浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

読書ノート

非競争的な文化

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(11) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第6節 不可避性をめぐる心理学の議論 の続き(p.69~)である。 ジェローム・ケーガンは次のように述べている。…「とうもろこし畑で、8歳の息子にトウモ…

ドリーシュの「新生気論」

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(19) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続きで、「生気論」についてである。 但し、本書ではなく、池田光穂と米本昌平の解説を読むことにする。 生気論を、オカルトあるいは…

生殖医療技術を概観する

立岩真也『私的所有論』(29) 今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について である。 私の関心は、倫理・社会問題としての生殖技術(生命操作、遺伝子操作)であるが、それを議論する前に、生殖技術に関する基礎知識が必要である。 これまでの生殖技術に…

「ルサンチマン」と評論しない

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(3) 井上は、「正義」に対して嫌悪を抱くような感情の3つの要因を挙げていた。 「正義よりも平和を」というスローガンに要約される発想。 正義に関するあらゆる思弁は、その本質において、支配階級のそれを代…

「官僚主導」から「官邸主導」の予算編成へ

神野直彦『財政学』(15) 今回は、第9章 予算過程の論理と実態 の続きである。本書は、予算過程を、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分している。 予算編成過程については、サイト「ミラサポ」の「予算編成のプロセス」…

討論の広場-議会と議員の活動原則

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(2) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続きの予定でしたが、関連の話題として、「議会と議員の活動原則」についてとりあげることにします。 国会の他、各種組織において、会議や打合せ等による「意思…

印象形成の連続体モデル

山岸俊男監修『社会心理学』(3) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「印象形成実験」である。(「ホーソン実験」は、つまらないのでパスする)。 印象形成とは、「容姿・身振り・声・風評など、他者に関する部分的な情報を手掛かりにして…

M字カーブ(女性の労働力率)を考える

香取照幸『教養としての社会保障』(11) 今回は、第4章 変調する社会・経済 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きである。 人口ボーナス・人口オーナス(「少子高齢化」を言い換えたものと考えてよい)と社会保障の関係については、次図がそ…

「我々のアイデンティティは、社会的な世界の関数である」は、何を含意するか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(10) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第6節 不可避性をめぐる心理学の議論(p.65~)である。 コーンは、最初に「フロイト[1856-1939、精神科医]のモデルを受け入れる人は競争が避けがたいも…

生気論とアニミズム 風は生命である(?)

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(18) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続きで、「生気論」についてである。 前回記事の最後の部分を再掲しよう。 「存在の大いなる連鎖」から「生物学」へ 博物学は、鉱物と…

遺伝子操作技術の功罪

立岩真也『私的所有論』(28) 体調不良で1週間の休みとなりました。新型コロナウィルス感染かと思いましたが、食あたりでした。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [4]離脱? を予定していたが、立岩の言わんとすることがよく分からな…

「正義よりも平和を」の意味

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(2) 井上は、「正義」に対して嫌悪を抱くような感情の3つの要因を挙げていた。 「正義よりも平和を」というスローガンに要約される発想。諦観的平和主義 正義に関するあらゆる思弁は、その本質において、支配…

議員は法律案を提出できるのに、なぜ予算案を提出できないのか?

神野直彦『財政学』(14) 今回は、第9章 予算過程の論理と実態 である。予算過程は、以下のように区分される。 立案過程…行政府が予算を準備する。 決定過程…議会で予算を審議し、成立させる。 執行過程…予算に基いて、行政府が財政を運営していく。 決…

国会議員は、特定階層や特定地域の代表者なのか?

久米郁男他『政治学』(28)、浦部法穂『全訂 憲法学教室』(1) 今回は、第10章 議会 第1節 議会の比較 の続きと、第2節 日本の国会 の予定だったが、ここで述べられていることを要約/引用する気になれない(一本筋の通った記述とは感じられない)の…

社会的促進と社会的抑制-得意なことはより得意に、苦手なことはもっと苦手に

山岸俊男監修『社会心理学』(2) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「社会的促進実験」*1である(p.24~)。 他者が近くにいる[見ている]ことで、慣れている作業や単純な課題の遂行が促進されることを、社会的促進と言う。 反対に、他者…

年齢区分別の将来人口推計(少子高齢化)

香取照幸『教養としての社会保障』(10) 今回は、第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きである。 人口構成の変化が経済にとってプラスに作用する状態を「人口ボーナス」、マイナスに作用…

「協力」は、「資源にゆとりがあるときにのみ許される贅沢」なのか?

