気の向くままに

井蛙は以って海を語るべからず、夏虫は以て冰を語るべからず、曲士は以て道を語るべからず

色感覚 マリンハチェットフィッシュは、どんな色を見ているのだろうか?

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(11)

今回は、第10章 感覚 のうち、「色感覚」をとりあげよう。「色」に関する話題は幅広く(Wikipedia参照)、色感覚以外の色の話のほうが面白いのだが、本書から離れすぎるので、別途としたい。

人間には外界を知るための感覚として、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚という5種類が備わっている。更に、自分自身の状態を知るための感覚として、運動感覚、平衡感覚、内臓感覚の3種類があり、全部で8種類の感覚を区別するのが一般的である。

最初の「視覚」とは、

光刺激によって生じる感覚。視覚器官はふつう目である。明暗のみを感じるものを光覚,色を感じるものを色覚として区別する。また機能的には対象物の形を識別する形態視と対象物の位置や動きを識別する空間視とに分けられる。(百科事典マイペディア)

可視光線 (波長 380~760nm) の受容によって現れる光の明暗や色に関する感覚をいう。広義には,事物の色彩,形や,それらの奥行,運動などを弁別,識別することを含む。したがって,視覚は光感覚,色感覚のほか,奥行知覚 (立体視) ,運動知覚 (運動視) などを包括する。視覚の受容器は網膜の錐状体と杆状体で,これら受容器に生じた興奮は視神経によって中枢に伝えられ,大脳皮質の視覚野に達して視覚となる。(ブリタニカ国際大百科事典)

視覚には、①光感覚(明暗の感覚)、②色感覚、③奥行知覚、④運動知覚があると覚えておこう。このうち、②の色感覚が今回の話である。

わかりやすい解説があるので、これを参照しよう。「色が見える仕組み」(1)~(7)というブログ記事である。

1.光があるところに色がある

2.光に色はついているのか

3.視覚が生じる仕組み

4.色とはなんだろう

5.色の基準は太陽光

6.違う光なのに同じ色に見える

7.光と色の三原色

色はどうして生じるのか?

色がどうして生じるのかを科学的に明らかにしたのはイギリスの物理学者アイザック・ニュートンです。ニュートンは1666年に無色の太陽光をプリズムに通すと、光が分散して赤橙黄緑青藍紫の7色の光の帯が現れる現象を実験で示しました。そして、プリズムで分散した光の帯をレンズともうひとつのプリズムで集めると元の太陽光と同じ無色の光に戻ること、光の帯から異なる任意の2色の光を取りだして混合すると別の色が現れることを示しました。ニュートンはこれらの実験結果から、無色の太陽光は様々な色の光が集まったものであることを突き止めました。そして、光そのものには色はついていないが、光は人間の視覚に色の感覚を起こす能力があると結論づけました。

では、色とは、「主観的な」感覚なのだろうか? 光が7色に分かれるというのであれば、光は本来、色を含み持っているのだろうか? 光は客観的なものか主観的なものか? 

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レーザポインタの光線が色づいて見えるのは、光が空気中のホコリやチリなどの微粒子で散乱し、その散乱した光が目に入るからです。…私たちは光線そのものを見ているのではなく、光に照らし出されて色づいた微粒子を見ているのです。ですから、まったく微粒子が存在しない空気中や真空中では、私たちはレーザポインタの光線を見ることができません。

私たちが色を見ることができるのは、光源の物体を見るときか、光で照らし出された物体を見るときです。すなわち、光が眼に入ったときにだけ、私たちは色を見ることができます。私たちが見る色は、眼に入ってくる光の波長(振動数)によって決まりますが、光そのものに色がついているわけではありません色は光そのものの物理学的な性質ではなく、光を見る側の人間の生理学的な現象として生じるのです。

色は、人間(生物)の「生理学的な現象」として生じる、という点が重要だろう。

 

アコウダイ(赤魚鯛)

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https://nsakanaya.exblog.jp/4819372/

 

マリンハチェットフィッシュ(Marine Hatchetfish)

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https://ailovei.com/?p=29639&page=2

 深海魚は、どのような色をみているのだろうか?

 

視覚が生じる仕組み

私たちの眼の網膜の奥には、光を感じることができる視細胞があります。視細胞には、暗い光にも反応するが色を識別できない桿体細胞と、明るい光にしか反応しないが色を識別できる錐体細胞があります。…眼はこの2種類の視細胞によって、網膜に結んだ物体の像の明暗や色や形をとらえます。

錐体には、赤錐体(L錐体)・緑錐体(M錐体)・青錐体(S錐体)とよばれる3種類の細胞があります。この3種類の錐体は、それぞれ約560 nm、約530 nm、約430 nmを中心にある程度の幅をもつ波長範囲の光を感じることができます。…それぞれの錐体細胞が受けた刺激は、視神経を通って脳に送られます。脳は3種類の錐体細胞が受け取った刺激の割合から何色なのかを判断します

