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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

STAP細胞 法と倫理(9) 憲法違反? 文科省ガイドラインの検討(4)

STAP細胞問題

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前回の記事の最後の方で、「供託金」と同趣旨の制度を採用するのが良いと述べたが、これは撤回します。

これは顕名の告発者だけであれば意味はあるかもしれないが、「3-4 告発の受付によらないものの取扱い」に書かれている通り、インターネットや科学コミュニティや報道の疑惑指摘にも対処すべきであるから、供託金はナンセンスである。

 

ガイドラインの検討に入る前に、興味深い記事があったので紹介しておきたい。

「捏造の科学者 STAP細胞事件」(須田 桃子)のカスタマーレビューに、「lefty hand」氏のレビュー(2015/1/21)があった。「付記:胎盤分化の謎について(専門的な内容になります)」の内容が興味深い。

氏はSTAP論文は三層構造からなっているという。第一層がスフェア細胞論文(2009ネイチャー投稿-却下)、第二層がアニマルカルス論文(2012ネイチャー、セル、サイエンスに投稿-却下。ES細胞の混入ではないかと疑われ却下された)、第三層が今回の論文(2014ネイチャー投稿-掲載)。以下、一部引用。

STAP現象はES細胞の混入ではないかとレビュアーに指摘されてきました。この最後の関門を突破できた理由はひとえに「胎盤にも分化する」というES細胞では説明できない現象が持ち出された事実が大きいと思われます。

以上の見地に立ちますと「STAP細胞は若山研のES細胞の混入で全て決着した。」という昨年12月の理研調査委の最終報告は大きく欠失している部分があります

調査委は第三層のメインデータである胎盤分化の試料解析にまったく手をつけていないのです。

若山氏によるとES細胞でも胎児の血流が胎盤に流れ込んでそれなりに光る事からSTAP細胞胎盤にも分化できるという科学的根拠は光り方ではなく、胎盤切片においてGFPが発現していること胎盤分化の権威である丹羽氏のところでO氏を通して確認したという説明でした。

丹羽氏は、会見においても「STAP細胞由来と思われるGFP胎盤組織の内部にインテグレートしていることを顕微鏡で自分の目で確認している」と断言されております。

最終的に、この事実こそが笹井氏がSTAP細胞がリアルフェノメナンであると信じた主要な根拠となりました

しかしながらこの肝心の胎盤切片データは実際には論文中には示されておりません。そのかわり、同一コンストラクト由来のマウスと胎盤STAP細胞の方の胎盤が光っているように見せかけていただけでした。

現状、これらの事象を解釈するに当たって次の2つの可能性があると思われます。

1つめ胎盤分化の科学的根拠が元からいっさい存在していなかったという可能性です。つまりCDBにおいて丹羽氏の保証の元に実際は何ら科学的な根拠がないままにレター内容であるところのSTAP細胞やFI-SCが胎盤分化するという膨大な数のデータが創り上げられ、論文を押し通したと言う事になります。

2つめの可能性は実際にSTAP細胞由来キメラマウスの胎盤組織におけるGFP分布はES細胞の混入で説明できるものではなく、丹羽氏の報告が事実であったというものです。この場合、系に混入したES細胞が刺激により未知の形質を獲得したことやGFPを発現するTS細胞が要所要所で混入した等の可能性が考えれます。つまり、笹井氏や丹羽氏が少なくともES細胞の混入では説明のつかない、STAP細胞を信じる要因となった"ファクト"があったということです。

この見地に立ってみると昨年12月の理研調査委が若山研で行われたテラトーマとキメラマウスに調査を集中させ、ES細胞では説明不能な多くのデータについて調査せず幕引きした理由が明確になります。

またその他の重要な試料として、理研STAP細胞由来キメラマウスの胎盤と胎児(ホルマリン漬け)を理研が保管している事が明らかになっております。この試料に関しても調査委はなぜか完全にスルーしました。このSTAP細胞由来キメラマウスの胎盤切片をGFP免疫染色する事で、丹羽氏の主張したES細胞の混入では起こり得ないという科学的根拠が実在していたか、わかります。

