浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

国会議員はいったい何をしているのだろうか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(7) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 2国会の構成と活動 の続き(p.534~) である。 私は、以前から国会議員はいったい何をしているのだろうかという疑問を持っている。マスメディアは選挙の時だけ大々的に報道するが、…

泥棒洞窟実験

山岸俊男監修『社会心理学』(8) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「泥棒洞窟実験」をとりあげる。 この「泥棒洞窟」というのは「釣りタイトル」のようだ。そこで、「釣り」に引っかかり、「泥棒洞窟」についてまず見ておこう。 ロバーズ・…

「相対的貧困率」は、貧困の指標ではない。格差の指標?

香取照幸『教養としての社会保障』(16) 今回は、第4章 変調する社会・経済 第4節 長期不況・デフレのインパクト-格差社会の出現 の続きである。 香取は、以下のようなこと述べている。 90年代後半、物価上昇率がマイナス(デフレ)に転じてからは、賃…

弁護士、学校教育、モチベーション

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(15) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第2節 競争がなにもならないものだという説明 の続き(p.94~)である。 弁護士という商売 テレビドラマ『SUITS/スーツ』(Season1:2018年、S…

遺伝子の量子力学的モデル

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(23) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第2節 分子生物学における遺伝子概念の展開(p.121~)である。 分子生物学の登場と量子力学 分子生物学の成立は、遺伝子の物質的実体を探求するという20世紀初頭以…

線引き問題

立岩真也『私的所有論』(33) 今回から、第5章 線引き問題という問題 である。 立岩の言う「線引き問題」とは何だろうか。それは「自己」と「他者」の線引き、「奪ってはならない存在」(処分してはならない存在)と「奪っても良い存在」(処分して良い…

可能的読者の反論…「それで?」

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(7) 今回は、第1章 正義論は可能か 第4節 相対主義 の続き(p.20~)と第5節 「それで?」である。 第4節の続き(非認識説)はパスして、第5節 「それで?」を読んでもいいだろう。 非認識説 価値相対主義の…

予算過程と財政民主主義

神野直彦『財政学』(19) 今回は、第9章 予算過程の論理と実態 の続き(P127~)である。 あらためて予算編成過程を概観しておこう。 月 項目 R2(2020) 年度予算 R3(2021) 年度予算 6~7月 経済財政運営と改革の基本方針(閣議決定)* 2019/06/21 2020/07…

比例代表制 ドント方式とは?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(6) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 2国会の構成と活動(p.529~) である。 国会の構成 浦部は、二院制について、次のように述べている。 日本国憲法における二院制の存在理由は、審議の慎重を期すということと、民意の…

パワハラと「根本的な帰属の誤り」

山岸俊男監修『社会心理学』(7) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「基本的な帰属のエラー実験」をとりあげる。*1 「基本的な帰属のエラー」とは何か? 人がある行動[例えば暴力行為]をとったときに、なぜそうした行動をとったのか原因を…

「自助・共助・公助」 - それは違うでしょう

香取照幸『教養としての社会保障』(15) 菅義偉首相は、就任記者会見(2020/9/16)の最後のほうで、次のように述べていた。 私が目指す社会像、それは、自助・共助・公助、そして絆であります。まずは自分でやってみる。そして家族、地域でお互いに助け合…

創造型あるいは合意形成型のディベート

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(14) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 第2節 競争がなにもならないものだという説明(p.91~)である。 課題をやり遂げることと、競争相手を打ち負かすこととは違う。これが競争が何…

「遺伝子」とは何か?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(22) 今回は、第3章 二つの遺伝子 第1節 「遺伝子」概念の登場 (p.116~)である。 メンデルにおける遺伝子概念*1 メンデルは、遺伝現象の原因となる「原基」を仮定した。 メンデルの言う「原基(遺…

私の父親は誰?

