今回の記事…

「生命」とは何か? バイオインフォマティクス

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(6) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第1項 バイオインフォマティクス である。 私たちは「生命」について何を知っているのか? タンパク質の…

私と他者(2)

立岩真也『私的所有論』(16) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第3項 他者である私 である。本項は1頁ちょっとの分量しかないが、なかなか手強くてよく分からないい。(私のコメントはどうでもよいので、引用した立岩の文章をよく読んでみて…

財政とは何か? 量入制出の原則 量出制入の原則 大英博物館

神野直彦『財政学』(1) 今回は、第1編 財政学のパースペクティブ 第1章 財政学への旅立ち である。 神野は述べている。 学問の世界を旅する者は、謙虚に先達の知恵に学ばなければならない。先達の知恵に学ぶことは、人間の能力の可能性を信じることでもあ…

主権国家システムの形成

久米郁男他『政治学』(16) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第2節 国民国家システムの形成と拡大 である。 本書における「国家」の定義とは、 近代ヨーロッパが生みだした近代主権国家に限定した場合の近代国家を次のように定義する。 第1に、国境と…

ワーキングメモリは、メインメモリである。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(21) 今回は、第12章 記憶 のうち、ワーキングメモリをとりあげる。 ワーキングメモリに関する研究成果は、自閉症や注意欠陥多動障害(ADHD)*1理解を深め、指導方法を改善に導くのに有用であるとされてい…

遺伝子と肥満・アルツハイマー病・身長・自閉症などとの関係 遺伝子型と表現型

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(5) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ の続きである。 山口は、ゲノム科学の劇的な進歩の中で、分子生物学の大前提の一つである「遺伝子」という…

リスクの偏在と社会保障

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(7)*1 今回は、第5章 包摂政策を考える 第2節 これまでの社会保障を考える をとりあげる。阿部は、「現状の社会保障制度では、現代の貧困や社会的排除のリスクに対応することは難しい」という…

私と他者

立岩真也『私的所有論』(15) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第2項 私でないのは私達ではない である。 前項(制御しないという思想)においては、他者や世界は、「私が制御しないもの」、「私ではないもの」として在ると述べられていた。…

現代社会の規範問題

平野・亀本・服部『法哲学』(55) 第6章 法哲学の現代的課題 第3節 現代法の新たな課題 である。本節は、現代社会において特に大きな規範問題を生んでいると思われる「医療技術の進歩」、「環境保護の必要」、「情報社会の進展」をとりあげている(本書…

秩序ある世界(平和な世界)はいかにして形成されるのか?

久米郁男他『政治学』(15) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第1節 国際関係の特質 である。 古城(第7章担当)は、「国際関係の構造は、アナーキーであるとみなされている」と述べている。「構造」とか「アナーキー」という言葉の使い方が適切とは思…