浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

赤字公債、子ども世代へのツケ回し(2)

香取照幸『教養としての社会保障』(21)

今回は、第6章 【国家財政の危機】次世代にツケをまわし続けることの限界 の続き(p.167~174)である。

 

税収、歳出総額、公債発行額の推移

前回、特例公債(=赤字公債)の発行により、子や孫へのツケ回しが行われているという話があったが、ここで1975年度から2021年度までの、税収、歳出総額、公債発行額の推移を見ておこう。

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https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm

  • 税収は1990年度が最高で90兆円。以降2010年度まで減少、その後増加に転じたが未だ1990年度には及ばないといったところである。
  • 歳出は、2020年度がコロナ対策費増で176兆円と突出している。(2020年度は、第3次補正後予算)
  • この「税収<歳出」を、公債、特に特例公債(=赤字国債)でまかなっている。ツケ回しである。(上記URLに国債残高の推移のグラフがあるが、これを見ていると、いったいどうなるのだろうかと思う)

 

では、2021年度の歳出(予算)の内訳はどうなっているか。

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https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a02.htm

 

社会保障費は36兆円で、歳出総額に占める割合は34%、一般歳出(国債費及び地方交付税交付金を除いた経費)に占める割合は54%である。(なお1990年度は、それぞれ17%、30%である)

社会保障関係費だけが毎年毎年増え続けている。財政当局からすれば、社会保障費をどうにかしない限り、毎年の予算編成もできないし、財政再建なんて論外ということになります。

 

どうやって財政赤字削減を実現するか?

家計なら「入るを計って、出るを制す」ですから、歳入に見合う範囲に歳出をカットする、ということになるでしょう。…しかし国の場合、話はそう簡単ではありません。「出るを制する」ということは、行政サービスや社会保障の内容・水準を切り下げる、カットするということを意味します。…公的保障の水準を切り下げれば、それだけ個人や家族の負担が増える。

ここで香取は、2011年OECD諸国の政府支出と政府収入を比較したグラフをあげているので、これを最新データ(2018年)で見てみると、下図の通りである。

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社会保障支出の順位に比べ、社会保障以外の支出及び租税収入の順位が低い。これが財務省の言いたいところか。

経済のさらなる失速を懸念する大声に増税の議論は吹き飛ばされる傾向にありますが、10年、20年、30年後の日本を考えれば、財政均衡を回復する、後代にツケを回すことなく自らの世代の受益に見合った負担をすること、すなわち増税は不可避の選択だと私は考えています。

私は「社会保障」のみならず、必要な「公的支出」を賄うために、適正に「租税収入」を確保すべきであると考える。何でもかんでも民間にまかせて、「不公平」、「格差」を拡大すべきではない。

 

プライマリーバランスPB:Primary Balance、基礎的財政収支)という指標がある。社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標である。

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2021年度の一般会計予算案で考えてみると、「政策的経費」とは、歳出総額から国債費の一部を除いた83.4兆円、「税収等」とは、 歳入総額から公債金を除いた63.0兆円であり、プライマリーバランス(PB)は20.4兆円の赤字になっています。(https://www.mof.go.jp/zaisei/reference/reference-02.html

「経済の成長によって税収が増えれば、借金を返すことができる」として、経済成長を主張する人がいるが、香取は、ドーマーの定理*1に言及した後、「ものごとには順序というものがあり、成長させれば無条件に借金が返済できるというものではない」と述べている。詳細は後日検討。

*1:ドーマーの定理…プライマリーバランス(PB)の均衡下では、名目GDP成長率が名目利子率を上回れば、財政赤字は維持可能である。(本書)