私たちが認識している色は、私たち人間の視覚に密接に関係しています。昆虫には、赤い色を見ることができないものや、紫外線が見えるものがいます。鳥は錐体を4種類持っており、人間よりも色を識別する能力が高いと考えられています。逆に、イヌやネコは錐体を2種類しか持っていないため、人間と比べると色を識別する能力は低いと言えるでしょう。

鳥は人間よりも色識別能力が高いのだとすると、なぜそうなのか。進化論的な説明があるのだろうか。錐体が数多くあれば電波やX線の色も見ることができるのだろうか。だとしたら、世界はどのように見えるだろうか。

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https://www.sugatsune.co.jp/technology/illumi-l.php

 

可視光線

可視光線とは、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長のもの。いわゆる光のこと。JIS Z8120の定義によれば、可視光線に相当する電磁波の波長は、下界はおおよそ360-400 nm上界はおおよそ760-830 nmである。可視光線より波長が短くなっても長くなっても、ヒトの目には見ることができなくなる。可視光線より波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼ぶ。

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(Wikipedia)

nm(ナノメートル)は、10億分の1メートル=100万分の1ミリメートル。例えば、500nmは、2000分の1mm。想像できない長さではない。

 

私たちが色を見ることができるのは、光源を見るときか、光で照らし出された物体を見るときです。光源を見ているときは、光源から出た光が直接眼に入りますから、光源から出る光が決まれば、眼で見える色が決まります。例えば、波長660 nmの光を出す光源は赤色に見えます。一方、物体の色は太陽などの光源から物体に届いた光のうち、物体が吸収せずに反射した光の色です。

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光源が太陽の場合、赤いリンゴは太陽光のうち青緑系の波長の色の光を吸収し、太陽光から青緑系の光を欠いた光を反射します。その反射した光が私たちに赤く見えるのです。赤いリンゴに青緑系の光のみを当てると、反射する光がありませんからリンゴは黒っぽく見えます。…私たちが見ている物体の色は「光源の光」と「物体が吸収・反射する光」で決まります。赤いリンゴや黄色いバナナは、昼間の太陽光のもとでは赤色や黄色ですが、光源が変われば見える色も変わります。…私たちが考えている物体の色は暗黙の了解で光源が昼間の太陽になっているのです。

物質が「波」を吸収するとは? 「吸収」を正しく理解するには、光(電磁波)の波動性と粒子性、光子エネルギー、電子のエネルギー励起など、物理学の基礎知識がないと理解できないだろう。これは「心理学」の範疇を超えそうだ。

 

ここで「人間は世界(外界)をどのように認知するのか」の観点から、重要と思われる事項を復習(補足)しておこう。以下引用は、FNの高校物理(物理-波・音・光-光と絵の具の三原色) による。

人間の目の網膜には、赤色波長(610nm)近傍の光に共鳴してその光のエネルギーを吸収し興奮する細胞と、緑色波長(550nm)近傍の光を共鳴吸収して興奮する細胞と、青色波長(450nm)近傍の光を吸収共鳴して興奮する細胞がある。それらの細胞の先端は錐体状をしており、それぞれはL錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)と呼ばれる。つまり人間の目はこの三つの波長領域の光に別々に反応する視細胞があり、この三つの波長領域にしか反応しない。しかし、この三波長領域で地球上に存在する光の波長をほぼ覆い尽くすことができる。

先ほどの「視覚が生じる仕組み」では、「3種類の錐体は、それぞれ約560 nm、約530 nm、約430 nmを中心にある程度の幅をもつ波長範囲の光を感じることができる」としていた。

著者は次の説明を四角で囲んで強調している。私もこれは非常に重要なところだと思う。

我々が感じる色とは、上記三種類の錐体細胞が感じる興奮の程度により呼び起こされる神経回路の興奮の様相にすぎない。つまり、赤錐体が興奮したとき感じる感覚が赤色(Red)であり、緑錐体が興奮したとき感じる感覚が緑色(Green)であり、青錐体が興奮したとき感じる感覚が青色(Blue)である

L錐体が興奮(静止状態から活動状態への移行)したとき感じる感覚が赤色である。赤やRedなどと名づけているのである。赤色波長(赤い光)が客観的に存在するわけではない

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そして、赤錐体と緑錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が黄色(Yellow)であり、緑錐体と青錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が空色(Cyan)であり、青錐体と赤錐体が同程度に興奮したとき感じる感覚が赤紫(Magenta)である。すべての錐体細胞が同程度に興奮したときに感じる感覚が白色(White)である。

だから黄色や空色や赤紫色の光の波長が存在するのではなくて、三種類の視細胞の興奮の度合いの組み合わせに伴う脳神経回路の興奮の様相が色の感覚である

赤色波長や緑色波長や青色波長が客観的には存在しないのと同様、黄色波長や空色波長や赤紫色波長も客観的には存在しない。三種類の視細胞の興奮の度合いの組み合わせに伴う脳神経回路の興奮の違いを、黄色や空色や赤紫色などと名づけている。

上図は「光の三原色」であるが、「色の三原色」というものもあり、これも面白い話題なのだが、省略しよう。