浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

「マイナンバー」考

マイナンバーカードと健康保険証の一体化(現行保険証は2024年秋に廃止)方針(更には運転免許証との一体化)が話題になっているが、ここでは「マイナンバー制度」の基本から理解することにしよう。

マイナンバー制度の目的

マイナンバー制度とは何であり、何を目的とするものか。次の図解が分かりやすい。

マイナンバー制度導入のポイント>

  1. 公平・公正な社会の実現…国民の所得状況等が把握しやすくなり、税や社会保障の負担を不当に免れることや不正受給の防止、さらに本当に困っている方へのきめ細かな支援が可能になります。
  2. 行政の効率化マイナンバー制度の導入後は、国や地方公共団体等での手続で、個人番号の提示、申請書への記載などが求められます。国や地方公共団体の間で情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続が正確でスムーズになります。
  3. 国民の利便性の向上…これまで、市区町村役場、税務署、社会保険事務所など複数の機関を回って書類を入手し、提出するということがありました。マイナンバー制度の導入後は、社会保障・税関系の申請時に、課税証明書などの添付書類が削減されるなど、面倒な手続が簡単になります。また、本人や家族が受けられるサービスの情報のお知らせを受け取ることも可能になる予定です。(https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html

端的に言えば、マイナンバー制度とは、「行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する社会基盤」である。

これが総務省の説明であるが、私はこの「公平・公正な社会を実現する」ことこそが最重要な目的であると考える。これは、共生社会のメンバー各人が、税・社会保障のような主要項目において、「公平・公正」に取扱わなければならないということである(特に金融所得)。そのために各人に個人識別番号(ID)を付与して、管理することが必要である。(「管理」という言葉に過剰反応しないで、会員番号、職員番号、学生番号などを思い浮かべればよい。)。なお、ここで社会保障というのは、年金、医療、福祉、介護、労働保険等のことである。

次に「行政の効率化」であるが、「情報連携が始まると、これまで相当な時間がかかっていた情報の照合、転記等に要する時間・労力が大幅に削減され、手続が正確でスムーズになる」というのはその通りだと思う。これを国民/住民には関係ないと思ってはいけない。行政事務のムダ排除は、国民/住民にとっての利益である。

「国民の利便性の向上」については、これを強調してもあまり響かないだろう。各人にとっては、区役所や税務署に行って何か手続きをするということ自体が頻繁にあることではないのでメリットを感じられない。

「行政を効率化し、公平・公正な社会を実現する」という目的に反対する人はほとんどいないと思うのだが、どうだろうか。

 

マイナンバー制度の問題点

目的は良いとしても、それが達成されるか否かは、具体的にどういう仕組みにするかによる。

ここで、「マイナンバー制度の問題点について」(2016/12、高橋秀雄 中京大学教授)を参照しよう。

個人事業主の収入から差し引かれるべき経費の金額を正確に把握することが困難であり、このことはマイナンバー制度下でも基本的に何も変わらない。…結局のところ、マイナンバー制度の導入によっても、完全に正確な所得の把握はできそうにもないのである。

マイナンバーを導入したところで、正確な税引前利益(収入―支出)計算ができるようになるわけではない。そうではなく、特に「金融所得」をモレなく把握するのにマイナンバーが役立つだろうということである。これはとりわけ「富裕層」の節税対策に対抗するのに有効ではなかろうか(詳細を検討する必要はあるが…)。

マイナンバー制度の利活用から取り残される人達(DV の被害者、多重債務者、野宿者等の住民登録されていない人達)が存在する。また、マイポータルについていえば、パソコンや情報端末をうまく使いこなせなかったり、そもそも利用環境を整えられない人達は、マイポータルの利用から排除されてしまう。

住民登録されていない人達の問題は、マイナンバー制度とは関係なく対策されるべき問題である。マイポータルについては、もともと利便性に期待するようなものではないから、スマホやパソコンを持っていなくても支障がないようにしておけばよいだろう。

国家による個人の監視が強まるのではないかという懸念がある。特定個人情報が警察や公安機関に提供されるではないかという懸念である。                                                                                                    

軍産業複合体や全体主義者が国家権力(政府)を牛耳っていて(あるいはそういう野望を持って)、マイナンバー(=国民総背番号)により、国民を監視しようとする制度であるという批判である。この議論をここで始めるわけにはいかない…。

マイナンバーカードのなりすまし取得や偽造に対する危惧がある。

情報漏れやプライバシー侵害の恐れがある。…将来的にさらなるマイナンバー法改正により、マイナンバーの民間活用*1を進展させていくとしたら、マイナンバーを活用する企業から情報漏洩等が起こらないように、マイナンバーをはじめとする個人情報を保護するための対策をどの程度講ずることができるのかという問題がある。…マイナンバー制度では、住基ネットのように4情報だけが流れるだけでなく、情報連携により様々な個人情報がたぐり寄せられることになるので、情報漏れやプライバシー侵害防止のために十分な対策を講ずる必要性がある。

マイナンバーカードの多目的利用に伴う問題…カードの紛失、盗難、偽造カードの流通、なりすましによる不正使用等のリスクがある。マイナンバーカードという券面にマイナンバーが記載されている重要なものを常時携帯させるということには問題がある。

この点に関しては、十分 (?) 考慮して対策が講じられているように思える。セキュリティ対策は、問題点というよりは、当然の要請である。なお、個別の情報漏れやプライバシー侵害だけでなく、システムへの攻撃でシステムダウンが発生することが大きなリスクかもしれない。

マイナンバー制度の詳細、例えばマイナンバーカードの用途についての詳細、マイポータルの存在とその利用方法等といったことについて、どれぐらいの人が知っているのかという問題がある。

政府広報で周知させることは難しいだろう。マスメディアの取り上げ方次第である。カネ(マイナポイント)で釣ろうというのは疑問である。「公平・公正な社会の実現」、「行政の効率化」で合意を得る努力が必要だろう。

国民にマイナンバーカードを持たせることにより、電子申請・申告を行わせることには利便性がある反面で、…行政窓口での係員との対面接触により、相談や説明を受けながら手続きをする機会が減少し、サービス低下につながることが懸念される。

どんなことであれ初めてのことには、教えてもらったり、マニュアルをみたりして覚えていくものである。

 

ここまで書いて、YouTubeを見ていたら、たまたま次の動画が目についた。

 

マイナンバーカードと健康保険証の一体化に反対の意見に答えます

www.youtube.com

 

電子化に反対する人って本当はやましい事しているから?

www.youtube.com

 

本人確認のためのマイナーバーカードは、近いうちに古くなるように思う。

例えば、次の記事を参照。

www.hitachi-solutions.co.jp