浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

COVID-19:ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(16)

「抗体検査」とか「抗原検査」が話題となっている。

検査には、偽陽性偽陰性の問題がつきものなので、これまで「PCR検査」についてとりあげたのであるが、自分の理解のために考えた例題を紹介します。(間違いがあれば指摘して下さい)

 

ケース1

次の写真を見て下さい。

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https://www.kensetsunews.com/web-kan/273743

問い:ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか?

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お目当ての彼女は、既婚か未婚かというのが問題である。(なお、このグループの人数は分かりやすく100人としておく。10万人と考えても、100万人と考えても、100%と考えてもよい)。

ここで以下のような調査データを得たとする。

  1. 写真の女性たちは、20代後半から30代前半の女性である。晩婚化の傾向から、この年代の既婚率は50%であるという調査データがある。X=50%。
  2. この年代で結婚している女性の60%は結婚指輪をしているという調査データがある*1。Y=60%
  3. この年代で結婚していない女性の90%は結婚指輪をしていないという調査データがある*2。Z=90%

そうすると、データ1から、合計100人のうち、既婚は50人、未婚は50人である。また、データ2から、既婚で指輪をしている人は30人(=50*60%)、指輪をしていない人は20人(=50*40%)となる。更に、データ3から、未婚で指輪をしていない人は45人(=50*90%)、指輪をしている人は5人(=50*10%)となる。

これは何を意味するか。

調査データからは、既婚であるにもかかわらず、指輪をしていない人が20人、未婚であるにもかかわらず、指輪をしている人が5人いることになる。そうすると、指輪判定では35人が既婚なのだが、実際には30人が既婚であるにすぎない。それゆえ、的中率は86%となる(=30/35)。

最初の問いは何であったか思い起こそう。ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか? 彼女が指輪をしていなくても、既婚の可能性があるのである。ということは、未婚だと思って、積極的にアプローチしたら厄介なことになる可能性があるのである。(偽陰性、ぼんやり者の誤り)

 

ケース2

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https://www.hosei.ac.jp/volunteer/NEWS/event/160414_02/?auth=9abbb458a78210eb174f4bdd385bcf54

問い:ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか?

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お目当ての彼女は、既婚か未婚かというのが問題である。

ここで以下のような調査データを得たとする。

  1. 写真の男女は、20代前半である。この年代の既婚率は3%であるという調査データがある。X=3%
  2. この年代で結婚している男女の80%は結婚指輪をしているという調査データがある。Y=80%
  3. この年代で結婚していない男女の99%は結婚指輪をしていないという調査データがある。Z=99%

そうすると、データ1から、合計100人のうち、既婚は3人、未婚は97人である。次に、データ2から、既婚で指輪をしている人は2.4人(=3*80%)、指輪をしていない人は0.6人(=3*20%)となる。更に、データ3から、未婚で指輪をしていない人は96人(=97*99%)、指輪をしている人は1人(=97*1%)となる。

これは何を意味するか?

調査データからは、既婚で指輪をしている人は2.4人、未婚で指輪をしている人は1人であり、的中率は71%(=2.4/3.4)となり、的中率は低い。逆に、既婚で指輪をしていない人は0.6人、未婚で指輪をしていない人は96人であり、的中率は99%(=96/96.6)となり、的中率は100%に近い。

最初の問いは何であったか思い起こそう。ちょっと気になる彼女は結婚しているだろうか? 彼女が指輪をしていても、未婚の可能性がわずかながらあるのである。ということは、既婚だと思って、あきらめていると残念な思いをすることになるかもしれないのである。(偽陽性、あわて者の誤り)

 

ケース3

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https://assistparkkoriyama.net/2019/12/06/20191206001/

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お目当ての彼女は、既婚か未婚かというのが問題ではない。

ここで以下のような調査データを得たとする。

  1. 写真の男女は、50代から70代前半の男女である。この年代の既婚率は70%であるという調査データがある。X=70%
  2. この年代で結婚している男女の30%は結婚指輪をしているという調査データがある。Y=30%
  3. この年代で結婚していない男女の80%は結婚指輪をしていないという調査データがある。Z=80%

そうすると、データ1から、合計100人のうち、既婚は70人、未婚は30人である。次に、データ2から、既婚で指輪をしている人は21人(=70*30%)、指輪をしていない人は49人(=70*70%)となる。更に、データ3から、未婚で指輪をしていない人は24人(=30*80%)、指輪をしている人は6人(=30*20%)となる。

そうすると、既婚で指輪をしている人は21人、未婚で指輪をしている人は6人であり、的中率は78%(=21/27)となり、的中率はまあまあである。逆に、既婚で指輪をしていない人は49人、未婚で指輪をしていない人は24人であり、的中率は33%(=24/73)となり、的中率は低い。

たぶん、この年代になると、色恋沙汰はなくなるでしょうね。

 

この3つを比べてみて、何が言えるか。

  • ケース2を、指輪判定する意味はほとんどない。(写真をみれば、ほとんどすべて未婚であることがわかる)
  • ケース3を、指輪判定する意味は何か。(写真をみれば、ほとんど既婚であると予想される)。指輪をしていない既婚者が多いのは問題であるし、既婚者を指輪で判定したところで、それでどうしようというのだろうか。
  • ケース1は、指輪判定する意味が少しあるようだ。但し指輪をしていない既婚者が多いのは問題である。

 

これをPCR検査に置き替えて言えば、

  • ケース2→COVID-19を疑うような人がほとんどいなければ、検査する意味がほとんどない。検査を全国・全地域に拡大するのは無意味である。そうではないというのであれば、どこで線引きするかである。
  • ケース3→偽陰性が多い。COVID-19症状を示している人(検査陽性者ではない)を把握することが目的ならば、検査は必要ではあるが、限定的な有効性しか持たないことを認識しておくことが必要である。陰性判定者が、後で陽性判定されたりする。陰性判定2回でも安心できない。検査陽性判定されても、基本的には対症療法である(対症療法が無意味であるというのではない)。免疫力が低下していれば死ぬ可能性が大である。それはいかなる感染症であれ、厳然たる事実として受け止めなければならない。これはクラスター(小規模な集団感染や、それによってできた感染者の集団)に対する検査に相当するだろう。
  • ケース1→二次感染者(ここでは、クラスターでの感染者からの感染が疑われる者)に対する検査に相当しよう。ここでも偽陰性が問題であるし、また偽陽性が問題である。ケース3に対してと同様、検査は必要ではあるが、限定的な有効性しか持たないことを認識しておくことが必要である。
  • 指輪をしているか否かで、既婚か未婚かを判定するのが疑問であるように、PCR検査で、「COVID-19患者」(検査陽性者ではない)を判定できるかのような説明が疑問なのである。これは「病気」の定義にかかわる話であり、後日ふれる。「感染者」という言葉が紛らわしい

 

さて、ここから調査データを、「指輪をしている」「指輪をしていない」の2区分、実際の状態を、「既婚」「未婚」の2区分にすることの問題性を考えたいと思っていたのだが、長くなったので、今回はここまでとしよう。

*1:既婚女性が、ある場所でなぜ指輪をしないのかを考えると、人生模様が浮かび上がる。

*2:未婚女性が、ある場所でなぜ指輪をするのかを考えると、人生模様が浮かび上がる。