長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(2)
今回は、第3章 心の発達-乳幼児期の心理 のうち、「愛着」をとりあげよう。
あなたのまわりに次のような大人はいませんか?
A1 傷つきやすい
A2 怒りを感じると建設的な話し合いができない
A3 過去にとらわれがち、過剰反応
A4 0か100かで捉えてしまう
A5 意地っ張り
B1 親などの養育者に対して敵意や恨みを持つ、または過度に従順になったり、親の顔をうかがう
B2 親の期待に応えられない自分をひどく責める
B3 人とほどよい距離がとれない
B4 恋人や配偶者、また自身の子どもをどう愛すればいいかわからない
C1 キャリア選択がうまくできず、時間をかけた割にわずかな見聞や情報で決めてしまう
C2 自分の選択に対する満足度が低い
これは、本書ではなく、LITALICO発達ナビ*1からの引用で、大人の愛着障害の特徴としてまとめられているものです。Aは「情緒面」、Bは「対人関係」、Cは「アイデンティティが確立できない」の特徴です。
私は、話し合い(議論)、コミュニケーションの難しさは、「愛着障害」に起因するところが多分にあるのではないかと思っている。
子どものころに発症した愛着障害が治療されないと大人になっても愛着障害の症状が続くことがあります。子どもの時に養育者と愛着を築くことができなかった、ただそれだけのことのように思われることもあるかもしれません。ですが、愛着が形成されない、またそれをそのままにしておくということは、子どもが大人へと成長していくうえでの人格形成や心の持ちようなどにおいても影響を与える大きな要因になることがあるのです。
実際のところ、大人で愛着障害があるということは珍しいことではありません。ただ、大人になってからも情緒や人との関係づくりで苦労することがあってもその原因が愛着障害であるという自覚が少ないケースもあります。(LITALICO発達ナビ)
では「愛着」とは何か。
養育者(一般には親)と子との間に形成される緊密な情緒的な結びつきは愛着と呼ばれます。具体的な愛着行動としては、乳幼児から養育者に対して向けられる泣き、微笑、注視、後追い、接近、抱きつきなどが挙げられます。他の動物より未熟な状態で生まれてくる人間の赤ちゃんにとっては、このような行動によって養育者からの保護を引き出すことがとても重要なことなのです。(長谷川、本書)
愛着とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことです。専門用語でアタッチメントともいいます。
子どもはお腹が空いたとき、オムツが汚れたとき、恐怖や驚きを感じたときなどに泣くことで自分の気持ちや欲求を表現しますよね。そのとき通常は決まった養育者がくりかえし子どもに駆け寄り、不快にさせる要因を取り除きます。ここでいう養育者とは、母親や父親など、身近で世話をして育ててくれる人を意味します。養育者は頻繁に子どもと抱っこなどで触れ合ったり、声かけなどでコミュニケーションをとったりもします。
子どもは生後3ヶ月ころまでは誰に対しても微笑んだり見つめたりします。しかし、こういった日常的なお世話と愛情あふれるスキンシップ、コミュニケーションを受けとる中で、子どもは「この人は自分の要求を敏感に感じ取り、正しく対応してくれる」「この人は自分によく声をかけてくれるし、抱っこしてくれる」などと特定の養育者を認識するようになります。
このような認識のもと、生後3ヶ月を過ぎてくると、子どもはいつも自分をお世話してくれる養育者とそうでない人を識別できるようになってきます。これが愛着形成の第一歩です。子どもは養育者と生活していく中で養育者との愛着をどんどん深めていきます。この愛着を土台に、子どもは成長していくため、養育者と子どもが愛着を形成するということは、子どもの発達に欠かせないことなのです。(LITALICO発達ナビ)
http://jp.mnet.com/news/newsdetail.m?searchNewsVO.news_id=20131130143928
このような愛着はなぜ重要なのか。
- 人への基本的信頼感の芽生え…子どもは特定の養育者との間に愛着を築くと、その養育者に甘え、依存するようになります。養育者に甘え、受け入れられる。このようなやりとりを通じて、人とかかわる楽しさや喜びを体験することができます。
- 自己表現力、コミュニケーション能力を高める…愛着を形成した相手に対して、自分の要求を伝える、また時には相手の要求を受け入れるということを通して、子どもは自分が求めていることを表現することの楽しさや難しさを知ります。これにより表現力やコミュニケーション能力の向上が期待できます。
- 自己の生存と安全を確保する…子どもは不安や危機を感じた時に、愛着の対象者を「安全基地」と見なして、自分の身を守ろうとします。(LITALICO発達ナビ)
子育て世代にとっては、気になる内容だろう。
昨年大きな話題になった「保育園落ちた日本死ね」が思い出される。
保育園に入るのに年齢制限はあるのだろうか。認可保育園(公立、私立とわず)であっても、バラバラのようだ。上のような「愛着」の記事を読むと、0歳児からの受け入れはどうなんだろうと思う。もし、科学的な根拠があるのだとしたら、受け入れ可能年齢の制限をすべきということになるが、その場合、「働かなければ、生活に困る」世帯をどうするのかを考えなければならない。
*1:
LITALICO発達ナビは、「愛着障害とは? 愛着障害の症状・治療法・愛着を築く方法をご紹介します!」(2017/01/19 更新)という記事で、愛着障害について解説しています。その内容は、次の通りです。
・愛着障害(アタッチメント障害)とは? …愛着(アタッチメント)とは? なぜ愛着が大切なの?
・愛着障害の医療的な定義と診断基準とは? …WHOの定義、診断基準
・子どもが愛着障害である場合の具体的な傾向とは?
・愛着障害の原因は?
・愛着関係をはぐくむには?
・愛着障害には治療法があるの?
・大人の愛着障害 …大人の愛着障害の特徴、愛着障害が引き起こす疾患、大人になってから愛着障害を克服するには?
・愛着障害と発達障害の関連はあるの? …反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)、脱抑制型愛着障害
・まとめ
・参考文献