浮動点から世界を見つめる (旧:気の向くままに)

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

読書ノート

「生命」とは何か? バイオインフォマティクス

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(6) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第3節 ネットワークとしての生命 第1項 バイオインフォマティクス である。 私たちは「生命」について何を知っているのか? タンパク質の…

私と他者(2)

立岩真也『私的所有論』(16) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第3項 他者である私 である。本項は1頁ちょっとの分量しかないが、なかなか手強くてよく分からないい。(私のコメントはどうでもよいので、引用した立岩の文章をよく読んでみて…

財政とは何か? 量入制出の原則 量出制入の原則 大英博物館

神野直彦『財政学』(1) 今回は、第1部 財政学のパースペクティブ 第1章 財政学への旅立ち である。 神野は述べている。 学問の世界を旅する者は、謙虚に先達の知恵に学ばなければならない。先達の知恵に学ぶことは、人間の能力の可能性を信じることでもあ…

主権国家システムの形成

久米郁男他『政治学』(16) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第2節 国民国家システムの形成と拡大 である。 本書における「国家」の定義とは、 近代ヨーロッパが生みだした近代主権国家に限定した場合の近代国家を次のように定義する。 第1に、国境と…

ワーキングメモリは、メインメモリである。

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(21) 今回は、第12章 記憶 のうち、ワーキングメモリをとりあげる。 ワーキングメモリに関する研究成果は、自閉症や注意欠陥多動障害(ADHD)*1理解を深め、指導方法を改善に導くのに有用であるとされてい…

遺伝子と肥満・アルツハイマー病・身長・自閉症などとの関係 遺伝子型と表現型

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(5) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ の続きである。 山口は、ゲノム科学の劇的な進歩の中で、分子生物学の大前提の一つである「遺伝子」という…

リスクの偏在と社会保障

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(5)*1 今回は、第5章 包摂政策を考える 第2節 これまでの社会保障を考える をとりあげる。阿部は、「現状の社会保障制度では、現代の貧困や社会的排除のリスクに対応することは難しい」という…

私と他者

立岩真也『私的所有論』(15) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第2項 私でないのは私達ではない である。 前項(制御しないという思想)においては、他者や世界は、「私が制御しないもの」、「私ではないもの」として在ると述べられていた。…

現代社会の規範問題

平野・亀本・服部『法哲学』(55) 第6章 法哲学の現代的課題 第3節 現代法の新たな課題 である。本節は、現代社会において特に大きな規範問題を生んでいると思われる「医療技術の進歩」、「環境保護の必要」、「情報社会の進展」をとりあげている(本書…

秩序ある世界(平和な世界)はいかにして形成されるのか?

久米郁男他『政治学』(15) 今回は、第7章 国内社会と国際関係 第1節 国際関係の特質 である。 古城(第7章担当)は、「国際関係の構造は、アナーキーであるとみなされている」と述べている。「構造」とか「アナーキー」という言葉の使い方が適切とは思…

色々

デザイン(3) 世界は無数の色に満たされている。一体どれくらいの数の色があるのだろうか?という素朴な疑問がある。答えは、「定義の数だけある」である。 「連続量と離散量」について聞いたことがあるかと思う。 データには、「人数」のように1人2人と数…

記憶の過程

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(20) 第11章 知覚 の最後に、「知覚の恒常性」という話題があるが、あまり興味が持てないので、備忘としてメモしておくにとどめる。 ある特定の事物を知覚する場合,そこから感覚器官に送られる刺激作用…

マタイ効果:持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまで取り上げられるであろう。(マタイ福音書13章12節)

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(6) 今回は、第4章 本当はこわい格差の話 第5節 格差の増幅 のうち、「マタイ効果」をとりあげよう。 「マタイ効果」とは、「格差は自ら増長する傾向があり、最初の小さい格差は、次の格差を…

美女遺伝子 ミス・キャンパス DNA婚活 イモ掘り婚活

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(4) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ の続きである。 本書ではふれていないが、まず「美女遺伝子」の話題から。次の画像を見て下さい。 https://…

良識ある人間は、「他者性の破壊を抑制しようとする感覚」を持ち合わせているだろう。

立岩真也『私的所有論』(14) 今回は、第4章 他者 第1節 他者という存在 第1項 制御しないという思想 である。 先に見た私的所有を正当化しようとする言説は、あるものがある人が作り出し制御するものであることによって、そのものがその人のものである…