立岩真也『私的所有論』(32) 今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について 第3項 偶然生まれる権利 である。「偶然生まれる権利」とはどういう意味か不明であるが、生殖技術で生まれた「子どもの立場」から何が言えるのかについて述べられているようであ…

挫折した絶対主義者

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(6) 今回も、第1章 正義論は可能か 第4節 相対主義 の続き(p.17~)である。 井上は、「相対主義者を自認することは、「開明的」な自己イメージを提供してくれるため、現代日本においてはなお支配的な知的フ…

各省庁の概算要求と財務省による予算査定

神野直彦『財政学』(18) 現在、第9章 予算過程の論理と実態 を読んでいる。予算過程は、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分される。 今回は、「予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(概算要求基準)が閣…

「立法」とは

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(5) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続きである。 今回のテキスト(pp.527~529)は、あまり面白くない。…「現実」を見て、考えなければならないだろう。 ********** 国会は、国権の最高機関であっ…

エコー・チェンバー、そして「部族社会」

山岸俊男監修『社会心理学』(6) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「リスキー・シフト実験」の関連として、「エコー・チェンバー(Echo chamber)」をとりあげる。(本書に説明はない) echoは、こだま、反響、共鳴、付和雷同、模倣の意味…

賃金格差の現状

香取照幸『教養としての社会保障』(14) 今回は、第4章 変調する社会・経済 第4節 長期不況・デフレのインパクト-格差社会の出現 である。 香取は、「デフレは賃金を直撃しており、実質賃金が下落している」と述べているが、「デフレ」が「賃金」とどの…

「芸術的な創造性の問題」と「ジャーナリズムの競争的な構造」について

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(13) 今回は、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 の続きである。 いくつかの研究事例が紹介されているが、ここでは2つだけとりあげよう。 芸術的な創造性の問題 7歳から8歳の少女たちが「…

「生気論」の意義

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(21) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き(p.102~)と第3節 分子生物学と生気論である。 その前に、ちょっと復習。 「生気論」とは、「生物には通常の物質とは異なる特…

ベビーM事件

立岩真也『私的所有論』(31) 今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について の続き(p.160~)である。 ベビーM事件 1985年2月、スターン夫妻(夫は38歳の生化学者、妻は38歳の小児科医)とメアリー・ベス・ホワイトヘッド(当時28歳、無職、白人、子ども2…

価値相対主義(狭義の相対主義)とは?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(5) 今回は、第1章 正義論は可能か 第4節 相対主義 の続きである。 価値観の多様性(相対主義)を安易に認めてよいのか? 誰もが納得できる価値判断はあり得ないのか? これが私の問題意識である。 https://…

概算要求から予算案提出まで

神野直彦『財政学』(17) https://www.mirasapo.jp/budget/guide/process.html 予算過程は、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分される。 予算編成の立案過程について、神野は「転倒する立案過程」と呼んでいる。これは、…

行政機関が規範を定立して良いのか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(4) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続き(p.525~)である。 国会は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である 国会は、「国権の最高機関」である。…国会中心主義の統治システムを宣言したも…

リスキー・シフトとコーシャス・シフト

山岸俊男監修『社会心理学』(5) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「認知的不協和実験」が順番であるが、第3章で説明があるようなのでパスし、「リスキー・シフト実験」をとりあげる。(リスキー・シフトは、ストーナーが1961年に提唱し…

人口減少への対応策

香取照幸『教養としての社会保障』(13) 今回は、第4章 変調する社会・経済 第2節 人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きと、第3節 経済縮小と消費縮小 である。 年金制度の社会的意義 人間いつ死ぬか分からないので、長生きすることを前提に蓄え…

私たちの人生は、ジグソーパズルである

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(12) 今回から、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 に入る。 競争をやめてしまうと、素晴らしい生産性はもちろんのこと、最低限の生産性さえも失われてしまうといった単純な確信が繰り返され…

「分子」は、「仮想」か「実在」か?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(20) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続きで、「分子」についてである(p.98~)。 生物における多型(形質の多様性)の原因となるものは、理論が要請する「仮想的なもの」…

「体外受精・胚移植」技術利用の希望と不安

立岩真也『私的所有論』(30) 前回、生殖技術に関する基礎知識を仕入れたので、今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について を読んでいこう*1。このような技術の利用により、失うものと得るものがある。 1.体外受精・胚移植の技術を利用して自らが出産…