浮動点から世界を見つめる

井蛙には以って海を語るべからず、夏虫には以て冰を語るべからず、曲士には以て道を語るべからず

長期記憶(意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶、プライミング)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(22) 

今回は、第12章 記憶 のうち、長期記憶 をとりあげるが、本書の記述やネット検索での用語解説もあまり面白くない。「ふ~ん。それで?」という感じである。文脈なしで、用語解説だけを読んでいるからかもしれない。ここで文脈というのは、その用語解説の前提にある「問い」(問題意識)のことである。

私の「問い」(問題意識)は、「心とは何か」「人間とは何か」「生命とは何か」である。「AI」とか「認知症」とかの関連でも良い。「記憶」がそれらとどう関係しているか。

木下は、次のように述べていた。

記憶照合の二つは、常に相伴って働く。二つのうちのどちらか一方だけでは意味をなさない。…記憶として格納されていた情報は、照合のために呼び出されるが、照合によって得られた結果は、新しい記憶としてあらためて格納され直し、次に照合が行われるときには、過去の記憶ともども呼び出されて照合の場に置かれることになるので、再び複雑な照合が行われ、更に新しい記憶を生ずるという循環が始まる。こうして記憶は次第に成長しつつ、堆積し、重層化し、複雑化していく。

記憶と照合との循環によって、いくつかの思いがけない特性が導き出されてくる。それは以下に述べるように、時空であり、論理であり、感情である。これらは心を支える枠組みを作りあげる特性となる。これらの特性はいずれも記憶から導き出されるものでありながら、より具体的になっているので、心の枠組みがどういう性格を持ったものになるかを検討しやすくなるはずである。(木下清一郎『心の起源』、記憶から、時間・空間、論理、感情が導き出される 参照)

記憶を、時空や論理や感情に関連付ける議論があれば面白いのだが、そんな議論は見当たらなかった。

 

以下に、あまり面白くない解説をメモしておくが、上記の問題圏に一つの「点」として置いておきたい。

長期記憶の分類

長期記憶は陳述記憶・非陳述記憶の2つに分類される。長期記憶を近時記憶と遠隔記憶の2つに分類する説も存在する。

  1. 陳述記憶…言葉で表現できる記憶である。宣言的記憶、顕在記憶とも呼ばれる。陳述記憶は意味記憶エピソード記憶に分けることができる。(補足)教科書を使った学習や知識は、宣言的記憶として保持される。宣言的記憶をよく保持するには、記憶術や反復練習の一種である active recall(積極的に思い出すこと)を利用することがよいとされる。中部側頭葉、特に海馬と大脳皮質の関連部位が必要とされる。
  2. 非陳述記憶…言葉で表現できない記憶である。非宣言的記憶、潜在記憶とも呼言う。非陳述記憶には手続き記憶ライミング、古典的条件づけなどが含まれる。(Wikipedia

陳述言語

1-1. 意味記憶…言葉の意味についての記憶。意味記憶の構造は、意味ネットワークという形でモデル化されている。(補足)時間や場所に依存しない事実や知識。

1-2. エピソード記憶…個人的体験や出来事についての記憶。(補足)イベント(事象)の記憶。エピソード記憶には、時間や場所、そのときの感情が含まれる(感情は記憶の質に影響する)。自伝的記憶はエピソード記憶の一部である。エピソード記憶意味記憶(事実と概念に関する記憶)と相互に関連している。エピソード記憶は物語にたとえることができる。(Wikipedia

非陳述記憶

2-1. 手続き記憶…物事を行うときの手続きについての記憶。いわゆる「体で覚える」記憶がこれにあたる。(補足)技能や手続き、ノウハウ(手続き的知識)を保持する。言葉で説明できないことが多く、意識しなくとも使うことができる。手続き学習の例として、自転車の乗り方の練習、タイピングの練習、楽器の練習、水泳の練習がある。手続き記憶は永続性がある場合もある。