フェミニズムと多文化主義 問われる自由主義的な法秩序構成

平野・亀本・服部『法哲学』(54) 第6章 法哲学の現代的課題 第2節 同一性と差異 である。 人は、同じ人間であっても、性別、民族、人種、国籍、宗教、思想信条、年齢、健康、障害、能力、職業、趣味などの差異がある。そこには、同じ「人間」であるこ…

世界の中心で「君が代」を歌う

久米郁男他『政治学』(14) 今回は、第6章 市民社会と国民国家 第3節 ナショナリズムとコスモポリタニズム のうち、ナショナリズムをとりあげようと思ったのだが、どうも気分が乗らないのでやめにする。話題としては、ベネディクト・アンダーソンの『想…

運動知覚 運動視の錯視 アート

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(19) 今回は、第11章 知覚 のうち、「動きの知覚」である。専門用語の説明は、問題意識なく聞いても、右から左に抜けていくものだが、ちょっとだけ引用しておこう。 運動知覚 対象の動きの知覚、対象の位…

遺伝子概念の揺らぎ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(3) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2節「遺伝子」概念の揺らぎ である。イントロとして、「遺伝子操作ベビー」と「美女遺伝子」について触れようかとも思ったのだが、本節…

私の臓器や性は、根本的なもので、譲渡してはならないものなのか?

立岩真也『私的所有論』(13) 今回は、第3章 批判はどこまで行けているか 第3節 交換と贈与について である。 贈与と売買の差異および共通性 臓器の売買を認めている国は無い。代理母契約についても大勢としては認められていない。 では、善意の提供は認…

民主制と人権 市民的自由とは?

平野・亀本・服部『法哲学』(53) 第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か の続きである。 投票制度としての民主制 経済学者の一部は、社会的選択理論と呼ばれる分野で、民主制を純粋な投票集計制度とみなして精緻な分析を展開している。……

市民社会の多義性 市民団体の可能性

久米郁男他『政治学』(13) 今回は、第6章 市民社会と国民国家 第2節 市民社会 である。本書を読む前に、植村邦彦*1に対するインタビュー記事<日本に「市民社会」は存在しないのか?>(2018/1/12) を参照しよう。 civil societyという言葉は、当初は…

色彩の心理効果(感情効果) 街路樹

デザイン(2) デザインの要素には、形状(2次元、3次元)、質感、空間(スペース)など種々あるようだが、色(カラー)もその一つである。色により大きく印象が異なる。絵画等のいわゆる芸術作品のみならず、日用品・備品や自動車・電車・航空機や建造物…

奥行きの知覚 遠近法 日本の秋景色

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(18) 今回は、第11章 知覚 のうち、「奥行きの知覚」である。 奥行きの知覚 「網膜の2次元像から、いかにして3次元像を知覚するのか?」というのが最初の問いである(写真や絵画やテレビなどは2次元)…

社会の仕組みが、人々をより孤立へ、排除へ、貧困へ、追い込んでいるのではないだろうか?

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(4) 今回は、第4章 本当はこわい格差の話 第1節 排除と格差、第2節 格差と人間関係 をとりあげる。 社会的排除とは、社会の中で「居場所」がなく、「役割」がなく、他者との「つながり」がない…

ポスト・ゲノム時代 合成生物学 人工生命

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(2) 今回は、第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第1節 ゲノム科学の進展と現状 の続きである。 ゲノム・プロジェクト以後の時代(つまり現代)を、ポスト・ゲノム時代と呼ぶそうである。…

人工授精・体外受精等の生殖技術は、富裕層のためのものなのか? From Russia With Love

立岩真也『私的所有論』(12) 第3章 批判はどこまで行けているか は、人工授精・体外受精等の生殖技術への批判の言説を検討している。今回は、第2節 公平という視点 である。本章は、「人工授精・体外受精等の生殖技術」について議論しているが、これは…

自由主義とブルジョアジー(城壁の中の住民)

平野・亀本・服部『法哲学』(52) 現在、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か を読んでいるところだが、今回は、本書を離れて、「自由主義(liberalism)」について、「ブリタニカ国際大百科事典」(以下B)と「日本大百科全書」(以下…

自由と民主主義

平野・亀本・服部『法哲学』(51) 今回は、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か の続きである。 亀本(本節担当)は、自由とデモクラシーとの関係を以下のように述べている。 デモクラシーと自由 民主制は、支配者と被支配者の同一性と…

28歳テイラー・スウィフトの政治的影響力

今回は、第6章 市民社会と国民国家 第1節 「公」と「私」 である。…最初の二つは内容が無いので、そこを飛ばして、フェミニズムの項だけ見てもらっても構わない。トランプ大統領、テイラー・スウィフト、安倍首相、綾瀬はるか、石原さとみ