浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

三匹の子豚の鼻の穴は、全部でいくつあるでしょうか?

三匹の子豚

【問題】三匹の子豚の鼻の穴は、全部でいくつあるでしょうか?*1

https://www.irasutoya.com/2013/10/blog-post_7173.html

【解答】
(Aの答え)式:3×2 答え:6  採点:ブー(×)
(Bの答え)式:2×3 答え:6 採点:はなまる(〇)

Aの答えは、式の順序が間違いなので、ブー(×)なのだそうだ。私はAのように答えたので、ブー(×)を食らった。(この記事を読んでいるあなたは、「はなまる」でしたか?)

ここで、①Bのみを正解とする。Aは不正解。②AもBも正解である。という2つの立場に分かれる。つまり、①が妥当か否かが論点である。このような問題を「掛け算の順序問題」と呼ぶ。

このような単純な問題は、とっくの昔に片が付いているはずだと思っていたが、いまでも一部に「ブーさん先生」がいるらしい。*2

掛け算の順序問題に関しては多くの人が発言*3しているので、私が付け加えることは何もないだろうが、少しだけふれておきたい。

掛け算の順序をめぐって」(2018/11/3)という記事の著者(flute23432)は、ブーさん先生と同じく、掛け算の順序には意味があると考えているようだ。

文章題という文脈が与えられている場合には、乗数と被乗数が定まる。

乗数とは「掛ける数」であり、また「一つ分の数」とも言い換えられる。

被乗数とは「掛けられる数」であり、また「いくつ分」とも言い換えられる。

三匹の子豚の問題で、2と3のどちらが「一つ分の数」で、どちらが「いくつ分」か分かりますか? 私は掛け算の問題で、「乗数」「被乗数」を意識したことが無かった(というか今回はじめて知った)ので、「一つ分の数」とか「いくつ分」と言われても何のことか分らなかった。

flute23432によれば、乗数(一つ分の数)は2であり(子豚1匹の鼻の穴は2つ)、被乗数(いくつ分)は3である(子豚が3匹)。従って、子豚の鼻の穴の総数は、「2×3」(乗数×被乗数)か「3×2」(被乗数×乗数)のいずれかであるが、

乗数×被乗数の順にかけ算の式を書くのが習慣である文化圏[日本]では、総数を求める式は、「2×3」(乗数×被乗数)でなければならない。小学校では、この表記慣習に従って、式を立てられているかどうかで、被乗数と乗数の違いを意識しているかがチェックされる。

三匹の子豚の問題で、総数を求める式を正確に書くなら、「2穴/匹(=1匹当り2穴)×3匹」である(2×3)。これは、3匹×2穴/匹(3×2)と書き換えられる。

文章題という文脈、つまりは日常社会生活で掛け算を使うような場面では、購入商品の金額計算の例が分かりやすい。200円/1個×10個=2000円(200×10)も、10個×200円/1個=2000円(10×200)も同じことである。「200円/1個」は乗数(一つ分の数)であり、「10個」は被乗数(いくつ分)とされるが、乗数と被乗数の順序が入れ替わっても、文脈(状況)理解が異なることはない。(単価×数量=数量×単価である)。

ところが、flute23432は、乗数×被乗数の順に掛け算の式を書くのが習慣である日本では、その習慣に従わなければブー(×)であるという。私はそのような考え方こそブー(×)であると思う。

 

行列のできるラーメン店

【問題】下の写真の行列には何人いるでしょうか?(文章題のつもりです)

https://www.servcorp.co.jp/blog/archives/ramenshop_howtosurvive.html

【解答例】

だいたい2列になっていて、100mほど並んでいます。1mには4人(2×2)ほどいます。そうすると、2×2×100で、400人ほど並んでいることになります。

*****

この解答例は、次のように図示できる。(黒丸は頭数を示す)

このとき総人数を、2×200で計算するか、200×2で計算するか。この掛け算の順序に意味があるか。行と列(縦と横)を入れ替えたら、考え方が変わるのかどうか。

先ほど、乗数(掛ける数)、被乗数(掛けられる数)という言葉が出てきたが、この場合200は乗数なのか被乗数なのか。区別する必要があるのかどうか。

行列を整理する係の人は、よく「2列に並んでください」などと叫んでいるが、「2行に並んでください」とは叫んでいない。なぜだろうか。

問題の答えの単位は、「~人」であるが、では2人×200=400人なのか、2×200人=400人なのか。(2人×200人はあり得ない。でも「人×人=人の2乗」は何を意味するのかを考えることは、頭の体操になりそうである。メートル×メートルは、平方メートルで意味がある)。

 

私がこの問題でホントに言いたかったことは別にあるのだが、つい長くなってしまったので、これでやめときます。

*1:この問題は、開米瑞浩の「6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性」(2011/12/21)他を読んで、思いついた問題である。

*2:東京新聞の2023/6/3付け「5×6」は〇で「6×5」は×、△にする教員も…半世紀にわたる掛け算の順序論争 参照。また、東洋経済の2021/07/27付け「掛け算の順序問題」はやっぱり決着がつかない も参照。

*3:開米瑞浩の2011/12月の記事やそこで紹介されている人の記事を参照。