浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

態度と行動の一貫性、合理的行動理論

山岸俊男監修『社会心理学』(13)

今回から、第3章 社会の中の個人 に入る。第2章は歴史的な実験の話だったので何か古い感じがしたが、これからは、「現代社会」を見据えた「社会心理」の話として期待できるだろうか。

第3章のテーマは、(1)態度、(2)ヒューリスティックス、(3)社会的アイデンティティ、(4)バランス理論、(5)認知的不協和理論、(6)自己知覚理論、(7)内発的動機づけ、(8)自己効力感、(9)セルフ・モニタリング である。

今回は、(1)の「態度」である。一読して、教科書的な説明であり*1、興味を持てない。何故「態度」をとりあげるのか、ここでの「社会問題」は何なのか、「問題意識」が感じられない。具体例として、コーヒーとかラーメンとか禁煙とかがとりあげられているが、学生向けの教材を意図しているからかもしれない。

ここでは、「ラピエールの態度と行動の一貫性実験」と「合理的行動理論」(pp.76-77)をとりあげよう。

 

ラピエールの「態度と行動の一貫性」実験

ラピエールの実験(1934年)とは、

ラピエールは、人種差別の激しかった1930年代に(当時アメリカでは、東洋人への偏見や差別が横行していた)、アメリカ国内を中国人夫婦と共に旅行。人種的偏見と差別行動に関する態度の実験を行った。

  • ホテルやレストランで、人種的偏見を理由にサービスを受けられなかったのは251箇所中1箇所のみだった。
  • そして訪問した6ヵ月後に、手紙で「中国人にサービスするか」を質問。返事のあった128ヵ所中、92%が「断る」と回答した。

これをもって「態度と行動が一貫しない」と言えるかどうか。批判的に検討しようとするなら、この簡潔な説明では何とも言い難い。確かに「態度と行動が一貫しない」場合もあるだろうが(言行不一致?)、今井芳昭は、この調査の問題点を指摘している。*2

 

【言行不一致】日本医師会中川俊男会長の発言まとめ!!

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合理的行動理論

人々の行動はどうすれば予測できるのか。コロナ禍の人々の行動予測に応用したら何が言えるだろうか。感染症専門家は、「自粛疲れ」とか「気の緩み」とか、このような行動予測をすべきだろう。

フィッシュバインとアイゼンは、行動に最も影響を与えるのは「態度」ではなく「意図」と考えた。そして行動意図を決定するのは「行動に関する態度」と「主観的規範」としている。

  • 行動に関する態度は、行動することによって得られる[と予測した]結果と、結果に対する主観的な評価によって決まる。
  • 主観的規範は、家族など親しい人がその行動を望んでいるか(重要な他者から期待される行動)と、自分もその考えに従いたいと思うかどうか(その期待に応えたいと思うかどうか)に影響される。

科学事典は、これを「行動によって得られる結果を合理的に判断する過程に焦点を当てたことから、合理的行動理論と呼ばれている」と述べている。*3

個人がある行動をとる(とらない)のは、その行動の結果(メリット・デメリット)がどうなるか予測し、その結果を評価すること(望ましい/望ましくない)によってである、と言えよう。この予測と評価は、厳密な科学的手続きに従ったものから、信仰レベルのものまで多様だろうから、これを「合理的」行動理論と呼ぶのは適切ではないだろう。

また、「客観的規範」すなわち「制定法」(ルール)や「慣習法」(道徳規範)の影響力を無視すべきではない。主観的規範よりは客観的規範のほうを重視すべきではなかろうか。

*1:

  • 態度…ある対象(事柄)に対しての個人の反応や行動を決めるための精神的・神経的な準備状態のことである。外部から観察できる行動を指すのではなく、対象に対する好みや評価的な判断に基づいた心理的な傾向を指す。
  • 行動を促す「態度」を構成する3つの成分…①認知的成分、②感情的成分、③行動的成分 の簡単な説明。
  • 態度が持つ4つの機能…①知識機能、②適応機能、③自我防衛機能、④価値表出機能 の簡単な説明。(pp.74-75)

    *2:最新 心理学事典「態度」の解説(https://kotobank.jp/word/%E6%85%8B%E5%BA%A6-91652

    *3:https://kagaku-jiten.com/social-psychology/individual/attitude.html