「桜を見る会」問題(7)
小田嶋隆は、コラム記事で、黒川東京高検検事長の定年延長に関する人事院の松尾恵美子給与局長の答弁をとりあげていた。
10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する(小田嶋隆)
松尾局長が、「つい言い間違えた」などという愚かしい答弁をせねばならなかったのは、彼女が無能だったからではない。愚かだったからでもない。松尾局長が、見苦しい答弁をせねばならなかったのは、彼女が正直な回答をブロックされていたからだ。本当のことを言ってはいけない立場に立たされた時、正直な人間は、正体を失う。自分自身をさえ失う。彼女は、自分が従事している仕事の職業倫理に反する回答を求められ、それを衆人環視の中で自分の口から吐き出さなければならなかった。とすれば、ロボットみたいな無表情で機械的な発話を繰り返すか、でなければ、3歳児の如き無垢を発揮するほかに対処のしようがないではないか。…
これまで、幾人の高級官僚がこのこと(←政権中枢の発言に事後的に口裏を合わせること)を求められ、そしてそのミッションを果たすことによって、自らの人間の尊厳を喪失してきたことだろうか。…
意に沿わぬウソをつかされた人間は、精神的に死んでしまう。中には本当に死んでしまう人もいる。…
ホテルニューオータニは、「ホテル側が約800人の前夜祭参加者と個別に契約し、個別に領収書のやりとりをした」という首相の説明をいまもって否定していない。このほか、当日の会費の設定や、明細書の有無や、契約した当事者の名前も含めて、一切明らかにしていない。つまり、太客[ふときゃく]である首相夫妻ならびに政府にとって都合の悪い情報に関しては口を閉ざしている。…
一方、ANAホテルが守っている「信用」(←法と正義と真実を大切にするコンプライアンスに寄り添った信用)は、すべてのホテル客と共有可能な、世界中どこの国でも通用するグローバルで普遍的な「信用」だ。…
17日の時点までは、メディア各社の取材にメールで回答していたANAホテルは、18日に自民党と会談した後の19日以降、「個別の事案に関するお問い合わせに関しては、回答を差し控える」という姿勢に転換している。…
政府は、インターコンチネンタルホテルのコンプライアンスを殺しにかかっているのだろうか。…
10人の部下を持つ人間がウソをつくと、10人のウソつきが誕生する。安倍首相ご自身は、あるいは、ウソをついている自覚を持っていないのかもしれない。しかし、ご自身が何百人何千人のウソつきを生産していることは、ぜひ自覚してもらいたい。ついでに、その何百人何千人のウソつきたちの心が、かなりの度合いで死んでいることも、できれば思い出してあげてほしい。ぜひ。
(2020/2/21、小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明、https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00058/)
興味ある人は、次の動画を見て下さい。
とても長い動画だが、くだらないTVドラマより面白い。検事長の定年延長の質疑は、5:04:45頃から始まる。
「御意」、「忖度」という言葉がある。「御意」は、TVドラマ「ドクターX」でよく知られるようになった。「忖度」は、完全に日常語となっている。
御意饅頭 https://www.tv-asahi.co.jp/reading/doctor-x-02/1466/
御意力 https://gramho.com/media/2194034881322014867
桜忖度饅頭 https://www.heso-pro.com/project/sontaku/
2017/6忖度饅頭、2017/10黒忖度饅頭、2018/3桜忖度饅頭 発売。…2018/3に、桜忖度饅頭を発売したとは、先見の明がある。
一部の官僚は「御意饅頭」か「忖度饅頭」を食らって、「人間の尊厳を喪失し、精神的に死んだ」。その屍体からは、屍臭が漂う。
「桜を見る会」追及本部のヒアリング動画での内閣府大臣官房酒田総務課長他の「御意力」のある官僚は出世していくだろう(たぶん)。
だけれども、こんなことを言う人間は限られている。野党や一部メディアがどれだけ騒いでも、学者がどれだけ理路整然と批判しても、状況は変わらない。
こんな話は、大多数の人の耳には入らない。他方、新型コロナウィルスの話は大多数の人の耳に入ってくる。だから自公政権は、今後も安泰である(安倍は交代するにしても、大同小異である)。
かくして時代錯誤の戦争国家にまっしぐら?
https://unsplash.com/photos/yrHL06q_Blg
(追記1)
政府与党は、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」の「だんまり*1」で、「曖昧模糊とした決着」を図ろうとしたのかもしれないが、これでは事実(fact)は明らかにならない。
「ANAインターコンチネンタルホテル東京」は、「IHG・ANAホテルズグループジャパン」の傘下にある。同社は、全日空とイギリスの「インターコンチネンタルホテルズグループ (IHG)」との合弁による日本のホテル運営企業である。持分比率はIHG74%、ANA25%、 IHG・ANAホテルズホールディングス株式会社1%となっている。CEO(最高経営責任者)は Hans Heijligersである。またインターコンチネンタルホテルズグループ (IHG)のCEOは Keith Barrである(Wikipedia)。であれば、CEOのHans HeijligersまたはKeith Barrに責任ある回答を求めれば良いだろう。
(追記2)
共同通信社の次の記事を読んでみて下さい。
内閣は、2月20日の参院予算委員会理事懇談会に、「桜を見る会」の2019年開催分の保管資料(招待者名簿を除く)を提出したという。新型コロナのニュースばかりで、このニュースはほとんど注目されなかったようだ。
招待者名簿は廃棄するはずがないと、元官僚3人がテレビで発言していたが、誰もがそう思う。廃棄したというログも出せないようでは説得力が無い。
ただ2019年開催分の保管資料が出てきたということは、何か力関係の変化が生じてきているのかもしれない。
*1:2020/02/20の記事「桜を見る会」問題 - ご飯論法、ANAインターコンチネンタルホテル東京の広報 参照