浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

国会議員は、全国民を代表しているか?

浦部法穂『全訂 憲法学教室』(3)

今回は、第7章 国民主権 第4節 国会 1国会の地位と性格 の続き(p.520~)である。

  • 国会議員は、その選挙区の代表(地元の利害の代弁者)ではなく、全国民の代表である。
  • 選出母体の意思・指令に拘束されないという意味では、「自由委任」を前提にしている。
  • 自分の選挙区に新幹線の駅をひっぱってくるなどといった地元への利益誘導は議員の仕事ではない。

現在でも、支持基盤となる地域のインフラ整備、支持基盤となる業界への便宜供与は大いに考えられることである。近年では、国家戦略特区[加計学園]や統合型リゾート整備[カジノ]をめぐる動きが、これに該当しようか。新幹線の駅などのようなあからさまな形ではなく、大義名分のもとに支持業界への利益供与がありうると考えられる。

 

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カジノ誘致を巡る「利権」という幻想。甘い汁を吸えるのは誰なのか?

 

  • 選挙において「代表」を選出するとき、そこには、候補者個人を選ぶというだけでなく、その候補者の属する政党の政策を選ぶという側面も含まれている。むしろ、後者の側面のほうが強いと言える場合も多い。
  • そうすると「代表」とは、実際上その政党を支持する国民層の代表という意味合いを帯びてくる。
  • 議員はその活動について、所属政党の指図(党議)に拘束されている。だから実際上の問題として言えば、議員はその選出基盤[その政党を支持する国民層]の意思に拘束されているのであって、文字通りの「自由委任」ではない。(p.521)
  • 党議拘束を、例えば党籍変更や所属政党からの除名などの場合には議員の身分を失う、というほどに強い形で制度化することは、議員が「全国民の代表」であるとする憲法43条に反するものとすべきであろう。
  • 具体的な政策決定は、最終的には、国民全体の立場からなされなければならず、上のような強い形で政党の拘束を認めたならば、議員は自分の党の支持者の観点からしか行動できなくなってしまって、結局、党利党略が先行し、全体的な判断を不可能にする。
  • 個人にではなく政党に投票する(拘束名簿式)比例代表選挙においては、選挙人が選んだのは政党であるということをどう評価するか。

党議拘束」がかけられれば、野党がいかに反対しようとも、いかなる法案でも与党案が可決される。採決は形式となる。では、誰がいつ党議拘束をかけるのか。

他方、比例代表制においては政党を選んだのであり、個人を選んだのではない。個人が政党の方針に反した行動をとることは許されないだろう。

党議拘束の問題は別途検討することにしよう。

 

  • 憲法は政党に関する特別の規定を持たない。しかし政党の設立・存続やその活動の自由は、憲法21条[結社の自由]によって保障されている。つまり、政党は公的機関ではなく私的結社の一つである
  • とはいえ、政党は、実際上その政策を通じて国民意思を代表するという公的な機能を営んでいる。それ故、一般の結社とは異なった特別の規制や援助が必要である、という考えもある。
  • しかし、「政党」の定め方いかんによっては、国民の政治活動への権力的介入を許す治安立法と化す恐れもある。
  • 政党に対する国庫補助を内容とする「政党助成法」は、補助を受ける「政党」の範囲の画定などによって、必然的に政党の公認と排除につながるものであるから、政治的結社の自由に対する重大な侵害となる危険性を孕んでいる。

政党は、政治結社である。政治結社とは、

特定の政治目的実現のための集団。近代憲法において政治集団の形成は、結社の自由として保障されている。党派としての政党がその代表例であるが、圧力団体、市民団体、環境保護団体なども政治結社としての機能を発揮している。特定の階級・階層の利益を代表する政治結社の党派性が、議員は国民全体の利益を代表するという国民代表の原理になじまないため、政治諸集団は公的な規制を受けることになる。党派の存在を憲法体系に制度的に組み込もうとする政党法が政治結社規制の一例である。(高橋彦博、日本大百科全書

政党は政治結社だろうが、「特定の階級・階層の利益を代表するもの」と言い切ってよいかどうか。

また、NPONGO、社団法人、財団法人などのような社会活動(政治活動)を行う団体は、どのように考えればよいか。これは「政治学」で検討されるべきテーマである。