浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

泥棒洞窟実験

山岸俊男監修『社会心理学』(8)

今回は、第2章 社会心理学の歴史的な実験 のうち「泥棒洞窟実験」をとりあげる。

この「泥棒洞窟」というのは「釣りタイトル」のようだ。そこで、「釣り」に引っかかり、「泥棒洞窟」についてまず見ておこう。

 

ロバーズ・ケーブ州立公園 (Robbers Cave State Park)

Robbers Caveは、「泥棒洞窟」というより、「無法者の隠れ家」といったほうがよさそうだ。それはともかく、この公園は、オクラホマ州にある公園で、「3つの湖と多くのエーカーの砂岩の崖があります。この公園は、悪名高い無法者ジェシージェームズとベルスターの隠れ家としての役割を果たした後、その名前を受け取りましたが、今日、公園の多くの洞窟と崖は、ハイカー、ロッククライマー、および懸垂下降の素晴らしい目的地になっています」(https://jpn.scissorspaperpen.org/24-best-oklahoma-state-national-parks-7274)。

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https://www.travelok.com/state-parks/robbers-cave-state-park/media-gallery#listing-menu-tabs

 

www.youtube.com

 

泥棒洞窟実験

泥棒洞窟実験とは、オクラホマ州にある州立公園のキャンプ場での、2つの少年グループによる集団間葛藤の実験であるが、以下の3段階からなる。(pp.56-57)

第1段階

少年たちは2つのグループに分けられ、互いの存在を知らないまま、グループごとに親睦を深めた(仲間意識を強めた)。

第2段階

相手グループの存在を知らされ、(賞品をかけた)野球の試合などを通じて、相手グループへの敵対心自分のグループへの仲間意識を強めていった。

第3段階

グループの対立(集団間葛藤)を解消する試みが行われた。両グループが協力しあわなければ達成できない上位目標を導入することで、両グループは友好的な関係に変化した。

第3段階の対立を解消する試みの一つとして、映画や食事などを一緒に楽しみ、交流の機会を増やしたのだが、これは逆効果で、残飯を投げ合うなど、より険悪な状態になってしまった、という。これは留意すべきである。

山岸は、「この実験によって、賞品などをめぐっての争いが集団間葛藤を生むこと、そして葛藤を解消するには、集団間の接触機会を増やすよりも、協力して何かを達成するという集団を超えた目標の導入が必要であることがわかったのである」とまとめている。

このグループを、国家や民族や企業や学校や政党などに置き換えて考えてみれば、なかなか面白い実験であると言えよう。もちろん、これらグループ(集団)間の対立を解消する試みが、実験のようにはうまくいかないのは当然だとしても、敵対的競争から協力への道筋を考えることが肝要であることは、いくら強調しても強調しすぎることはないだろう。

世界の現状は、おそらく何百年~何千年も第2段階のままであり、第3段階の芽が若干見られる程度である、というのが私の現状認識である*1

 

以下もう少し詳細な内容にふれようと思ったのだが、本書の後の部分で関連事項が出てくるので、そこでみることにする。

*1:根拠をもってこのように述べているのではなく、私の「感じ」である。ともあれ、国家の対立を超克できない私たちの思想と行動には辟易する。