私には科学的なことはわからないので、この説明をどうこう言うことはできないが、私にとっての教訓は、

 1 論文不正疑惑には、丹羽が大きく関わっているらしい。

 2 STAP細胞ES細胞の混入で説明できない可能性がある。

 3 桂調査委は、科学的に見て十分な調査を行っていない。

この種の報告書を読むときは、「何が報告されていないか」に注意しないと「受け売り」「垂れ流し」になるということ、「何が報告されていないか」を読み取るためには、「何が報告されるべきか」がわかっていないといけないということ、悪くとれば「何が報告されるべきか」がわからないように、都合の悪い事実は伏せておくことがありうること、このことを再認識させるカスタマーレビューであった。

 

さて、ここからガイドラインの検討に入るが、「本調査」については、以下のように述べている。

4-2 告発に対する調査体制・方法

(2)本調査

① 通知・報告

(ア)本調査を行うことを決定した場合、調査機関は、告発者及び被告発者に対し、本調査を行うことを通知し、調査への協力を求める。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場合は、その所属機関にも通知する。告発された事案の調査に当たっては、告発者が了承したときを除き、調査関係者以外の者や被告発者に告発者が特定されないよう周到に配慮する。

(イ)調査機関は、当該事案に係る配分機関等及び文部科学省に本調査を行う旨報告する。

(ウ)調査機関は、本調査の実施の決定後、実際に本調査が開始されるまでの期間の目安(例えば、目安として30日以内)を当該調査機関の規程にあらかじめ定めておく。

② 調査体制

(ア)調査機関は、本調査に当たっては、当該調査機関に属さない外部有識者を含む調査委員会を設置する。この調査委員会は、調査委員の半数以上が外部有識者で構成され、全ての調査委員は、告発者及び被告発者と直接の利害関係(例えば、特定不正行為を指摘された研究活動が論文のとおりの成果を得ることにより特許や技術移転等に利害があるなど)を有しない者でなければならない。

(イ)調査機関は、調査委員会を設置したときは、調査委員の氏名や所属を告発者及び被告発者に示すものとする。これに対し、告発者及び被告発者は、あらかじめ調査機関が定めた期間内に異議申立てをすることができる。異議申立てがあった場合、調査機関は内容を審査し、その内容が妥当であると判断したときは、当該異議申立てに係る調査委員を交代させるとともに、その旨を告発者及び被告発者に通知する。

(ウ)調査委員会の調査機関内における位置付けについては、調査機関において定める。

調査委員会はいかに外部有識者を含むとはいえ、調査機関が設置するのであり、「客観性や透明性」を確保するためには、調査を行うものは「公的な外部機関」にすべきではないかと思う。外部有識者である調査委員がいかに公明正大に調査をしようとしても、被告発者が属する調査機関が設置する調査委員会である限り、調査委員会の意向に逆らう報告書は出しづらいし、長期間にわたり調査をするわけにはいかないし、調査委員の報酬(無報酬というわけにはいかない)の問題も絡んでくるだろうし、「客観性や透明性」には大きな疑問符がつく。それは全員が外部有識者であっても同様である。そのような調査委員会であってみれば、告発者または被告発者が調査委員の異議申し立てをしたとしても、調査機関が調査委員を交代するとは考えにくく、交代したとしても調査機関に都合の良い報告をしてくれるであろう委員を選定してくる可能性が高い。告発者または被告発者が独自に調査委員をたてることが出来なければ、「異議申立て」は無意味である。

③ 調査方法・権限

(ア)本調査は、告発された事案に係る研究活動に関する論文や実験・観察ノート、生データ等の各種資料の精査や、関係者のヒアリング、再実験の要請などにより行われる。この際、被告発者の弁明の聴取が行われなければならない。

(イ)告発された特定不正行為が行われた可能性を調査するために、調査委員会が再実験などにより再現性を示すことを被告発者に求める場合又は被告発者自らの意思によりそれを申し出て調査委員会がその必要性を認める場合は、それに要する期間及び機会(機器、経費等を含む。)に関し調査機関により合理的に必要と判断される範囲内において、これを行う。その際、調査委員会の指導・監督の下に行うこととする。

(ウ)上記(ア)、(イ)に関して、調査機関は調査委員会の調査権限について定め、関係者に周知する。この調査権限に基づく調査委員会の調査に対し、告発者及び被告発者などの関係者は誠実に協力しなければならないまた、調査機関以外の機関において調査がなされる場合、調査機関は当該機関に協力を要請する。協力を要請された当該機関は誠実に協力しなければならない

