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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

「黙考」の絵画 - ロバート・マザ-ウェル

大岡信抽象絵画への招待』(7)

ロバート・マザ-ウェルは、スペイン内戦をテーマにした「スペイン共和国への哀歌(エレジー)」の連作が有名である。

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http://www.thepalettepages.com/wp-content/uploads/2014/07/805816d1323285846894.jpg

 

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http://ilcassetto.forumcommunity.net/?t=53869405

 

スペイン内戦とは、どんな戦争であったか? 以下の説明が簡潔にまとまっているようだ。

スペイン内戦(1936~1939)は、1931年の統一地方選挙で王制から共和制へ移行したスペイン国内の社会的・政治的混乱から勃発した内戦です。左派の共和国政府とフランコ将軍の右派反乱軍による戦争は、ピカソの『ゲルニカ』に描かれたような無防備都市への無差別爆撃などから「現代殺戮兵器の実験場」といわれ、ドイツ、イタリアの反乱軍支援、ソ連(当時)の共和国支援、欧州列強と南北アメリカの不干渉という名の干渉、日本人を含め世界55カ国からの義勇兵の参戦などから「第二次世界大戦の前哨戦」ともいわれる戦争でした。

スペイン内戦はまた、「イデオロギー戦争」、報復と粛清が繰り返された「20世紀最大の宗教戦争」、戦争を正当化するためジャーナリストや文学者などを大量動員した「インクの戦争」など、さまざまに呼称されるほど重大な事件だったにもかかわらず、その歴史学的研究はいまだ十分ではないといわれています。

http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/daigaku_shi/museum/2011/110622.html

 

齊藤孝は、次のように述べている。

1936年2月16日、スペインでは総選挙の結果、共和主義者、社会党共産党の協力による人民戦線が右翼の国民戦線に対して勝利を得て、19日、共和主義者が中心となってアサニャを首班とする人民戦線政府が成立した。…人民戦線政府は、1934年10月の反ファシスト政府蜂起における政治犯の釈放や農地改革カトリック教会の特権の縮小などを課題としたが、大衆は徹底した社会変革を望んでいた。とくにスペインにおいて強力であったアナキスト系の労働者や農民は、人民戦線政府の意向を超えて革命化していた。これに対して、自由主義的な中間層や社会党共産党の指導下にある労働者などは、人民戦線政府に協力する態度をとっていた。一方、大資本・地主・教会を基盤とする右翼諸勢力は、軍部を中心としてひそかに政府打倒の計画を進めた。(日本大百科全書)

 

マザ-ウェル(1915-91):ワシントン州アバディーン生まれ。1940年、コロンビア大学大学院に入学。難民画家たちと知り合って、画家を志した。スペイン内戦は、1936~39なので、マザ-ウェル21~24歳のときである。スペイン内戦に対してどういう見解をもっていたのだろうか。

大岡はこう書いている。

アメリカの抽象画家たちのうち、理論家としての著作も多く、その関心が哲学、文学、精神分析学などから政治にまで、多面的なひろがりを示しているロバート・マザ-ウェルは、あるとき「最もすぐれた絵画においては、作家は黙考しているのである」といった。

マザ-ウェルは、…第2次大戦中にアメリカにどっと流れ込んだシュルレアリスムの影響を深く受けた画家たちの一人であり、中でもおそらく最も知的包括力と学識に富んだ画家だった。その彼が、絵画における精神的なものの強調は、かえって絵画を堕落させる結果を招く危険があると指摘しているのは意味深い。確かにシュルレアリスムの絵画は、その低い側面においては平板な文学的絵解きに堕する危険を持っていた。無意識に関する通俗的なお喋りを絵にしてみせるだけといっていいような作品も描かれた。マザ-ウェルの拒絶的な姿勢は、おそらくそういう現象から触発されたものであったろう。

 

大岡は、本書でマザ-ウェルの「スペインの牢獄」と題する絵を載せている。

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もちろん、マザ-ウェルは政治を語らない。「黙考」している。では「スペインの牢獄」、「スペイン共和国への哀歌(エレジー)」で、何を黙考していたのか。

私には、Lyric Suiteと題する次の作品が「スペイン内戦」にふさわしい作品のように思える。 

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