気の向くままに

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

「こころの病気」とは何か?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(7)

第8章は、「ストレスとメンタルヘルス」であるが、本書によらずに、厚労省のサイト「みんなのメンタルヘルス」とwikipediaの記述に従って、「メンタルヘルス」について概観しておこう。最初に「みんなのメンタルヘルス」から。

こころの病気の症状

「こころの病気」になると、様々な症状が出る。但し、症状があるからといって病気であるとは限らない。

私たちはいつもストレスにさらされながら生活しています。大きな出来事があれば眠れないこともありますし大切な人が病気になれば気持ちが憂うつになります。これは自然な反応です。健康な人では、何かの症状や変化が出ていても、ストレスが去れば元の状態に戻る力があります。これを復元力(レジリエンス)といいます。この復元力が十分働いているときは病気にはなりにくいのです。症状が長く続いたり、生活するうえで支障が大きい、つらくて苦しいといった場合には病気の可能性があります。

身体面の症状としては、「疲労、全身倦怠感、動悸・めまい、頭痛、不眠、食欲不振」がある。

生活・行動面の変化としては、

生活の乱れ…服装の乱れ、昼夜逆転している、生活が不規則

行動の変化…ミスが増える、ぼんやりしている、遅刻が増える

自傷行為リストカットや抜毛など、自分を傷つける

ひきこもり…外出したくない、人に会いたくない

 心理面の症状としては、

  • 憂鬱(気持ちがしずむ、楽しいことがない)…「気分が沈む」「気分が重い」「憂うつだ」などと訴えられる症状を、精神医学では抑うつ気分と呼んでいます。「何をするのにも元気がない」というのは意欲低下と呼ばれます。精神科医は、患者さんの状態からどのような症状があるかを診て、現在どのような状態(これを状態像といいます)であると考えるのがよいかを評価します。「気分が沈んで、何をするのにも元気がない状態」は、うつ状態といわれます。
  • 不安緊張(気持ちが落ち着かない、どきどきして心細い)…誰でも感じる感情の一種です。何か心配事や気がかりなことがあるとき、目上の人や初対面の人に会う時、試験の前などにこのような症状を感じることは正常な反応で、別に病気ではありません。問題は、そのような理由がないのに「落ち着かない」「どきどきして心細い」などの症状が起こる場合です。この場合は「病的な不安」である可能性が考えられます。病的な不安」は「正常な不安」と違って、理由がないのに生じる、あってもそれと不釣り合いに強い、原因がなくなってもいつまでも続く、などの特徴があります。「正常な不安」が危険に備え、問題解決へ向かって行動を起こす原動力になるといった、人間にとって必要な側面をもっているのに対し、「病的な不安」は何らかの精神的・身体的な疾患の徴候である可能性があります。
  • 怒り(イライラする、怒りっぽくなる)…通常、状況や物事が自分の思い通りにいっていない時にこころの中に生じる不快感のことを指します。イライラして怒りっぽい人は、何となく気分が落ち着かず、周囲からのちょっとした言葉や音などに過敏に反応して、不機嫌そうな声で返事をしたり、相手を無視したり怒鳴りつけたりします。 ほとんどの場合、人がイライラしたり、怒りっぽくなったりするのは、何らかのストレスを抱えていて、しかもストレスがなかなか解消しなかったり、自分がそのようなストレスを抱えなければならない理由について納得できなかったりすることが原因です。…精神医学では、ささいなことをきっかけにして周囲に対して不機嫌な態度で反応しやすい状態のことを「易刺激性(いしげきせい)、とくに怒りっぽい状態のことを「易怒性(いどせい)などと呼びます。易刺激性や易怒性は、ほとんどすべての精神障害においてみられます。
  • 幻聴(誰もいないのに声が聞こえる)…人の声が、普通の音の聞こえ方とは違って聞こえてくる、それによって気持ちがひどく動かされてしまったり、行動が影響を受けてしまったりするような場合には、症状としての幻聴(幻声)である可能性が高くなります。

