香取照幸『教養としての社会保障』(25)
今回は本書を離れて、番外編として「生命表」をとりあげる。
生命表とは、
年齢別、男女別などに類別し、生存数・死亡数および生存率・死亡率、平均余命(寿命)などを一括して示した表。日本では、厚生労働省が国勢調査や人口動態統計のデータをもとに作成する。平均余命は保健福祉の水準を総合的に示す指標として、将来推計人口の計算や、保険・医療・福祉・健康に関する施策等に利用される。(デジタル大辞泉)
最新の生命表は、「令和2年簡易生命表の概況」からダウンロードできる。以下は、その一部である。*1
- 国勢調査や人口動態統計のデータから計算された年齢ごとの「死亡率」を所与とする。
- 0歳の人が、100,000人いたとする。
- 1歳になるまでに、100,000*0.184%=184人死亡する。(0歳の死亡数)
- 1歳の人は、100,000-184=99,816人となる。(1歳の生存数)
- 2歳になるまでに、99,816*0.023%=23人死亡する。(1歳の死亡数)
- 2歳の人は、99,816-23=99,793人となる。(2歳年の生存数)
- 0歳の人は、平均的に 0+81.64=81.64歳まで生存する。(81.64は、平均余命)
- 20歳の人は、平均的に 20+61.97=81.97歳まで生存する。(61.97は、平均余命)
- 平均余命とは、ある年齢の人が、平均的に、あと何年生きるかを表す数値である。
- 0歳の人の平均余命を、平均寿命と呼ぶ。
話題になるのは、平均寿命と平均余命である。この統計数値が(特に社会保障施策に)どのように使われるのかに関心を持つ人はほとんどいないようだ。
後日、詳しく検討したいと考えているのが、QOL(生活の質)である。QOLは平均余命と大きく関係する。簡単に言えば、平均寿命が延びているからといって、生活の質が落ちていれば喜んでばかりはいられない。(極端な場合、生命維持装置でただ生きているだけの生活をどう考えるか)。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/thetv/entertainment/thetv-1059132
私は毎週TVドラマ「ラジエーションハウス2」を興味深く見ているが、第7話では、放射線科医師の杏の父親が自分の膵臓がんの積極的治療をせず、最後まで医師として生きることを選択するという話があった。これは倫理の問題であるが、社会保障(年金、医療、介護)の問題が倫理と関わっていることに留意したい。
今回の記事はこれでおしまい。以下は私の頭の体操である。
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「令和2年簡易生命表(男)」から、生存者・死亡者グラフを作成
生命表では、0歳の人が 100,000人いたとしているが、これを100人とする。そうすれば、各年齢での生存・死亡数を%と考えることができる。当初の100人が105歳では0人となる。
- データは、「年齢」と「生存数」のみを使用し、excelで作図。
- 死者数は、「100-生存数」で計算。折れ線の上が死者数を表すのだが、これを分かりやすいように、マイナスで表示した、
- 緑は青年、オレンジは壮年、オレンジ・グレイは老年のイメージ。
- 75歳以上を「後期高齢者」と呼ぶ。青縦線で示す。75歳の生存者は76人(%)、死者は24人(%)である。4分の1は死に、4分の3は生きている。
- 生存者が半分50人(%)になるところを赤横線で示す。年齢で言えば、およそ84.5歳である。「寿命中位数」と呼ぶ。
現在75歳の人が、各年齢で死ぬ確率
- データは、「年齢」と「死亡数」を使用し、「各年齢で死ぬ確率」を計算し、excelで作図。
- 現在75歳の人が、「各年齢で死ぬ確率」は、「各年齢での死亡数」÷「75歳の生存数」である。
- 確率が最大となるのは、88歳であり、オレンジ色で示す。
- 各年齢での確率の総和は1となる。
*1:今回の記事は、「平均余命はどう計算されているか」を参考にした。