浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

「生気論」の意義

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(21) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続き(p.102~)と第3節 分子生物学と生気論である。 その前に、ちょっと復習。 「生気論」とは、「生物には通常の物質とは異なる特…

ベビーM事件

立岩真也『私的所有論』(31) 今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について の続き(p.160~)である。 ベビーM事件 1985年2月、スターン夫妻(夫は38歳の生化学者、妻は38歳の小児科医)とメアリー・ベス・ホワイトヘッド(当時28歳、無職、白人、子ども2…

ディデューラ(ДиДюЛя)

YYJT(29) №1と№5は、同じ曲です。 №2,3,5は、Saint-Petersburg*1でのライブです。 №3の動画より。この中央のダンサーいいですね。このダンスはポルカ? それと円筒形の帽子は、何という名前でしょうか? 1.Полет на Меркурий(水星への飛行) www.…

価値相対主義(狭義の相対主義)とは?

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(5) 今回は、第1章 正義論は可能か 第4節 相対主義 の続きである。 価値観の多様性(相対主義)を安易に認めてよいのか? 誰もが納得できる価値判断はあり得ないのか? これが私の問題意識である。 https://…

概算要求から予算案提出まで

神野直彦『財政学』(17) https://www.mirasapo.jp/budget/guide/process.html 予算過程は、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分される。 予算編成の立案過程について、神野は「転倒する立案過程」と呼んでいる。これは、…

COVID-19:「症状なき感染者」は、「未病」である。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(23) COVID-19を広い視野で考えるために、前回に引き続き「病気」について少し勉強しよう。 ■正しく恐れる ■冷静な頭脳と温かい心 病気の3つのカテゴリー 医師で医学博士の岡本裕は、病気は3つのカテ…

行政機関が規範を定立して良いのか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(4) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続き(p.525~)である。 国会は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である 国会は、「国権の最高機関」である。…国会中心主義の統治システムを宣言したも…

COVID-19:「感染者」は「疾病の患者」なのか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(22) COVID-19とは、Corona-virus disease 2019の略であり、 <2019年に発見されたコロナウイルス(SARS-CoV-2)を原因とした疾病(disease)> である。 以前より落ち着いたとはいえ、日々「感染者数…

リスキー・シフトとコーシャス・シフト

山岸俊男監修『社会心理学』(5) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「認知的不協和実験」が順番であるが、第3章で説明があるようなのでパスし、「リスキー・シフト実験」をとりあげる。(リスキー・シフトは、ストーナーが1961年に提唱し…

COVID-19:ユヴァル・ノア・ハラリの論考(3)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(21) 今回は、「新型コロナウイルスで、死に対する私たちの態度は変わるだろうか? 否、じつはその正反対だ」 (2020/4/20 「ガーディアン」紙)(訳:柴田裕之)です。 ハラリは、「新型コロナウイル…

牧野貴の映像作品 2002-2017

牧野貴の作品紹介 Makino Takashi Films 2002-2017 Excerpt (2002) EVE (2006) No is E (2008) still in cosmos (2008) while we are here (2011) Generator (2013) 2012 (2015) Origin of the Dreams (2015) Cinéma Concret (2016) The Picture From Darkne…

COVID-19:制御された状況下での感染は許容する

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(20) 今回は、分子ウイルス学・免疫学研究者である峰宗太郎氏へのインタビュー記事(日経BP、2020年5月29日、「神風は吹かない、でも日本は負けないよ」)を読むことにします。 引用中、(Y)は日経ビジ…

人口減少への対応策

香取照幸『教養としての社会保障』(13) 今回は、第4章 変調する社会・経済 第2節 人口オーナスとライフスタイルの変化 の続きと、第3節 経済縮小と消費縮小 である。 年金制度の社会的意義 人間いつ死ぬか分からないので、長生きすることを前提に蓄え…

COVID-19: ユヴァル・ノア・ハラリの論考(2)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(19) 今回は、新型コロナウイルス後の世界 ― この嵐もやがて去る。だが、今行なう選択が、長年に及ぶ変化を私たちの生活にもたらしうる (2020/3/20 「フィナンシャル・タイムズ」紙)(訳:柴田裕之)…

私たちの人生は、ジグソーパズルである

アルフィ・コーン『競争社会をこえて』(12) 今回から、第3章 競争はより生産的なものなのだろうか-協働の報酬 に入る。 競争をやめてしまうと、素晴らしい生産性はもちろんのこと、最低限の生産性さえも失われてしまうといった単純な確信が繰り返され…

COVID-19: 新しい生活様式? 余計なお世話だ!

