浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

読書ノート

出版バイアス、介入の「波及効果」分析

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(13) 今回は、第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る の続き(p.249~)である。 外的妥当性[一般化可能性]の問題と関連して、「出版バイアス」と「パートナーシップ・バイアス」の問題…

『なぜ? どうして?』という謎に答えるには

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(6) 今回は、第Ⅱ部 論証 第5章 演繹と推測(p.71~)である。 演繹と推測はどう違うのだろうか? 演繹も推測も、ある事柄を根拠として何らかの結論を導くものである。 演繹と推測は、その使われる目的が全く異なってい…

競争から共創へ

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(30) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第2節 勝利、敗北、自尊心である。 コーンは、次のように述べている。(p.179) ①アメリカ社会のような競争社会においては、ふつう協力に…

セル・オートマトン

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(37) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル の続き(p.196~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論(反応拡散系、散逸構…

秩序と無秩序、自己組織化

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(36) 今回は、第4章 機械としての生命 第4節 さまざまな力学系モデル(p.192~)である。 本節では、生命現象の「力学系モデル」として論じられてきた様々な古典的な理論の概略が説明されている。 シ…

異なる道の可能性、「あえて反論する」という方法

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(5) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 の続き(p.64~)である。 根拠となる主張の (1)意味規定、(2)事実認識については前回みたので、今回は (3)価値評価である。 (3)価値評価 価値評価に関わる主張には、…

根拠となるその主張は適切なのか?

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(4) 今回は、第Ⅱ部 論証 第4章 論証の構造と評価 である。 ここで「論証」とは、「なぜ」の問いかけに対して「なぜなら」と答えていく、日常的に為されるそうしたやり取りのことである。(p.56) 論証の構造 論証とは…

そのリンゴは赤くない ー「普遍化可能性」の議論

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(21) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 2 普遍化可能性(p.71~)である。(D:正義論者、E:エゴイスト。緑字は傍点の代わり) 正義理念の正当化の問題について、D(ディケー)は一つの例から…

因果推論と一般化可能性

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(12) 今回は、第7章 上級編:データ分析の不完全性や限界を知る(p.240~)である。 伊藤は、「どのようなデータ分析手法にも不完全性や限界があることを認識しておくことが重要である」として、以下…

競争から共生へ、排除から包摂へ

香取照幸『教養としての社会保障』(30) 今回は、第9章【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか 第1節 安心社会の基盤をつくる である。 自立と連帯、競争から共生へ スローガンは、「自立と連帯」、「競争から共生へ」である…

規則(法)を順守するだけでは、何も問題は解決しない

久米郁男他『政治学』(37) 前回、最後のほうで「水道事業の民営化」について、新聞記事や動画を紹介した。この話題は興味深いのでもう少し検討したいと考えていたのだが、あまり深入りすると先に進めないので、一旦保留にして、今回は、第12章 官僚制 …

モチベーションと組織の「まともさ」

山岸俊男監修『社会心理学』(21) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、内発的動機付け である。 本書は、認知(学習理論)や食欲(動因低減理論)から話を始めているが、そういった生物学寄りの話は、簡単にはいかないので、「社会心理」の範囲に限定…

誰か他人が幸福を手に入れると、怒ったり(自分を)哀れんだりしていませんか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(29) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第1節 なぜ競争するのか の続き(P.172~)である。 コーンは、次のように述べている。 アメリカの文化において成功するためには、競争す…

個別消費税と一般消費税

神野直彦『財政学』(33) 今回は、第14章 生産物市場税の仕組みと実態 (p.199~)をとりあげる。 生産物市場税 生産物市場税は、関税と内国消費税に分けられる。内国消費税は、個別消費税と一般消費税とに分けられる。 個別消費税は特定の生産物に課税さ…

現象を前にして、どのような理解枠組を設定するか?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(35) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 の続き(p.187~)である。 科学的知識の創造性 ある分子を「プログラム」として理解すること(あるいは生命を「情報機械」として理解す…

議論の構造の基本形式

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(3) 今回は、第Ⅰ編 接続の論理 第3章 議論の組み立て である。 接続表現 文章は、既にそれを理解している人と、これからそれを理解しようとしている人とでは、異なった見え方をする。理解した目には、その理解が投影さ…