こころの病気の診断と病名

こころの病気を診断し、病名をつける方法は体の病気とは考え方が異なっています。体の病気の場合、病名は臓器の種類や部位、原因によって分類されることが多いのですが、こころの病気の場合は、おもに脳というひとつの臓器を対象にしており、また原因がわかっていない疾患が多いという特徴があります。

そのため、現在では特徴となる症状と持続期間およびそれによる生活上の支障がどの程度あるかを中心に診断名をつける方向に変わって来ました。こころの病気についての主な診断基準として、アメリカ精神医学会が作成したDSM世界保健機関によってつくられたICD(国際疾病分類)があり、日本でも広く使われています。こうした診断基準では、病名をつけるうえでは原因は問わないことが基本となっています。

  • うつ病…眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといったことが続いている場合、うつ病の可能性があります。うつ病は、精神的ストレス身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きてきます。…日本では、100人に3~7人という割合でこれまでにうつ病を経験した人がいるという調査結果があります。さらに、厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査では、うつ病を含む気分障害の患者さんが近年急速に増えていることが指摘されています。…統合失調症などほかの精神疾患が背景にあって、抑うつ状態はその症状のひとつであった、という場合もあります。このような症状を万が一うつ病と診断されたら、本当の疾患が見逃されせっかくの早期発見・早期治療のチャンスをのがしてしまうことになってしまいます。

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https://psyche.media/mental-illness-the-demons-within-2

  • 双極性障害躁うつ病双極性障害では、ハイテンションで活動的な躁状態と、憂うつで無気力なうつ状態をくりかえします。躁状態になると、眠らなくても活発に活動する、次々にアイデアが浮かぶ、自分が偉大な人間だと感じられる、大きな買い物やギャンブルなどで散財するといったことがみられます。躁状態ではとても気分がよいので、本人には病気の自覚がありません。そのため、うつ状態では病院に行くのですが、躁のときには治療を受けないことがよくあります。しかし、うつ病だけの治療では双極性障害を悪化させてしまうことがあります。…気分の波は、誰にでもあります。幸せな感じがする時もあれば悲しい気分の時もあるのは当たり前です。嫌なことがあった時に落ち込んだり、楽しいことがあった時にウキウキしたりするのは、ごく自然なことで、病気ではありません。…その気分が行き過ぎていて、そのために家族や周りの人が困ったり社会的信用を失うほどであったら、それは、双極性障害かもしれません。…「双極性障害」はかつて「躁うつ病」といわれていました。そのこともあってうつ病の一種と誤解されがちでしたが、実はこの二つは異なる病気で、治療も異なります。…躁状態の時は現実離れした行動をとりがちで、本人は気分がいいのですが周りの人を傷つけたり、無謀な買い物や計画などを実行してしまいます。再発しやすい病気なので、こうした躁状態をくりかえすうちに、家庭崩壊や失業、破産などの社会的損失が大きくなっていきます。
  • 統合失調症統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。…自分の悪口やうわさなどが聞こえてくる幻聴は、しばしば見られる症状です。…こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。…日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。また、世界各国の報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%と推計されます。100人に1人弱。決して少なくない数字です。