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(18) 緊急事態宣言解除後も、「新しい生活様式」が求められている。どういうものか? 「実践例」が、専門家会議の提言の別添資料にある。 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス…

「分子」は、「仮想」か「実在」か?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(20) 今回は、第2章 生物学の成立構造 第2節 「生物学」の登場 の続きで、「分子」についてである(p.98~)。 生物における多型(形質の多様性)の原因となるものは、理論が要請する「仮想的なもの」…

COVID-19: ユヴァル・ノア・ハラリの論考(1)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(17) 今回は、ユヴァル・ノア・ハラリの新型コロナウイルスに関する論考を見ていくことにする。(訳:柴田裕之) (私の記事は読まなくても、次のハラリの記事をぜひ読んでみて下さい。おすすめです) …

「体外受精・胚移植」技術利用の希望と不安

立岩真也『私的所有論』(30) 前回、生殖技術に関する基礎知識を仕入れたので、今回は、第4章 他者 第5節 生殖技術について を読んでいこう*1。このような技術の利用により、失うものと得るものがある。 1.体外受精・胚移植の技術を利用して自らが出産…

COVID-19:ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(16) 「抗体検査」とか「抗原検査」が話題となっている。 検査には、偽陽性、偽陰性の問題がつきものなので、これまで「PCR検査」についてとりあげたのであるが、自分の理解のために考えた例題を紹介し…

ジュディエスター(Judyesther)(2)

YYJT(28) 以前(2018/6/14)、ジュディエスター(Judyesther)をとりあげたので、今回は2回目です。 Judyesther(ペンネーム)は、ブタペスト在住の作曲家です。ホームページ(https://www.judyesther.com/)を参照ください。 彼女の穏やかで優しい曲は、自然…

COVID-19:鳥の目、虫の目、魚の目、心の目

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(15) (COVID-19にのみ注目する)一点集中ではわからないことがある。今回のコロナ騒動でそのことを痛感する。 ■正しく恐れる ■冷静な頭脳と温かい心 私はかって別のところで、 ■鳥の目、虫の目、魚の…

「相対主義」の些か退屈な分類学的議論

井上達夫『共生の作法-会話としての正義-』(4) 井上は、「正義」に対して嫌悪を抱くような感情の3つの要因を挙げていた。 「正義よりも平和を」というスローガンに要約される発想。 正義に関するあらゆる思弁は、その本質において、支配階級のそれを代…

COVID-19:災難にあう時節には災難にあうがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。これは災難をのがるる妙法にて候(良寛)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(14) そろそろ「総括」を始めてもよい時期かもしれない。「有識者」により、すぐれた論考が出てくるだろう。 ■正しく恐れる ■冷静な頭脳と温かい心 現時点で、今後のために考えておかなければならない…

「経済財政運営と改革の基本方針」について

神野直彦『財政学』(16) 今回は、第9章 予算過程の論理と実態 の続きである。予算過程は、(1)編成過程(立案過程と決定過程)、(2)執行過程、(3)決算過程に区分される。 第1段階は、毎年6~7月に出される「経済財政運営と改革の基本方針」(上図右上)…

COVID-19:人を見たらコロナ患者と思え!? (「PCR検査」再論)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(13) 「PCR検査が不十分」という批判は、メディアのみならず、「政治家」や一部の「専門家」の間にもあるようだ。 私は前々回の記事でPCR検査についてふれたが、読み返してみるとどうも不十分で、説得…

国会議員は、全国民を代表しているか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(3) 今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続き(p.520~)である。 国会議員は、その選挙区の代表(地元の利害の代弁者)ではなく、全国民の代表である。 選出母体の意思・指令に拘束されないという意味…

COVID-19:自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(12) ■正しく恐れる ■冷静な頭脳と温かい心 (A) COVID-19は、(新型かもしれないが)一つの感染症に過ぎないのだから、緊急事態宣言など出さずに、粛々と対策を講じれば良いものを、どこで間違ったか、…

5人以上が見上げていると、通りがかった人の8割以上が同じ行動をとる

山岸俊男監修『社会心理学』(4) 今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち、「同調実験」である。「同調」については、第5章で説明があるので、そこで詳しく見ることにして、ここではごく簡単にコメントするにとどめたい。 本書の説明では、「同…

COVID-19:「PCR検査を拡充すべき」というマスコミなどの誤った主張について

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(11) 久しぶりのコロナ記事です。コロナでダウンしていたわけではありません。 コロナの議論は多岐にわたり、限られた時間の中で、膨大な情報のなかから、何が正しい(妥当)かを判断し、何を優先的に…