浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

アート

アマチュアの領分

岡田暁生『音楽の聴き方』(23) 第5章 アマチュアの権利 の続きである。 「聴く音楽」と「する音楽」 大戦中にベッカーが提起した音楽と社会をめぐる問題を、1920年代に入ってさらに展開させたのがドイツの音楽学者ハインリッヒ・ベッセラーである。…ベッ…

アンフォルメル - パリの実存的な抽象

末永照和(監修)『20世紀の美術』(16) 前回クイズ(次の彫刻の作者は誰でしょうか? 参照)の答えです。 (A)バーバラ・ヘップワース、(B)アルベルト・ジャコメッティ、(C)パブロ・ピカソ 美術愛好家でなければ、たぶんヘップワースやジャコ…

音楽の力 フラッシュモブ 『歓喜の歌』

岡田暁生『音楽の聴き方』(22) 第5章 アマチュアの権利 の続きである。 音楽評論家パウル・ベッカー(1882-1937)は、「音はそれ自体ではただの音(=知覚される素材)に過ぎない。それを音楽として知覚する人々(=周囲世界)、そして枠組(=形式)が…

次の彫刻の作者は誰でしょうか?

末永照和(監修)『20世紀の美術』(15) クイズです。下のA~Cの3作品の作者は誰でしょうか。次の中から選んでください。 パウル・クレイ(Paul Klee) パブロ・ピカソ(Pablo Picasso) マックス・エルンスト(Max Ernst) ヘンリー・ムーア(Henry…

音楽の力

Chris Spheeris / Culture (painter: Ettore Tito) www.youtube.com Giovanni Marradi / Just For You (painter: Francois Fressinier) www.youtube.com John Sokoloff / Alma de San Pedro (painter: Konstantine Razumov) www.youtube.com Diego Massanti …

ブランクーシの彫刻 <抽象ではなく本質を表現した具象>

末永照和(監修)『20世紀の美術』(14) 今回とりあげるのは、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi、1876-1957)である。 彫刻といっても、(美術愛好家でなければ)あまり馴染みがないので、解説をみておこう。 木,石,金属,…

音楽の力(ベートーヴェン、絢香)

岡田暁生『音楽の聴き方』(21) 今回から、第5章 アマチュアの権利 に入る。 岡田は、西洋近代音楽を念頭に置いて話をしているが、ここで述べられていること(考え)は、他分野(芸術全般及びその他の分野)にも拡張可能かもしれないということに留意して…

エコール・ド・パリのマルク・シャガール

末永照和(監修)『20世紀の美術』(13) 今回は、第5章 両大戦間の国際的動向 である。内容は、エコール・ド・パリ、パリの抽象美術、イギリスの抽象美術、メキシコ壁画運動、アメリカン・モダン、第二次大戦下の美術。…しかし、ざっと見た限り、とり…

時空を超えたコミュニケーションとしての音楽

岡田暁生『音楽の聴き方』(20) ポリーニのショパン《エチュード集》をどう聴くか 岡田の話を聞く前に、次の曲を聴いてみよう。 Pollini plays Chopin Etude Op.10 No.5 (黒髪エチュード) Pollini plays Chopin Etude Op.25 No.2 (参考)Op.10 No.5の…

青時雨

青時雨(あおしぐれ)とは、「青葉の頃、雨が上がったあとの木の下を通ると、葉に溜まっていた雫がはらはら落ちてくること」(夏の季語、歳時記)らしい。 https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-56-dd/tukasa5462/folder/980514/85/3186338…

シュルレアリスム(2) 球体関節人形 ハンス・ベルメール 清水真理

末永照和(監修)『20世紀の美術』(12) 美術史を語ろうとするなら、サルバドール・ダリ(Salvador Dalí、1904-1989)は外せないだろうが、私は「好み」で作品をとりあげているので、これはパスする。 今回とりあげるのは、ハンス・ベルメール(Hans Be…

Szentpeteri Csilla - ブラームス、メンデルスゾーン、ヴィヴァルディ、ショパン、ピアソラ

1.ブラームス Szentpéteri Csilla & Band - After Brahms 2.メンデルスゾーン Legend theme of Mendelssohn 3.ヴィヴァルディ Szentpéteri Csilla - Storm (theme of Vivaldi) 4.ショパン Szentpeteri Csilla - Albatrosz 5.ピアソラ Szentpeteri …

シュルレアリスム(1) - 夢・驚異・想像・無意識・狂気・偶然

末永照和(監修)『20世紀の美術』(11) 形而上絵画 キリコらの作品が「形而上絵画」と称されるが、私にはあまり魅力的なものではないので、解説だけ引用しておこう。どういう絵画なのかの雰囲気だけは分かる。 目に見える何気ない世界にも、その背後に…

音楽作品の客観的存立とその解釈

岡田暁生『音楽の聴き方』(19) 岡田は「音楽作品」について話しているのだが、これは「芸術作品」全般にあてはまるように思われる。 次の作品は、「芸術作品」であるや否や? ピンクノイズ www.youtube.com 4分33秒 (John Cage) www.youtube.com 音楽…

キリストと姦通をした女/マックス・ベックマン

末永照和(監修)『20世紀の美術』(10) 新即物主義とはいかなる絵画か。 1920年代から30年代初頭のドイツにおける、克明な形態描写と社会批判的なシニシズム[冷笑主義]を特徴とするリアリズム絵画の総称。…グループとしてのまとまりはなく、それぞれ…