統合失調症はかつて「精神分裂病」と呼ばれていた。何が違うのか。呼称変更の経緯については、別途としよう。

  • 適応障害適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れるものです。…ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)によると「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。ストレスとは「重大な生活上の変化やストレスに満ちた生活上の出来事」です。ストレス因は、個人レベルから災害など地域社会を巻き込むようなレベルまで様々です。また、ある人はストレスに感じることがほかの人はそうでなかったりと、個人のストレスに対する感じ方や耐性も大きな影響を及ぼします。つまり適応障害とは、ある生活の変化や出来事がその人にとって重大で、普段の生活が送れないほど抑うつ気分、不安や心配が強く、それが明らかに正常の範囲を逸脱している状態といえます。…いったいどれくらいの人が適応障害になっているかというと、ヨーロッパでの報告によると、一般的には人口の1%といわれています。日本での末期がん患者の適応障害有病率の調査では、16.3%といわれています。しかし適応障害と診断されても、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されています。つまり、適応障害は実はその後の重篤な病気の前段階の可能性もあるといえます。
  • 認知症認知症とは、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響がみられる病気です。認知症の中でいちばん多いアルツハイマー認知症は、男性より女性に多くみられ、脳の機能の一部が萎縮していきます。血管性認知症脳梗塞脳出血などの脳血管障害による)は比較的男性に多くみられ、全体的な記憶障害ではなく、一部の記憶は保たれている「まだら認知症」が特徴です。症状は段階的に、アルツハイマー型よりも早く進むことがあります。…年をとるほど、認知症になりやすくなります。65歳以上70歳未満の有病率は1.5%、85歳では27%に達します。日本における65歳以上の認知症患者はすでに240万を超えているという推計もあります。さらに団塊世代が65歳以上になる2015年には250万人、2020年には300万人を超すと推定されています

高齢化社会の到来とともに、認知症は大問題である。

  • 発達障害発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまくいかないことがあります。成長するにつれ、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、生きにくさを感じることがあるかもしれません。…発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれます。

 以上の他、依存症、解離性障害強迫性障害睡眠障害摂食障害、パーソナリティー障害、パニック障害・不安障害、PTSD性同一性障害てんかんが説明されている。

 

続いて、wikipediaの「精神障害」から。

定義 

口語的には mental illness(心の病)である。…学術用語には mental disorder(精神障害が採用されている。disorder(障害)の語は、disease(疾患・疾病)より軽い失調状態を意味している精神障害とは苦悩や異常を伴う心理的症候群または行動様式である。

精神障害」という言葉は、「身体障害」と類比的に考えられ、「健常者ではない」というイメージがある。誰でも「風邪をひく」というニュアンスで、「こころの病気」という言い方が抵抗がない。

『ヒルガードの心理学』第15版では、「心理障害」の章にてこう説明される。異常が、標準から離れているという意味であり、その基準は、社会的な標準からの逸脱ではなく、多くの社会科学者が考えるように個人や社会集団の幸福への影響が基準である。つまり、はたからみての振る舞いではなくて、当人が苦痛を感じているかどうかによって、不適応行動の障害の異常性があるとみなされる

この説明は、もう少し詳しく聞かないとよく分からない。

世界保健機関 (WHO)のICD-10(『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版)においては、…障害(disorder)の語も正確ではないが、症状や行動と、苦痛と機能の障害との一式の存在を比喩しており、機能不全(dysfunction)のないものは精神障害(mental disorder)には含めないとしている。つまり逸脱や葛藤だけがあるようなものは、精神障害ではない

アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5[『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版]においては、…精神障害は社会的、職業的また他の重要な活動における著しい苦痛や機能の低下と関連しており、よくあるストレスや死別のような喪失による予測可能な反応や、あるいは文化的に許容できる反応は精神障害ではないと定義されている。

 これらの説明を読むと、何が「精神障害」なのか、よくわからなくなってくる。言い換えれば、精神障害者か否かの区分はグレーなところがあるということである。

1993年3月、厚生大臣の諮問機関である公衆衛生審議会は、1991年の国際連合決議の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」等を踏まえ、精神保健法精神障害者」の定義について、「近年における国際的な疾病分類や用語の慣行と照らして適切でなく、また、疾患・病態の範囲が不明確となったり、誤解を招いたりするおそれのあること等が指摘されている。…精神保健法上の施策の対象とするべき精神障害者の概念を明確化し、併せて、用語の適正化を図る観点から、例えば、『精神疾患を有する者』とすることについて検討する必要がある」と答申している。

誰が「精神保健法上の施策の対象」となるのかは、「精神障害者」の定義により変わってくる。「定義」はどうでもよいことではない。…旧優生保護法(1948-1996)に基づき、知的障害を理由に不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、宮城県内の60代女性が、国に損害賠償を求めて2018/1/30仙台地裁に提訴した*1