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(9) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第5節 異文化における生活 の続き(p.60~)である。 マーガレット・ミード(1901-78、文化人類学者)の言葉を再掲しておく。 この調査から得られる最も基本…

「分類する」ということ

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(17) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き「生物の分類」である。(p.88~) 下の写真は、「ぼうずコンニャクのWEB寿司図鑑」よりピックアップしたものである(最後の2枚を…

なぜドーピング(筋肉増強剤)は認められないのか?

立岩真也『私的所有論』(27) 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [3]私が私を作為することに対する他者の感覚 である。 立岩は、作為する(自分の身体に手を加える)ことの例として、スポーツでの筋肉増強剤の使用をあげている。これらは禁止され…

正義論-僕たちは世界を変えることができない?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(1) 積読本の中から1冊抜き出したところで山は崩れないのだが、それでも駆け足で斜め読みすることはなく、ゆっくりと読んでいこう。 映画『僕たちは世界を変えることができない。 But we wanna build a schoo…

桜を見る会 予算の移用と流用

神野直彦『財政学』(13) 前回は、一般会計のみではなく、特別会計も見ておく必要があるという話しであった。しかし他に、政府関係機関(いまは組織の変遷等があり、規模は大幅減少しているようだが)もあり、それぞれの予算の間で財源の繰入・繰出がある…

議院内閣制 - 権力集中と権力分散

久米郁男他『政治学』(27) 前回は、本書を読む前に、権力分立について概観し、「日本では、立法・行政・司法(三権)は分立していなくて、癒着しているのではないか?」 との疑問を提出しておいた。そこではあえて「癒着」という言葉を用いた。 今回は、…

傍観者効果(見て見ぬふり)

山岸俊男監修『社会心理学』(1) 本書の構成は、次のとおりである。 第1章 社会心理学とは? 第2章 社会心理学の歴史的な実験 第3章 社会の中の個人 第4章 対人認知と行動 第5章 集団の中の人間 第6章 文化と人間の心理 第7章 社会現象・社会問題の…

人口ピラミッドを登る

香取照幸『教養としての社会保障』(9) 今回は、第4章 変調する社会・経済-人口減少、少子化、高齢化 第2節人口オーナスとライフスタイルの変化 である。 日本の将来人口を、年少人口(~14歳)・生産年齢人口(15~64歳)・老年人口(65歳以上)に区分…

「未開人」に学ぶ

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(8) 今回は、第2章 競争は避けられないものなのだろうか 第5節 異文化における生活(p.56~) である。 http://labaq.com/archives/51757732.html 非競争的な文化のいくつかについて、『未開人における協力と競争』…

植物と動物の中間

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(16) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き 「博物学」についてである。 博物学とは、「およそこの世界にある森羅万象を知り得る限り列挙して記述しようとする学問」(本書…

脳の改変 欲望の空虚

立岩真也『私的所有論』(26) 今回は、第4章 他者 第4節 技術について [1]技術、[2]「私」 である。*1 *2 ここで言う技術とは、人体に対する操作技術を意味するだろう。 この人体に心を含めるかどうか。人体に脳を含めると心が問題になってくる。 この…

母屋(一般会計)と離れ座敷(特別会計)

神野直彦『財政学』(12) 今回は、第8章 予算制度の構造と機能 の続き である。 私たちの税金(や保険料)がどのように使われているのかを把握するためには、予算制度をしっかりと理解しておくことが必要だろう。さもないと……。 今回は、本書ではなく、…

日本では、立法・行政・司法(三権)は分立していなくて、癒着しているのではないか?

久米郁男他『政治学』(26) 今回から、第2部 統治の効率-代理人の設計 第10章 議会 に入るが、本書を読む前に、権力分立について概観しておきたい。 おそらく教科書的な解説は、次のようなものであろう。 権力の濫用を防止し、国民の政治的自由を保障す…

「ウィーン地下鉄の改札口」が意味するものとは?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(33) 前回の「認知症」は病気なのか? の続きを書こうと思っていたのだが、これは別記事とし、本書に戻る。 残りは、第17章 社会のなかの人、第18章 心と社会 であり、これは「社会心理学」のカテゴリー…