浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

「種」と「類」のエゴイズム

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(16) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題 の続き(p.54~)である。 前回までは (1)正のエゴイズムと負のエゴイズム だったが、今回は (2)「種」と「類」のエゴイズム であ…

集積分析(1)― ギザギザがもたらすもの

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(7) 今回は、第4章 「階段状の変化」を賢く使う集積分析 である。 因果関係をデータ分析によって解き明かすための最良の方法は、ランダム化比較試験(RCT、Randomized Controlled Trial)である。RCT…

私は、いつまで生きるだろうか? いつ死ぬだろうか?

香取照幸『教養としての社会保障』(25) 今回は本書を離れて、番外編として「生命表」をとりあげる。 生命表とは、 年齢別、男女別などに類別し、生存数・死亡数および生存率・死亡率、平均余命(寿命)などを一括して示した表。日本では、厚生労働省が国…

粘性流体 ― ネバネバとサラサラ

久米郁男他『政治学』(32) 今回は、第10章 議会、第2節 日本の国会 第3項 国会についての2つのイメージ をとりあげる。 対決と裏取引 2つのイメージとは、①与野党が激しく対立する対決のイメージ、②与野党が舞台裏で本音の交渉をして妥協を図る裏取引の…

社会的アイデンティティ(2)― 自己カテゴリー化理論

山岸俊男監修『社会心理学』(16) 今回の記事の自己評価は、「自己カテゴリー化理論」を理解していないので、「ごみ箱」入りです。 ********** 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、社会的アイデンティティ② である。 山岸は、J.C.ターナ(1947-2011)…

社会を覆っている「不安」

香取照幸『教養としての社会保障』(24) 今回は、第7章 【国家財政の危機】「将来不安」を払拭するために何をすべきか 第2節 社会を覆っている「不安」である。*1 「将来不安」を払拭するために何をすべきか というタイトルであるが、日本社会を覆ってい…

競争と娯楽と満足感

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(23) 今回は、第4章 競争はもっと楽しいものなのだろうか-スポーツ、遊び、娯楽について の続き(p.143~)である。 S.ウォーカーは、こう述べている。「スポーツ選手がここで声を大にして強調する哲学は、ゲームの…

「遺伝子」から「形質」への因果関係

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(30) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第4節 遺伝子は外的に観察された形質の情報を担うか(p.154~)である。 現在、一口に「遺伝子」と言われるものが、何らかの情報を担うものである点、その物質的実体…

個人所得税、累進税率を考える

神野直彦『財政学』(28) 今回は、たぶん後で出てくるであろう「累進課税」について考えてみよう。といっても、累進課税の意義・根拠の話ではなく、「税率」の話である。消費税率については、皆さん関心が高く誰もが知っているが、所得税の税率については…

パーティーガールがケーキから飛び出してきた

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(6) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.45~)である。 是非もない事実 五感が捉えることのできる証拠に基づく経験的真理は、科学研究の領分に属する。そして、なぜ世界が存在するのかという問いは、科学の…

かけがえのない存在

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(15) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題 の続き(p.51~)である。 井上は、正義は道徳的価値のすべてではなく、一つの道徳的価値であると述べている。そして衡平の概念に…

租税の公平性と直間比率

神野直彦『財政学』(27) 今回は、第12章 租税の分類と体系 の続き(pp.175-180)である。 直接税と間接税 「税法入門」*1によれば、直接税と間接税の区分は、「税金を負担する者と税金を納める者が、同じか異なるかによる分類」である。直接税の代表的な…

RDデザインの強み・弱み、広島の「黒い雨」

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(6) 今回は、第3章 「境界線」を賢く使うRDデザイン の続きである(p.131~147)。*1 RDデザインにおける仮定が崩れるのはどんな場合か 前回の復習から。「回帰・不連続」(回帰曲線が不連続)の意味…

「議員立法」を考える

久米郁男他『政治学』(31) 今回は、第10章 議会、第2節 日本の国会 第2項 法案審議の流れ の続きである。 国会に提出される法案には、内閣が提出する法案(閣法)と、議員が提出する法案(衆法、参法)があり、議員が提出する法案は「議員立法」と呼ば…