1993年6月、厚生委員会において公衆衛生審議会の答申に基づいた法案が審議された。政府委員は、拡大解釈を生む懸念がある「疾患」という強調表現について、従来の対象範囲を変更するものではないと説明している。同月、法改正によって精神保健法の「精神障害者」の定義が「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」に変更され、「精神疾患」の語も使用されるようになった。

1995年、精神保健法精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神保健福祉法)に改称された。厚生省は、法律上の「精神障害」の概念について、疾患(医学的側面)と障害(福祉的側面)の二面性があると説明している

1998年、厚生労働省の「精神保健福祉法に関する専門委員会」は、同法の「精神障害者」の定義で使用される「精神疾患」の語について、「精神上、心理上及び行動上の異常や機能障害によって、生活を送る上での能力が相当程度影響を受けている状態を包括的に表す用語」と説明している。

金城大学の小山善子教授は、精神保健福祉法の「精神障害者」の定義で使用される「精神疾患」の語について、「…身体障害の対語としての精神障害は、平均から多少とも偏りを持つ全ての精神状態を包含する上位概念であり、そのうち医学的治療の対象となる場合が精神疾患と考えられる」と述べている

小山の説明によれば(誤解かもしれないが)、「多少とも」の解釈次第で、誰もが「精神障害者」となるだろう。また「医学的治療」の対象となるか否かの判断は誰がすることになるのか。

厚労省の説明の「医学的側面と福祉的側面の二面性」は検討に値する。どういう場面で、その言葉を使うかに注意を払うべきだろう。

国民意識調査(2007年)は、自分が呼ばれる時に一番抵抗感が少ない言葉を「こころの病」(90.7%)、精神疾患(4.9%)、精神障害(2.5%)、精神病(2.0%)と報告している。

私も「こころの病」が良いと思う。厚労省のサイト「みんなのメンタルヘルス」でも「こころの病気」と呼んでいる。「精神障害」は、あまりイメージが良くない。

精神医学の分野では、用語の命名に多くの混乱があり、不適切にも用いられてきた。…精神障害の伝統的な分類は、神経症精神病とであったが、この分類は不正確な診断をもたらしたために、より正確な診断を行うための『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-IV)や『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD-10)が登場し用いられるようになっている。ただし、後述するように過剰診断誤診はいまだ問題となっている。

「過剰診断」は、大きな問題であるように思われる。

ICDとDSMでは診断において、先に医学的原因や、薬物誘発性の原因を除外することが必要である。それは多くの診断名の診断基準の1つとなっている。

3人の精神科医がそれぞれうつ病と診断し、入院もすすめられたが、内科で血液検査を行うとバセドウ病であったため、精神科の薬が役に立たなかった理由が判明したというようなことも起こりうる。

 バセドウ病とは、

甲状腺自己抗体によって甲状腺が瀰漫(びまん)性に腫大する自己免疫疾患。…性格に驚くほどの変化をきたすことが多く、人間関係、特に夫婦関係に支障をきたすケースが多い。患者は不安、怒り、イライラ、気分の変転が多くなり、夫婦間でのコミュニケーションがうまくいかず、多くは配偶者の行動を歪んで認識する。患者自身が病変による不慣れな感覚を理解するのに苦労し、配偶者もまたストレスを共有するに至るため、誤解や誤った期待、些細なことでの口喧嘩などの混乱をもたらす。患者は口論のストレスにうまく対処できずに不仲になることが避けられない。甲状腺機能低下症と亢進症のどちらも同じ行動の変化が起こる。 

 安易に「うつ病」と診断することの危険性。同じような症状を呈したとしても、「身体疾患」によるものとの識別が必要である。

2008年には日本の薬物問題の治療施設において鎮静剤の依存・乱用が第2位となり、自殺既遂者の46%を占める精神科治療歴のある者の多くが致死的行動の直前に薬を過剰摂取し、また過剰摂取による救急搬送も増加している。国会でも取り上げられ、行政解剖された自殺者91%が精神科の薬を服用した上での自殺であり、作用等が原因となっているのではないかと報告されている。

