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賃金構造基本統計調査 - 大企業の課長の年収はどれくらいか?

格差社会(4)

「格差」の話は、もう少しお預けにして、給与の統計を見ておこう。前回は、国税庁の「(平成28年民間給与実態統計調査」(H29/9)であったが、今回は、厚労省の「(平成29 年)賃金構造基本統計調査」(H30/2)である。

これはどういう統計か。

調査の目的…主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするものである。

調査の対象事業所…5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(5~9人の事業所については企業規模が5~9人の事業所に限る。)及び10人以上の常用労働者を雇用する公営事業所*1を対象とし、都道府県、産業及び事業所規模別に一定の方法で抽出した事業所を客体とする。

調査事項…事業所の属性、労働者の性、雇用形態、就業形態、学歴、年齢、勤続年数、労働者の種類、役職、職種、経験年数、実労働日数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数、きまって支給する現金給与額、超過労働給与額、調査前年1年間の賞与、期末手当等特別給与額

調査の時期…調査年6月分の賃金等(賞与、期末手当等特別給与額については調査前年1年間)について同年7月に調査を行う。(調査の概要、http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_b.html#01

若干、用語の解説も必要であろう。

常用労働者…①期間を定めずに雇われている労働者、②1か月を超える期間を定めて雇われている労働者、③日々又は1か月以内の期間を定めて雇われている労働者のうち、4月及び5月にそれぞれ18日以上雇用された労働者 のいずれかに該当する労働者。

きまって支給する現金給与額…労働契約、労働協約あるいは事業所の就業規則などによってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現金給与額をいう。手取り額でなく、所得税社会保険料などを控除する前の額である。現金給与額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれるほか、超過労働給与額[残業給など]も含まれる

所定内給与額…きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額をいう。

企業規模…調査労働者の属する企業の全常用労働者数の規模をいい、当概況では、常用労働者 1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分している。

就業形態…常用労働者を「一般労働者」と「短時間労働者」に区分している。「一般労働者」とは、「短時間労働者」以外の者をいう。「短時間労働者」とは、同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者をいう。

雇用形態…常用労働者を「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」に区分している。「正社員・正職員」とは、事業所で正社員、正職員とする者をいい、「正社員・正職員以外」とは、正社員・正職員に該当しない者をいう。

役職…常用労働者100人以上を雇用する企業に属する労働者のうち、雇用期間の定めがない者について、役職者を「部長級」、「課長級」、「係長級」等の階級に区分し、役職者以外の者を「非役職者」としている。(用語の解説、http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_b.html#01

別の説明をみると、

賃金構造基本統計調査…厚生労働省が行う基幹統計調査の一つ。主要産業に雇用される労働者について、雇用形態・就業形態・職種・性別・年齢・学歴・勤続年数・経験年数などの属性別にみた賃金の実態を、地域・産業・企業規模別に明らかにするために、毎年実施される。民間企業の賃金決定や損害賠償訴訟における逸失利益の算定などに利用される。(デジタル大辞泉

 

図1 従業員数・構成比(所定内給与別)

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まず、給与階級別の給与所得者数を見てみよう。このグラフでは、「年収」ではなく、「所定内給与」(残業給を含まない月給)である。この調査によると、男性で所定内給与が30万円未満の者が、51%(=2+11+20+18)である。逆に30万円以上の者が49%である。女性は、25万円未満の者が、63%(=9+27+27)である。

このグラフは、「(平成29 年)賃金構造基本統計調査」の「第3表 年齢階級、所定内給与額階級別 労働者数及び所定内給与額の分布特性値」のデータをもとに作成したものである。

 

 図2 平均年収(従業員数別)

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このグラフは、「第1表 年齢階級別 きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のデータをもとに作成したものである。従業員数10人以上のデータである。なお、年収は調査対象外なので、「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で概算推定した。

 

図3 平均年収(年齢別)

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このグラフは、「第1表 年齢階級別 きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のデータをもとに作成したものである。なお、年収は調査対象外なので、「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で概算推定した。国税庁の資料とは(調査対象が異なるので)異なるが、傾向としてはほぼ同様である。

 

図4 所定内給与(勤続年数別)

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このグラフは、「第2表 年齢階級、勤続年数階級別 所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のデータをもとに作成したものである。

 

図5 平均年収(役職別)

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このグラフは、「役職別第1表 役職、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のデータをもとに作成したものである。

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https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=545&page=1

 

「賃金構造基本統計調査」は、給料賃金の実態を、「雇用形態・就業形態・職種・性別・年齢・学歴・勤続年数・経験年数など」の属性(切り口)別にみたものであるが、ここでは、性別、年齢、勤続年数、役職、企業規模(従業員数)の切り口について、所定内給与または年収をグラフ化してみた。この切り口から見て、「差異」があることは明白である。しかし、これが「格差」かどうかは判断できない。(私は、格差を是正されるべき差異という意味で使う)。例えば、上のどのグラフを見ても、「男女間の差異」は明白である。しかし、これが「是正されるべき差異」であるかどうかは自明ではない。食べ放題の店で、大人と子供の料金には差がある。これは「格差」だろうか。「格差」というためには、「いかなる意味で、是正されるべき差異なのか」を説明しなければならない。そして「何故、このような差異が生じているのか」と問わねばならない。

 

次回は、雇用形態(正規と非正規の区分)からみた「差異」または「格差」をとりあげよう。

*1:

公営事業…国ないし地方公共団体という公的主体によって経営される経済的効用の生産活動をいう。これらが直接経営するものを純行政経営、現業、官業などという。公営事業のうち、地方公共団体の経営するものを地方公営事業という。国の純行政経営には、以前は、国有林野事業、郵政事業、造幣事業と印刷事業があり、四現業と総称されていた。しかし…2003年(平成15)4月には郵政事業が日本郵政公社(2007年10月の郵政民営化以降は日本郵政グループ)に、造幣事業と印刷事業は、それぞれ独立行政法人造幣局独立行政法人国立印刷局に移され、2013年には国有林野事業が特別会計から一般会計に移管され、国の直営事業でなくなったことにより、国の現業は廃止された。これらの基本的存在理由は公共性に帰着するが、特定的存在理由は、国民生活にとって必需性が高い(郵便、木材生産兼治山治水)、行政上重要性が高い(通貨の印刷と鋳造)などにより、国が直接経営にあたる必要があるとされたものである。…地方公営事業の主要内容は、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)によって、水道事業(簡易水道事業を除く)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、鉄道事業、電気事業、ガス事業の7種とされている。(日本大百科全書)。このような公営事業所の労働者を含めるのがよいのかどうかはよくわからない。