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COVID-19: 疑わしきは排除せよ!

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(24)

7月初め頃から、東京を中心とした「新規感染者」の増大傾向が報道されている。

最初にエクスキューズしておきたいが、これから述べることは「日本」に限定した話であり、主観的に25%は誤りである。

昨今のメディアの報道は、またぞろ「煽っている」という感じがする。何故そう感じるかを、できるだけ客観的に述べてみたい。

タイトルの「疑わしき」とは、「PCR検査で、無症状または軽症の陽性者」のことであり、「排除」とは「宿泊療養」のことである。この措置が正しいかどうかは(データを見ていないので)判断できないのだが、「疑わしきは排除」して、「日常社会生活」を奪うということになると感じている。彼・彼女が「重要な仕事」を抱えていたとしたらどうなるのだろうか? 風邪をひいたら半強制的に隔離される?

 

1.国内の感染状況

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https://hazard.yahoo.co.jp/article/20200207

ここで「感染者」とは、「PCR検査陽性者」のことであり、「新型コロナウイルス感染症の症状を呈する患者」ではない。「無症状」の者を含む数字である。症状があっても、「軽症」、「中等症」、「重症」と様々である。これらを明確に区分することなく、ごちゃまぜにしてトータルの数字だけをみて騒いでいる。雑な議論である。PCR検査数との相関関係があるのかないのかも明確ではない。検査対象の事前確率に、4月時点と今回とで差異はあるのかないのか。陽性的中率をどう考えるのか。性・年代・基礎疾患有無・過去の病歴等の様々な要因と検査陽性との関連をどのように分析して発言しているのか。

 

年代別の陽性者数と死亡数は次の通りである。(7月8日時点の数字が最新のものである)

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チャートで見る日本の感染状況 新型コロナウイルス(日経、2020/7/15)

https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-chart/

 

具体的な人数が分らないので、出典の厚労省データ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12360.html)を見ると、陽性者数、死亡数、死亡率、重症者割合は、以下の通りであった。(死亡率:年齢階級別にみた死亡者数の陽性者数に対する割合、重症者割合:年齢階級別にみた重症者数の入院治療等を要する者に対する割合)

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累計の死者数は約1000人で、80代以上、70代、60代の高齢者でほとんどを占める。これは何を意味するか?

当初より、高齢者と基礎疾患のある人が要注意であると言われてきたのだが、上記数字はそれを裏付けている。岡本裕の言い方では、「自己治癒力」(免疫力)の低下している人である。「自己治癒力」(免疫力)の低下は、コロナウイルスとは関係ない。そういう身体の状況にあるところに、ウイルスに感染することによって、重症になり、かなりの確率で死に至る(コロナウイルスはきっかけに過ぎず、主要因は自己治癒力の低下であると考えられる)。だとすれば、ウイルス感染予防のほかに自己治癒力(免疫力)の強化が予防になるはずである。高齢者の「自己治癒力」(免疫力)の低下は避けがたいところであり、だとすればリスクは何もコロナウイルスだけではない。高齢者の死因ランキングは、①腫瘍、②心疾患、③脳血管疾患、④肺炎であるから、それらの予防が必要である。

 

2019年の死因別の死亡数(の一部)を見てみよう。

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「令和元年年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚労省)より

 

COVID-19のこれまでの死者は約1000人である(年間でどうなるかわからないが…)。上表の赤字の疾病と比較してみたら興味深い。もちろん単純に比較して少ないから大した病気ではない、などとは言えない。さまざまな対策の結果として、これまでのところ約1000人にとどまっていると言えるかもしれないが、それはわからない。

ここで言いたいのは、COVID-19だけ大々的にとりあげて、他の病気になぜふれないのかということである。上表で赤字にした疾病の死亡数を確認しておきたい。インフルエンザの約3600人の死亡は問題ではないのか。肺炎の約95,500人の死亡は問題ではないのか。感染症及び寄生虫症の死亡数の約23,500人の死亡は問題ではないのか。対策を講じる必要はないのか。

 

2.検査と治療

PCR検査を拡大せよとの声が大きくなっているように感じる。PCR検査による「早期発見・早期治療」が可能であるとの誤解があるのではなかろうか。PCR検査の精度(的中率)の問題はさておいても、「治療」が可能であるとの誤解がある。現状、有効な治療薬が無い以上、せいぜいが対症療法、重症患者に対する人工呼吸器やECMOの装着ではないか。基本は「自己治癒力」だろう。