どんな薬でもそうだが、特に精神科の薬というのは投与が難しいということか。

精神障害の診断を正確かつ安全にするためには、診断を急がないことである。治療法がない場合には診断は無益であり、不必要な診断が機会の損失を与えたり、また烙印を押すこともあり、このように診断が利益を与えるかどうかの考慮も必要である。軽症なほど診断は困難であり、自然に軽快することもあり、過小診断したほうが安全で正確である。診察の初回は症状が強い時期であり、診断を行わないようにしてもよく、特に高齢者や子供においてである。

ここは大事な点だろう。「診断を急がない」…なるほど、「不必要な診断が機会の損失を与えたり、また烙印を押すこともある」。これは「こころの病気」に限らない。「早期発見・早期治療」は再考の余地があろう。

薬物依存症や、特に医薬品の多剤併用者や高齢者では、精神疾患に似た副作用が生じやすいため、薬剤の影響を除外する必要がある。薬物は精神疾患の症状を呈する頻度の高い原因であるが、意図的に尋ねるまで判明しないことがあり、特に初期の場合である。

医薬品の多剤併用者や高齢者の薬剤による副作用は、特に注意を要する。「お薬手帳」の有効活用や電子化は検討課題になる。

ICD-10においては、苦痛や機能不全また症状のない、逸脱や葛藤だけがあるようなものは、精神障害ではないDSMにおいては著しい苦痛や機能の障害を伴うといったように、重症であることが診断に必要である。重症度の判断には、症状の強さや、職業的、社会的機能の低下が考慮される。

軽症:診断基準を満たしているが社会的あるいは職業的機能の低下が軽度である。

中等症:軽症と重症の中間である。

重症:診断を下すために必要な数よりも多数の症状を満たし、いくつかの症状は特に重症であり、社会的あるいは職業的機能が著しく低下している

DSM-IVの編集長であるアレン・フランセスは、過剰診断に注意して診断するために、まず症状が疾患単位としての一群であることが必要であり、さらに「きわめて重要で中核かつ必須の事項」として、症状が同定されたというだけでなく、それが持続的であり、臨床的に著しい苦痛や、社会的または職業上の機能に著しい障害がもたらされていることが必要であるとしている。

アレン・フランセスは、過剰診断、過剰治療に対し、「『ある診断が広く行われるようになったら、疑うべし』ということです。人間はすぐには変わりませんが、物の名前はすぐに変わります。もし突然多くの患者さんが同じ診断名を付けられるようになったら、それは患者さんが変わったからではなく考え方が変わったからであり考え方が変わるのは、多くの場合、製薬会社が自社製品を売るためにその病気のマーケティングを動かしているからなのです」と述べている。うつ病抗うつ薬のない時代、当時メランコリアと呼ばれていた頃の罹患は100万人中50 - 100人に過ぎなかったが、現在の推算では100万人中10万人であり、1000倍に増加している。

 

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心の病を治療する薬が、実は、病を進行させているとしたら…。アメリカにおける、精神科医、精神医学会、患者団体、製薬会社、政府の利害関係の生々しい現状を伝え、精神疾患の一因は精神科治療薬にあると説く。「既成事実」となっている薬物療法と、その根拠となっている「仮説」の意義と限界を様々な事例を使って提示した、衝撃的警告の書。(Amazonの商品説明より)

 

「こころの病気」に限らず、「定義」の不明確さや、「早期発見・早期治療」のスローガンが、「過剰診断、過剰治療」につながっていないか、医療費の増大をもたらしていないか、要注意だろう。

Wikipediaの説明の途中までしか読んでいないが、今回はこのあたりまでとしよう。

*1:優生思想、優生保護法については、別途考えることにしたい。