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COVID-19:「コロナ教団」のマインドコントロール

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(29)

オウム真理教のマインドコントロールについて、西田公昭(脱カルト協会代表理事立正大学心理学部教授)へのインタビュー記事(2018/7/12、オウム、改めて知っておきたいマインドコントロールの恐怖)を、コロナに引きつけて読んでみよう。(クラスターの大量発生のニュースを踏まえて)

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https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56605?imp=0

 

津本(記者)…マインドコントロールとは?

西田…拷問や薬物使用などで、強制的に精神構造を変えさせることが洗脳であるのに対して、マインドコントロールはもっと洗練された手法で、「本人自身に信じ込ませる」ためのものです。具体的には、話にウソを混ぜたり、真相を隠すことや、……さまざまな手段があります。

科学者(専門家)はウソをつかない。しかし、ほとんどありえないことでも「可能性がある」、「恐れがある」と述べる。

科学者(専門家)は真相を隠すことはしない。しかし、「重要なこととは考えなかったので、話さなかった」、「立場上、リスクのあることは話せない」ということがある。

津本…今回、死刑執行された元幹部たちが、「コントロールされていた」のか、それとも「自発的にやった」のか?

西田…私は、彼らが「自発的に犯行に及んだ」とは考えていません。…弟子たちは、麻原にマインドコントロールされたロボットだったと思います。…「どうすればミッションを成功できるか」と、自ら知恵を絞って行動したことでしょう。しかし、これをもって「自発的にやった」と言えるでしょうか?

坂本弁護士一家殺害事件については、麻原は「殺せ」と直接的な指示は出しておらず、「ポアしろ」という表現を口にしただけです。

テレビや各種メディアで、「コロナ強迫神経症」に罹患している人は、「マインドコントロールされたロボット」と言えるだろう。

「ミッション」は、コロナ撲滅である。そのために、どうすればよいか知恵を絞る。

私たちは、マスクやソーシャル・ディスタンスを保つなど、「新しい生活様式」に「自発的に」従っているのだろうか?

「殺せ」とは、「隔離収容せよ」(→殺処分)ということである。だけれども、「隔離収容」せよと直接的な指示は出さない。(感染症蔓延の防止<防疫>の基本は、病原体保有者の殺処分である)

「ポアしろ」とは、「関係者全員に、PCR検査せよ」ということである。「ポア」とは、「死ぬことによって、魂がより高い位置に到達できる」との意味で使われた言葉らしいが、コロナの文脈では「PCR検査をすることによって、コロナを撲滅できる」との意味になるだろう。

津本…オウムには、物理学や医学、化学などを学んだ信者が大勢いました。地獄や輪廻転生など、合理的に証明しようもない話を、理系で学んだ人たちが信じ込んだのは意外でした。

西田…いや、むしろ理系の人には、より魅力的に映ったんじゃないでしょうか? 科学は万能ではないですよね。医学が進歩しても人は死ぬし、数学だって物理学だって矛盾や分からないことは山ほどある。理系の高等教育を受けた人たちは、科学の限界を思い知るんです。

科学は万能ではない。科学の限界を知らない人は、科学者とは呼べない。テレビに出てくる「専門家」は、「科学者」として発言しているのか、それとも「政治家」として発言しているのか。「科学者」なら、「事実」(データ)に基づき、どれほどの「確からしさ」で述べているのか、明確にすべきである。

理系の高等教育を受けた人たちが、科学の限界を知ったうえで、「隔離」とか「医療体制」の話をすれば、それは既に、理系の科学者としての発言とは言えないだろう。

参考:オウム真理教信者の高学歴…東京大学京都大学大阪大学早稲田大学慶應義塾大学筑波大学等々。

津本…マスコミや文化人は当時、オウムや麻原を褒めたり、番組に呼んだりしました。そのことが、信者を増やした一因でもありました

西田…その通りです。当時は有名な学者たちはもちろん、ダライ・ラマ14世までもが麻原を持ち上げました。「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)をはじめ、さまざまなテレビ番組にも出演しました。

「コロナ強迫神経症」を生み出す「コロナ教団」という言葉が思い浮かんだ。

西田…人が何かを信じるときには、心理学的には2つの要素があります。まずはリアリティのある体験。…直接的な体験はもちろん、専門家や権威ある人が評価していたり、周囲の多数が評価している、科学的根拠があるということも、これに含まれます。

自分が検査陽性になったり、身近な人が検査陽性になるという「リアリティのある体験」をすれば、人は「コロナ教団」の教義を信じるだろう。

「専門家や権威ある人」が発言していれば、教団を信じるだろう。

そしてまた、「科学的根拠」の信憑性を評価できなければ、信じるしかない。

西田…もう1つの要素は、問題解決に役立つかどうか、です。人はさまざまな願いを持ちつつ、日々に悩みながら生きています。そんなときに、悩みへの回答を示されたり、…それが役に立つと思えば信じるのです。実は、人間が何かを信じるときに「科学的根拠」の有無はさほど強力ではなく、信じるに至るいくつかの理由のうちの1つでしかないのです。

人間が何かを信じるときに「科学的根拠」の有無はさほど強力ではない。確かにそうだ。信仰者を説得する(マインドコントロールを解き放つ)のに、「論理」が無力であることは痛感する。

津本…そう考えると、誰もが「オウムにハマってしまう可能性」を持っていると言えますね。

西田…そうです。1980年代、バブルの狂乱の最中で、本当にカネだけで幸せになれるのか?人間が生きている意味は何なのか?と本質的な問いを心に抱くのは、むしろ人間として非常にまっとうなことです。本来、宗教はこうした問いに答える役割を担っているはずですが、信者たちは仏教でもキリスト教でもなく、オウムと縁を持ってしまった。当時は新宗教ブーム、中でも突出してパワーを持っていたのがオウムだったのです。

私たちは、誰もが「コロナ教団」にハマる可能性がある。

津本…オウムでのマインドコントロールの実態は、どの程度、解明されてきたのでしょうか?

西田…マインドコントロールされた状態は、病気とは異なります。病気でなくとも、人はマインドコントロールによって、恐ろしいことをやってのけてしまう。これは、ISのテロリストもまったく同じだ、ということが、最近の研究で分かってきました。テロリストたちがISの過激思想から脱するのを支援するために、オウムの事例が参考になるのではないか。国連はそう考えており、実際に私にも研究要請が来ました。

「恐ろしいこと」とは、人々を分断すること共生社会を破壊することである。

ところで、コロナ教団の教祖は誰か? それはわからない。

(注)以上は、COVID-19をめぐる昨今の日本の状況に関するものである。無症状者・軽症者の取り扱い、治療と防疫の混同が、特に問題である。