指揮者フルトヴェングラーとトスカニーニ

岡田暁生『音楽の聴き方』(18) 演奏家を信じない作曲家たち ストラヴィンスキー(1882-1971)は演奏家の解釈を信用せず、「通訳(traduttore)は、いつも裏切り者(traditore)である」と言っていた(通訳はいつも裏切り者である 参照)。シェーンベルグ(1874-…

花嫁はその独身者達によって裸にされてさえも/マルセル・デュシャン

末永照和(監修)『20世紀の美術』(9) 前回、ダダを取り上げ、私は「ダダの作品に魅力的なものはない」と書いたが、どういう作品なのかざっと見ておこう。チューリヒ・ダダのジャンス・アルプ(1886-1966)、ベルリン・ダダのハンナ・ヘッヒ(1889-1978)、…

通訳はいつも裏切り者である(ストラヴィンスキー)

岡田暁生『音楽の聴き方』(17) 今回から、第4章 音楽はポータブルか?-複文化の中で音楽を聴く に入る。 再生技術史としての音楽史 世界の他のどんな文化にも見られない西洋音楽の特質の一つに、それが「再生技術」の開発に全力を傾注し、それをモータ…

yeah! yeah! ダダは何も意味しない!

末永照和(監修)『20世紀の美術』(8) 今回から、第4章 ダダ的反抗と夢の開拓 である。 ダダとは何か。次の説明が簡明である。 1916~22年頃ヨーロッパ,アメリカに起った反文明,反合理的な芸術運動。ダダイズムともいう。伝統的なヨーロッパ文明を否…

愛のバラード 稲葉喜美子 秋元順子 松浦亜弥

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61wES-UIGpL.jpg 1-1 催愛術/稲葉喜美子 作詞:稲葉喜美子 作曲:稲葉喜美子 *以前貼り付けたものが利用不可になっていたので、別のものを貼り付けます。 1-2 26時/稲葉喜美子 作詞:稲葉喜美子 …

退廃芸術 内なるファシズム

末永照和(監修)『20世紀の美術』(7) 前回、バウハウス(国立の美術工芸学校)をとりあげたが、その最後に「1933年、バウハウスはナチス政権によって弾圧を受け、解散させられた」という記述があった。 「ナチス=悪」との先入観を捨てて考えてみよう…

サウンドの世界

岡田暁生『音楽の聴き方』(16) 岡田は、「構造的聴取」について次のように述べていた。(ジョン・ケージとサウンドスケープ(音風景)参照) (構造的聴取においては)個々の音は、それこそ言語と同じように、意味の担い手である。音による言語的/建築…

バウハウス(建築の家)の芸術家たち

末永照和(監修)『20世紀の美術』(6) 1919年に、ドイツの建築家ヴァルター・グロピウスは、ワイマールにバウハウス(建築の家)と呼ぶ国立の美術工芸学校を創設した。バウハウスは、…産業と芸術との融和と協同を図り、生活に応用する道を探った。…多く…

Happy new age concert

ヤニー(Yanni、1954-)は、ギリシャ出身のシンセサイザー奏者、ピアニスト。ジャンルは、new age。 http://www.yanni.com/photos?ga=14 For All Seasons youtu.be Band Charlie Adams (USA) -- drums Victor Espinola (Paraguay) -- harp, vocals Pedro Eu…

キャバレーのピアニスト エリック・サティの音楽とは?

岡田暁生『音楽の聴き方』(15) ケージ美学のルーツ それだけではない。ケージたちの思想は決して単なる珍奇な思いつきではなく、ある歴史的必然性の中で出てきたものであることも理解しておかねばならないだろう。例えばケージ美学のルーツの一つとして…

デ・ステイル(共通性と普遍性をめざして) モンドリアンとドゥースブルフ

末永照和(監修)『20世紀の美術』(5) デ・ステイルとは、モンドリアン(1872-1944)、ドゥースブルフ(1883-1931)らが、オランダのライデンで1917年に創刊した美術雑誌およびそれに基づくグループの名称である。 スタイル(様式)を意味するオラン…

ジョン・ケージとサウンドスケープ(音風景)

岡田暁生『音楽の聴き方』(14) 岡田がこれまで説明してきたのは、「構造的聴取」と呼ばれるものだそうである。 (構造的聴取においては)個々の音は、それこそ言語と同じように、意味の担い手である。音による言語的/建築的構築物のパーツだと言っても…

ロシア・アヴァンギャルド(シュプレマティズムと構成主義)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(4) 今回は、第3章 抽象と構成 である。本章に出てくる絵画で魅力的なものはほとんどないので、スルーしようかと思ったが、いくつかの用語については、知っておいても悪くはないだろうと思い直し、採りあげることにし…

音楽…「言語からサウンドへ」のパラダイム転換

岡田暁生『音楽の聴き方』(13) 指揮者のアーノンクールは、19世紀に入って生じた音楽のパラダイム転換を、次のように定式化しているという。 「単純かつやや大まかではあるが、私は「1800年以前の音楽は話し、それ以後の音楽は描く」と言いたい。前者…

青の時代(ピカソ)、キュビスム、未来派

末永照和(監修)『20世紀の美術』(3) 今回は、第2章 空間と時間の分析=総合 である。西洋美術史を辿ろうという気はないが、キュビスムや未来派がどういうものか位は知っておきたい。 第1次大戦前の数年間に2つの前衛的な芸術運動が展開された。ス…