調査委員会の調査は、各種資料の精査や関係者のヒアリング、再実験の要請の他にどういうものが考えられているのか。調査委員会が好きなように決めれば良いのか。例えば、試料(キメラマウス等)や私有パソコンや携帯電話やメールやメモ類や報告書や領収書や物品・資料の購買・移動データや出勤・出張データや調査機関外(家等)に持ち出したデータ(これは家宅捜索を必要とする)など適当に取捨選択して調査すれば良いのだろうか。

調査委員会の調査に対し、告発者及び被告発者などの関係者は誠実に協力しなければならない。」というが、協力とは「強制力」がないということである。「強制力」のない調査にどれほどの効果が期待できるのだろうか。拒否されたら何も調査できないではないか。「拒否する者は、研究不正を行った者とみなす」とでも言うのだろうか。刑事事件の被疑者は「黙秘権」を有する。「黙秘した者は、犯人とみなす」のであろうか。

「調査機関以外の機関において調査がなされる場合においても、協力を要請された当該機関は誠実に協力しなければならない」というが、ここでも同様に「強制力」がない。当該機関が何らかの利害関係から調査に「非協力的」だったなら、調査しないで済ますことになるのだろうか。

調査機関以外の機関が海外であっても、同様に調査の「協力」を依頼するのか。拒否されたらそれまでか。

予備調査でも同じだが被告発者とは誰のことをいうのか。被告発者は自明なのだろうか。論文著者が複数の場合、筆頭著者か、責任著者か、著者全員か、それとも実態で判断するのか。誰かの(暗黙の)指示で画像を捏造・改竄した場合、誰が被告発者か。また著者に名前を連ねない誰かがいたとしたらその人は被告発者にならないのか。研究には関わりない誰か(例えば理事)の指示で捏造・改竄した場合、その人は被告発者にならず、罪にならないのだろうか。

再実験について

再実験にはどのような意味があるのか? 再実験に成功しなかった場合、それで何が言えるのか? 「論文に書かれている通りやってみたが、今回は成功しなかった」というだけにすぎないではないか。1000回失敗しても、1001回目に成功することはありうる、なんてことは科学者でなくてもわかる。それを例えば、万能性を示すSTAP細胞が再実験でえられなかったから、万能性を示すSTAP細胞は存在しないことが証明されたということは、論理的な誤りであることが明白ではないか。もちろん、これは強弁であるという向きもあろう。<幻のSTAP細胞1 はじめに>で述べた、「非存在の証明」を参照されたい。STAP細胞存在説が、オカルト的言説かどうかの評価の問題になろう。それは当初の実験の条件と再実験の条件が「完全に」同一であるかどうかにより評価が分かれることになるだろう。

逆に再実験に成功した場合、例えば画像の捏造という不正は消え去ると言ってよいのか。結果良ければ、何をしようが構わないというのだろうか。データをでっちあげ、勝手気ままに改竄し、いろんな論文を盗んできて、一篇の論文を書いたら(勿論もっともらしく)、あ~ら不思議、実験に成功したとしたら(あくまで可能性の話)、何のお咎めもなしということになるのだろうか。

また仮に「論文に書かれていることとは、ちょっとだけ異なる条件」で実験したら成功したという場合、それは不正疑惑の判定に影響を与えるものであるか否か。極端な話をするが(あくまで論理的な可能性の話)、画像の捏造が認められたが、ちょっとだけ論文の条件を変えてみたら万能性を示すSTAP細胞がえられたという場合、小保方は画像の捏造により科学界から追放し、ちょっとだけ条件を変えて実験をした者にはノーベル賞を与えるということになるのだろうか。

再実験を調査方法に含めるのならば、その意味はどこにあるのかを明確にすべきだろう。

④ 調査の対象となる研究活動

調査の対象には、告発された事案に係る研究活動のほか、調査委員会の判断により調査に関連した被告発者の他の研究活動も含めることができる。

「調査に関連した被告発者の他の研究活動」とは何を意味するのかよくわからない。

⑤ 証拠の保全措置

調査機関は本調査に当たって、告発された事案に係る研究活動に関して、証拠となるような資料等を保全する措置をとる。この場合、告発された事案に係る研究活動が行われた研究機関が調査機関となっていないときは、当該研究機関は調査機関の要請に応じ、告発された事案に係る研究活動に関して、証拠となるような資料等を保全する措置をとる。これらの措置に影響しない範囲内であれば、被告発者の研究活動を制限しない。