「正義の原則」による正当化と妥協

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(20) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 1「正義は最善の政策」か の続き(p.69~)である。(D:正義論者、E:エゴイスト。緑字は傍点の代わり) E:いや見事な議論だった。思わず聞き惚れてし…

データ分析をビジネス戦略や政策形成に生かすための鍵

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(11) 今回は、第6章 実践編:データ分析をビジネスや政策形成に生かすためには?(p.202~)である。 エビデンスに基づく政策形成 アメリカでは数年前から、オバマ前大統領がエビデンス(証拠)に基づ…

行政官の心得

香取照幸『教養としての社会保障』(29) 今回は、第8章 【新たな発展モデル】北欧諸国の成功モデルから学べること 第3節 目指すのは「安心と成長の両立」の続きと、第9章 【改革の方向性】「安心」を取り戻すために、どう改革を進めるべきか である。 ま…

公共事業(施設)を、民営化することによって、コスト削減・質の高い公共サービスが可能になるのか?

久米郁男他『政治学』(36) 今回は、第12章 官僚制 第1節 NPMの中の官僚制 の続き(p.235~)である。 NPM(New Public management)の具体例として、①市場化テスト、②エージェンシー、③PFIがあげられていたが、今回は、③PFIを見てみよう。 PFIとは…

45歳「年の差婚」とベムの「自己知覚理論」

山岸俊男監修『社会心理学』(20) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、自己知覚理論 である。 山岸は、自己知覚理論とは「人は、自分の行動とその行動が起こった状況などを観察することで、自分の態度や内的状態を推論するとする理論」である、また「…

「人生はゼロサムゲームではない」はずだが…

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(28) 今回は、第5章 競争が人格をかたちづくるのだろうかー心理学的な考察 第1節 なぜ競争するのか の続き(P.168~)である。 コーンは、「競争を行うのは自分の能力に対して抱いている根本的な疑いに打ち勝とう…

高額所得者は、分離課税によって累進税率を免れている。

神野直彦『財政学』(32) 今回は、第13章 人税の仕組みと実態 のうち、「日本の所得税制度」(p.193~)をとりあげる。 誂え税 これまでふれてこなかったが、神野は「誂え税」*1という言葉を使っている(p.170)。「経済力に応じて課す税金」という意味で…

Zをプログラムと呼ぶ観測者

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(34) 今回は、第4章 機械としての生命 第3節 自己増殖する機械 である。 これまでに、 遺伝子が外的に観察可能な形質の情報を担っていると考えるのは。外在的視点からの読み込みである。 遺伝子から…

接続の構造 ― その根拠に説得力はあるか

野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(2) 今回は、第Ⅰ編 接続の論理 第2章 接続の構造 である。 指示関係 「こそあど言葉」というものがある。「現代語の、代名詞・形容動詞・副詞・連体詞の中で、指し示す働きをもつ語をまとめた呼び方」(デジタル大辞泉…

ディケーの弁明

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(19) 今回は、第2章 エゴイズム 第4節 ディケーの弁明 1「正義は最善の政策」か(p.63~)である。 ディケーとは、ギリシア神話の正義の女神である。ここでは「正義論者」の意味である。本節は「ディケーの…

パネルデータ分析

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(10) 今回は、第5章 「複数期間のデータ」を生かすパネルデータ分析(p.178~)である。 パネルデータとは、次のようなデータである。 パネルデータとは同一の対象を継続的に観察し記録したデータのこ…

社会保障と経済の関係

香取照幸『教養としての社会保障』(28) 今回は、第8章 【新たな発展モデル】北欧諸国の成功モデルから学べること 第2節 北欧の成功―新たな成長モデル の続きと、第3節 目指すのは「安心と成長の両立」である。 知識産業社会における労働 北欧が先陣を切…

頭脳と手足

久米郁男他『政治学』(35) 今回は、第12章 官僚制 第1節 NPMの中の官僚制 の続きである。 NPM(New Public management)の具体例として、①市場化テスト、②エージェンシー、③PFIがあげられていたが、今回は、②エージェンシーを見てみよう。 頭脳と手足…

認知的斉合性理論 ― 食後のデザートは別腹よ

山岸俊男監修『社会心理学』(19) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、認知的不協和理論 の続きである。 「認知的斉合性理論」の代表的なものに、「認知的不協和理論」と「バランス理論」があるとされる。私は、認知的斉合性理論を「辻褄が合わない事…