2-2. ライミング…先行する事柄が後続する事柄に影響を与える状況を指して「プライミング効果があった」と言われる。先行する事柄(プライム)には、単語、絵、音などがありうる。(Wikipedia

 

意味ネットワークについて

単語や概念を、それぞれが意味する関連性の有無や強弱によって結びつけ、グラフ化したもの。ある二つの単語に共通点があるかどうか、同一概念に属しているかなどを定義づけることで、意味を直接理解しないコンピュータでも形式的に言語の処理が可能となる人工知能における推論、および自然言語処理機械翻訳の分野で用いられる。(デジタル大辞泉

人工知能における知識表現法の一つ。知識はグラフを用いて表現される。個々の対象はグラフのノード(節点)で表され,対象間の関係はノードを結ぶリンクで表される。これは,人間の連想記憶をモデル化したもので,関連知識の検索に有効である。(ブリタニカ国際大百科事典)

f:id:shoyo3:20190227201936j:plain

■コモンセンス知識は互いに結び付いた言葉によって、大規模な「意味ネットワーク」を形成する。(https://business.nikkeibp.co.jp/article/bigdata/20140722/268973/?ST=print

意味記憶は、上図のように構造化されていると思われる。

 

動物のエピソード記憶について

エジンバラ大学で2006年に行われた研究によると、ハチドリが世界で初めてエピソード記憶の2つの側面を示した動物とされた。それは、ある花のある場所とどのくらい以前[時間]にその花の蜜を吸ったかを思い出す能力である。彼らはハチドリの行動範囲に(ショ糖を内部に仕込んだ)8本の造花を配置し、ハチドリがそれらの花を訪れる頻度を観測した。8本のうち4本は10分ごとにショ糖を補給し、残る4本はショ糖が空になってから20分後に補給するようにした。ハチドリは造花のショ糖補給スケジュールに合うように訪れるようになり、10分間隔で補給される造花には頻繁に訪れるようになった。「我々の見識によれば、これは野生動物が食料源の場所といつそこを訪れたかを記憶していることを世界で初めて示したものである」とエジンバラ大学の Susan Healy は述べた。(Wikipedia

このような実験を考えだすことができる人は「頭が良い」。そうではなく、エピソード記憶とは、こういうものであると(既存の学説を)説明できたり教えることができたとしても、それは単に「暗記力」がある「凡人」である。

 

手続的知識について

手続き的知識とは、何かをする際のハウツー的な知識。普通はノウハウ(Know-how)ともいう。…認知心理学における手続き的知識は、作業を行う方法に関する知識を示す用語である。また、宣言的知識と異なり、特定の個人と明瞭にリンクしない知識や無意識的知識に付随していることが多い。例えば、多くの人は特定の顔つきを「魅力的だ」と認識したり、特定の冗談を「おかしい」と認識したりするが、何故そう認識したかを明確に説明できないし、「魅力」とか「おかしさ」の明確な定義を説明できないものである。(Wikipedia

無意識的知識に付随するノウハウ的な知識とは、何のことかよくわからない。

 

ライミング効果について

あらかじめある事柄を見聞きしておくことにより、別の事柄が覚えやすくなったり、思い出しやすくなることをいう。ここで先に見聞きする事柄をプライムと呼ぶ(影響を受ける別の事柄はターゲットと呼ぶ)。たとえば、連想ゲームをする前に、あらかじめ果物の話をしておくと、赤という言葉から「りんご」や「いちご」が連想されやすくなる。また車の話をしておけば、同じ赤という言葉から「信号」や「スポーツカー」が連想されやすくなる。こうした効果が生じるのは、単語や概念が互いにネットワークを形成しているためだと考えられる。(ナビゲート ビジネス基本用語集)

長期記憶の分類では、プライミングは非陳述記憶に分類されていた。また意味ネットワークは陳述言語に分類されていた。この分類に従えば、連想ゲームの例は適切でないようだ。それとも、プライミングは陳述記憶にも非陳述記憶にもあてはまるというべきか。