「展示作品を盗んでも良い」というユニークな展覧会『盗めるアート展』が、same gallery(東京)で、2020/7/10~7/19の予定で開催された。
展示にあたり、次のようなルールが設定された。*1
- 作品を持ち帰られる方をアート泥棒様と呼ばせて頂きます。
- 本展示場にて盗んで良いのは、展示されている作品のみとさせて頂きます。会場内の展示品以外の什器、備品の盗難、破損におきましては、🚓に通報させていただきます。
- -盗む作品は一組につき一点限りとさせていただきます。(例:キャッツアイ様の場合は3人で1点のみ泥棒可)
- アート泥棒される際は、近隣のご迷惑にならないよう静かに、マナーのある泥棒行為をお願いします。
- 会場内での、飲食、睡眠は禁止とさせて頂きます。
- 会場内への作品の持ち込み、設置は禁止させて頂きます。
- 会場内の監視カメラより、インターネット上で中継、録画された動画の公開をさせていただくことがありますのでご自身のプライバシーを守りたい方は、マスクや仮面の着用した上でご入場ください。
- アート泥棒様への作品の梱包、運搬のお手伝いは致しておりませんので、全て自己責任でお願いします。
- 他のアート泥棒様と譲り合いましょう。
- 終了期日前に、全作品が盗まれた場合は、その時点で閉展となります。
美術品を盗む怪盗「キャッツアイ」(喫茶店経営の美人3姉妹)
https://www.youtube.com/watch?v=za2trRYEl3k
ギャラリーの主催者(長谷川踏太、クリエイティブディレクター)は、開催前に次のように語っていた。*2
- アートと人との付き合い方のバリエーションを増やせたらと思い、企画しました。
- もっとアートが生活に溶け込むようになればいいなと思っています。黙って真面目に鑑賞するだけじゃなくて、自分の生活に取り入れたり、自分で楽しんだりする対象としてもいいんですよ。
- 絵画が盗まれるのって超有名なアーティストだけじゃないですか。「俺の作品盗まれたんだよね」と言えたら箔が付いていいかなと思って、そういう憧れはあります。
- 周りに気づかれないうちに作品がなくなってたらかっこいいですよね。
- アートだと即物的じゃないという特性や、価値が相対的であることで、そういうこと[転売]は起こらない。そこが面白いんじゃないかな。
- 住宅街にあるギャラリーなので騒がずに、泥棒のみなさんは潜んで来て下さい。本当に欲しいものだけを盗んで、家に持って帰って下さい。
このような思いのもと、上記10のルールが制定されたのだが、ほとんどの人が「マナーのある泥棒行為」をすることができなかった。中で、ふ凡社鈴木が、模範的泥棒として、「盗めるアート展」をレポート*3している。(非常に面白いので、ぜひ読んでみて下さい)
ギャラリーの階段下の暗がりに潜む泥棒
http://mhubon.com/2020/07/10/stealable-art-exhibition/
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私は、つい野暮ったく考えてしまうのだが、「アート泥棒」という私的所有ではない方法で、「アートが生活に溶け込む」方策を考えねばならないと思う。公園のように、フリー(無料、自由)をキーワードとして、公共空間が整備できれば良い。基本的に義務教育が無償であるように、アーティストの生活を保障したうえで、アート作品展示施設(空間)のフリー化を推進していくことが、私たちの生を充実させていくことにつながるのではなかろうか。
*1:盗めるアート展(https://samegallery.com/S_A_E)
*2:アート泥棒たちに捧ぐ 話題の「盗めるアート展」の秘密(https://forbesjapan.com/articles/detail/35580/1/1/1)
*3:
泥棒になって「盗めるアート展」に行った話(http://mhubon.com/2020/07/10/stealable-art-exhibition/)。
泥棒と一夜の夢を終えて「続・ふ凡宣言」(http://mhubon.com/2020/07/12/hubon-world2/)