浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

確証バイアス、偏見・差別

山岸俊男監修『社会心理学』(25)

今回は、あらためて、第4章 対人認知と行動のうち、「社会的カテゴリーとステレオタイプ」、「偏った対人認知」(p.106~)をとりあげる。(前回は、Wikipedia等により「ステレオタイプ」について見てきた)。

外集団の人々を認知しようとする時に起こる区別が、カテゴリー化(分類化)である。カテゴリー化が行われる際にしばしば問題になるのが、内集団のメンバーの間で広く共有された固定観念であるステレオタイプに頼ったカテゴリー化である。…ステレオタイプにはポジティブなものとネガティブなものとがあるが、いずれにせよ、「あの集団の人たちはみんな〇〇だ」というように、過度の一般化が行われる傾向にある。

確証バイアス

本書は分かりやすいように、内集団と外集団の例として、男性と女性をあげているが、民主主義国家 vs非民主主義国家(独裁国家)や、大企業vs 中小企業や、大卒 vs 高卒 などもあげられよう。例えば、「大企業に勤めている人は裕福だ」というようなステレオタイプは、「過度の一般化」が行われている。

ステレオタイプ化は、合理的な理由もなく、無意識に行われることが多い。…ステレオタイプに合致した行動に注意が向かい、合致しない行動には注意が向かなくなって(確証バイアスという)、よりステレオタイプが強固になってしまいがちである。更に、実際には目の前に現れていない情報であるにも拘らず、不足している分をステレオタイプ的な情報で埋めて判断する場合もあることが分っている。自分ではそのような先入観は無いと思っていても、同じ内集団にそのような考えが浸透していると、無意識に適用してしまうこともある

確証バイアス(confirmation bias)については、次の説明も参照しておこう。

自分の願望や信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反証する情報を軽視・排除する心的傾向。(デジタル大辞泉

確証バイアスとは、認知心理学社会心理学で取り上げられるバイアスの一つ。自分の思い込みや願望を強化する情報ばかりに目が行き、そうではない情報は軽視してしまう傾向のことを指す。政治、経済、ビジネス、SNS、日々の実生活等のさまざまな場面で散見される。…確証バイアスに陥らないためには、「情報の出所が偏っていないか?」、「視点や視野が限定されていないか?」を常に確認し、客観的で冷静に情報を精査することが必要となる。そもそも自分の主張を否定する情報や証拠がないかを調べることも重要である。また、なかなか一人では自分が確証バイアスに陥っていることに気づけないことも多く、多様な人と意見交換することも確証バイアスに気づく助けになる。(MBA用語集

確証バイアスについては、Wikipedia等により詳しい説明がある。(別途、とりあげることがあろう)

まずは「自分の考え」にこのような確証バイアスがあることを自覚すべきである。そして確証バイアスに陥らないためには、どうすべきかを考えなければならない。上記MBA用語集では、「客観的かつ冷静に情報を精査すること」、「多様な人と意見交換すること」をあげているが、これは難しい。ほとんど実現不可能と思われる。

本書は、「ステレオタイプに沿った過度な一般化を避けるには、相手が含まれる様々なカテゴリーに注目することが効果的だと考えられている」と述べている。「相手が含まれる様々なカテゴリー」とは、ある人が集団Aに所属するからといって、集団Aに所属するメンバーに典型的に見られる特性を有しているとは限らず、別の視点からは集団(イ)に属しているのであるから、集団(イ)に所属するメンバーに典型的に見られる特性が優位である可能性に着目すべきである、ということだろう。

 

偏見・差別

本書は、「ステレオタイプ化が偏見につながる」と言っている。例えば「大学教授(博士、修士)」と聞けば、

「頭がいいんだろうなあ」(ステレオタイプ)…「教授=頭がいい」などのように、過度に単純化、画一化された概念。

「真面目すぎて、つまらなそう」(偏見)…ステレオタイプに好き・嫌いなどの感情が含まれたもの。

「プロジェクトのメンバーになってもらおう」(差別)…選択や意思決定など明確な行動を伴うもの、優遇する場合も差別になる

「××専門家」とされる人に、「○○会議」「○○委員会」「○○チーム」のメンバーになってもらうというのも、「××専門家」は「○○会議」「○○委員会」「○○チーム」の任務遂行に適任であるというステレオタイプに基づく差別になり得る。但し、「差別」か否かの判断は難しいだろう。どのような手続きでメンバー選定したのかが重要事であるが、この点が軽視されているように思われる。

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Microsoft Excel 色の設定画面

「私」や「あなた」は、複数の集団(a~n)に属する。上図において、その境界を画定してみよう。

ステレオタイプは、その集団の色を「単色」とみなすものに他ならない。実際には、複数色で構成されていることを自覚していればそれでよいだろう。