社会的アイデンティティ(1) ― 私は「集団」に所属する

山岸俊男監修『社会心理学』(15) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、社会的アイデンティティ① である。 「アイデンティティ」と言えば、ID card(identity card、身分証明書) を思い浮かべる人が多いだろう。システムにログインするときの「ログイ…

オバマケア(お手頃価格のケア法)

香取照幸『教養としての社会保障』(23) 今回は、第7章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 (7)社会保険料負担―企業負担は重いのか、軽いのか? である。 被雇用者の社会保険料負担は、労使折半である。非正規労働者は社会保険に加…

回帰不連続デザイン

伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(5) 前回まで、本書を「COVID-19」及び「読書ノート」のカテゴリーで取り上げてきたが、今回より「読書ノート」のみのカテゴリーとする。(読了後COVID-19に言及するかもしれない。*1) 今回は、第3章…

遊びとスポーツ、 人生を準備する

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(22) 今回は、第4章 競争はもっと楽しいものなのだろうか-スポーツ、遊び、娯楽について(p.131~)である。 コロナ禍のオリンピックということで、開催の是非、観客の有無などが大いに話題になったが、いまではす…

「遺伝学における遺伝子」と「分子生物学的な遺伝子」の違い

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(29) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第3節 進化論・遺伝学における遺伝子概念(p.145~)である。 進化の総合説(ネオダーウィニズム)における遺伝子概念 ダーウィンの進化論は、自然選択によって生物…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(4) 「答えたい問い」のためにデータを作りにいく

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(92) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(4) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 今回は、第2章 現実の世界で「実際…

「存在の謎」は存在しない?

ジム・ホルト『世界はなぜ「ある」のか』(5) 今回は、第2章 哲学のあらまし の続き(p.37~)である。 前回の最後に、 「無から」の創造という教義は、無という考えを純然たる存在論的可能性として認めるものだった。…その教義によって、「なぜまったく何…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(3) RCTの3つの鉄則

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(91) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(3) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 緊急事態宣言や人流抑制や飲食店等…

正義の女神は、卑劣漢を憎むと同時に、道徳的英雄にも嫉妬する

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(14) 今回は、第2章 エゴイズム 第3節 正義とエゴイズム 2 エゴイズムの問題(p.49~)である。 普遍主義 正義定式が含意する根本的な平等主義と抽象主義は、一つの明確な規範要求である。 正義定式とは「等…

租税負担の転嫁

神野直彦『財政学』(26) 前回は、第12章 租税の分類と体系 であったが*1、本書ではなく、「税法入門」*2により、「租税の分類」と「租税体系」を見てきた。そこでは、「直接税と間接税の区分は、転嫁の有無によって説明される」とあった。 今回は、この…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(2)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(88) 伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(2) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 今回は、『データ分析の力 因果関係…

法案の作成と審議 ― 官僚と議員

久米郁男他『政治学』(30) 今回は、第10章 議会、第2節 日本の国会 第2項 法案審議の流れ をとりあげる。 国会は「国の唯一の立法機関」であり、法を制定する。行政は法を執行する。…現実はどうか? 法律はどのような過程を経て成立するのか? 内閣法制…

ヒューリスティックス(経験則と先入観)

山岸俊男監修『社会心理学』(14) 今回は、第3章 社会の中の個人 のうち、ヒューリスティックスである。 ヒューリスティックス(heuristics)とは何か。 ヒューリスティックスとは、問題を解決する際に、必ず正解にたどり着けるとは限らないが、うまくい…

COVID-19:因果関係に迫る思考法(1)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(85) ※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000 新型コロナ関連の、テレビ・新聞・雑誌・ネットの報道を見ていて、データ分析が小学生レベルで…

高齢世代と現役世代の支えあいは可能なのだろうか?

香取照幸『教養としての社会保障』(22) 今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 の続き である。 本章は、社会保障と国家財政について考えるものであるが、次のような項目からなっている。 (1)巨額の財政赤字―世界最大…

自由競争、万歳 !?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(21) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第4節 経済的な競争 の続き(p.115~)である。 市場にもっと競争を導入するという目的で規制が緩和されるならば、こうした競争の真の結果が…