PCR検査の基本的な目的は、治療ではなく、ウイルス保有者(患者ではない)を見つけだし、隔離することである。それによって感染拡大を防止するということである。だから「無症状」であっても(COVID-19という疾病ではなくても)隔離し、他者に感染させないことが目的となる。

 

ところで、「風邪」とは、いかなる疾病であろうか。

  • 風邪とは、原因の80-90%がウイルスの上気道感染症であり、主な影響は鼻に現れる。
  • 症状としては、咳、咽頭痛、くしゃみ、鼻水、鼻閉、頭痛、発熱、嗄声などが現れる。患者の多くは回復まで大抵7-10日間を要し、一部の症状は3週間まで継続しうる。他に健康に問題がある患者は、肺炎に進行する可能性がある
  • 成人は平均して年間2-3回の風邪に罹患し、児童ではそれ以上である。風邪に対してワクチンはない。最も一般的な予防法は、手洗いの実施、洗っていない手で目・鼻・口を触らない、病人と同じ空間に居ない事である。いくつかの根拠は、マスクの使用を支持している。
  • 風邪の原因となるウイルスには数百種類以上もの血清型が存在し、毎年のように新たな型のウイルスが出現するため、風邪に対するワクチンや特効薬の開発は、絶望的な状況である
  • 風邪の直接的な治療法は存在せず、罹患期間を短縮させる方法もないが、不快な症状は対症療法で緩和可能であり、イブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は治療の助けとなる。原因微生物がウイルスで細菌の二次感染が無い場合は、抗生物質を使用せず、総合感冒薬の使用も支持されない。
  • 原因ウイルスには、ライノウイルス (30%-80%)、コロナウイルス (15%)、インフルエンザウイルス (10%-15%)、アデノウイルス (5%)などがある。インフルエンザウイルスやSARS、MERS関連のコロナウイルスは、風邪として扱われないことが多い。
  • 感染経路には、空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染接触感染の3種類がある。(以上、Wikipedia

風邪とは、「ウイルス」による「上気道感染症」である。Wikipediaの説明からすれば、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)は、風邪の原因ウイルスの一つとされる。

風邪とは「感染症」であり、感染するのである。では、なぜ「新型コロナウイルスSARS-CoV-2)」以外の感染を問題にしないのか。「無症状」や「軽症」の感染者はどれ位いるのだろうか。もし、「無症状」や「軽症」の感染者が見つかったら、隔離するのだろうか。なぜ、積極的に「検査せよ」という声が出てこないのだろうか

新型コロナウイルスSARS-CoV-2)」以外のウイルスによる「上気道感染症」の感染者であれば、外出自粛も流行地域から非流行地域への移動も自由なのだろうか。「上気道感染症」をひきおこすインフルエンザウイルスは、毎年3000人超の死者が出ているのである。なぜ、積極的に検査をし、隔離せよと言わないのだろうか。

 

3.予防

専門家(感染症専門家、医療関係者)は、「予防」に力点をおかずに、まず「検査」をして「陽性者」を見つけ出して、隔離することが重要であるという意見が大部分であるように見受けられる。もちろん、「ソーシャル・ディスタンス」とか「三密回避」とか「新しい生活様式」とか、政治家と一緒になって発言しているのであるが、これは既に「感染者」が発生していることを前提にした発言である。私がここで「予防」と言っているのは、1次感染者を出さないためにはどうするか、という話である。これは医療(治療)の話ではない。

具体的には、「空港」や「港」での「検疫」、さらには「米軍基地」での検疫、これらが第一義的に取り上げられるべきではないか。しかし、検査精度の問題があり(偽陰性)、完璧な防御は不可能だろう。(なお、感染症の病原体は、コロナウイルスだけではない)。そこをどうするのか。おそらく法令で決められているのだろうが、それがうまく機能していないのではなかろうか。(例えば、行動追跡)

なお、クラスター対策は、かなり有効な対策だったのではないかと思う。

 

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些か、まとまりのない文章になったきらいはあるが、「新型コロナウイルス」の「感染者」という「ごちゃまぜの合計数値」のみをとりあげて、第2波だの何だのと煽っているという私の「感じ」は少しは伝わっただろうか。

メディアは、政治家や専門家の一つの発言を報道するのみでなく、多様な意見があることを認識し、さらには自ら「調査報道」をできないものだろうか。