末永照和(監修)『20世紀の美術』(22)
今回は、(最終章)第12章 モダニズムを越えてである。1980~1990年代の作品がとりあげられている(本書発行は2000年)。
1980年代の美術は、ヨーロッパとアメリカの双方で大きなうねりとなった新表現主義によって幕を開ける。伝統的技法や感情豊かなイメージへの回帰は、70年代の美術の観念性[コンセプチュアル・アート]や禁欲性[ミニマル・アート]への反動であると同時に、当時のポストモダン思想の流行とも呼応するものだった。それは他方で、高度に発達した消費社会の構造的批判や解体を企てるシミュレーショニズムと結びつく。モダニズムの美学に対する見直しは、1989年の東西冷戦構造の終結を反映し、イデオロギーではなく、私的もしくは身体的な領域に目を向けさせるとともに、アジアや旧東欧圏など、これまであまり注意されなかった地域の美術への関心を引き起こした。また90年代には写真やビデオアートなどの映像表現が世界各地で流行した。
ナン・ゴールディン(Nan Goldin、1953-、アメリカの写真家)
1965年4月12日、当時18歳であった姉・バーバラが自殺。姉の死とその喪失感はゴールディンに大きな影響を与えることになり、写真を撮り続ける動機の一つともなっている。1973年ボストンで、同居人や周囲のドラァグクイーン、ゲイ、トランスセクシュアルの友人達へのオマージュとして写真を撮り始める。…その後ニューヨークに移り、ゲイバー「ストーンウォール」での反乱後の、活気に溢れたゲイサブカルチャー、ポストパンク、ニューウェーブシーンを撮影し始める。彼女は特にバワリー地区のドラッグサブカルチャーに惹かれていた。(Wikipedia)
私は、まず予断なしに作品を見るようにしている。以下の3枚が印象に残ったので、wikipediaを参照した。
https://letspeakchic.files.wordpress.com/2012/11/nan-goldin9nan-goldin-fw-12-grey-magazine.jpg
ビル・ヴィオラ(Bill Viola、1951-、ビデオ・アーティスト)
古典絵画の三連画形式を取り入れた「人間の町」など、宇宙・生命・存在などをめぐる思索的主題を壮大なスケールで提示してみせる。1995年のヴェネチア・ビエンナーレでアメリカ代表に選ばれ、またその個展がヨーロッパ各地で開催されたことも90年代におけるビデオ・アート隆盛の契機となった。
White Space
Flux
今回で『20世紀の美術』は終了である。数多くの興味深い作品を取り残した感はあるが、今後「21世紀の美術」も見てみたい気がしている。