証拠は、任意で提出されたもののみ保全するのか。証拠が隠滅されないように、どのような措置を講ずるのか。

⑥ 調査の中間報告

調査機関が研究機関であるときは、告発された事案に係る研究活動の予算の配分又は措置をした配分機関等の求めに応じ、調査の終了前であっても、調査の中間報告を当該配分機関等に提出するものとする。

⑦ 調査における研究又は技術上の情報の保護

調査に当たっては、調査対象における公表前のデータ、論文等の研究又は技術上秘密とすべき情報が、調査の遂行上必要な範囲外に漏えいすることのないよう十分配慮する。

「特許」との関連において、「秘密情報」はどう扱うべきなのか。

4-3 認定

(1)認定

① 調査機関は、本調査の開始後、調査委員会が調査した内容をまとめるまでの期間の目安(例えば、目安として150日以内)を当該調査機関の規程にあらかじめ定めておく。

調査委員会は、上記①の期間を目安として調査した内容をまとめ、特定不正行為が行われたか否か、特定不正行為と認定された場合はその内容、特定不正行為に関与した者とその関与の度合い、特定不正行為と認定された研究活動に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究活動における役割を認定する。

③ 特定不正行為が行われなかったと認定される場合であって、調査を通じて告発が悪意に基づくものであることが判明したときは、調査委員会は、併せてその旨の認定を行うものとする。この認定を行うに当たっては、告発者に弁明の機会を与えなければならない。

④ 上記②又は③について認定を終了したときは、調査委員会は直ちにその設置者たる調査機関に報告する。

共著者がいる場合、共著者すべての人が特定不正行為に関与しているのであり、その関与の度合いが異なるのである(0%~100%)。当然、関与の度合いは表面ではなく、実態として判断されねばならない。

(2)特定不正行為の疑惑への説明責任

調査委員会の調査において、被告発者が告発された事案に係る研究活動に関する疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究活動が科学的に適正な方法と手続にのっとって行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。

これは大きな論点だろう。刑事事件においては、被疑者・被告は自分の無実を証明する必要はない。有罪の立証責任は検察側にある。

では「投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造改ざん及び盗用」は、罪なのか、罪でないのか。罪でないとしたら何か? たぶん「不適切な行為」であろう。しかし「不適切な行為」で、科学界を追放されたり、懲戒解雇されたりするのだろうか。普通「不適切な行為」は、注意や指導程度で済むものであり、処罰されることはない。しかし、「捏造、改ざん、盗用」は、研究者としてあるまじきことである、懲戒解雇も止むなし、科学界を追放されてもしかたがない、というのが一般的な認識であるようだ。そうだとすると、これは立派な「犯罪」だと考えなければならない。ここが大問題なのである。

STAP細胞 法と倫理(3)「村の掟」による追放>で、罪刑法定主義について書いた。

罪刑法定主義は、ある行為を犯罪として処罰するためには、立法府が制定する法令(議会制定法を中心とする法体系)において、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を予め、明確に規定しておかなければならないとする原則のことをいう。

罪刑法定主義の根拠は、以下のように自由主義・民主主義の原理にこれを求めることができる。

どのような行為が犯罪に当たるかを国民にあらかじめ知らせることによって、それ以外の活動が自由であることを保障することが、自由主義の原理から要請される。

何を罪とし、その罪に対しどのような刑を科すかについては、国民の代表者で組織される国会によって定め、国民の意思を反映させることが、民主主義の原理から要請される。(Wikipedia)

つまり、「何をすれば犯罪となり、どれほどの刑罰が科されるか、あらかじめ法令で定めておきなさい」という大原則である。「投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用」という犯罪が、どこかの法令に定められているのか。懲役何年とか、罰金とかが定められているのだろうか。どこにも定められていない。

日本国憲法 第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

に、違反するのである。

憲法に違反して科学界を追放するのであれば、これは村の掟による追放なのである。

捏造、改ざん、盗用による「科学界からの追放」や「懲戒解雇」が刑罰でないというなら、一体何なのか

以上の議論は、被疑者(被告発者)が、本当に捏造、改ざん、盗用を行ったとしても、成り立つのである。

 

(続く)