浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

COVID-19:雑な議論を克服しよう 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(42)-Q&A(1)

前回の記事で、感染者数の波のみを見て、あれこれ言うのは雑な議論だと言ったが、それは以下のように考えるからです。(今回は、趣向を変えて、Q&A[素人の自問自答]のかたちで書いてみます。あまり整理されていないですが…)

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Q1:感染者の推移を見るのが何故ダメなんですか?

A1-1:感染者という言葉の意味をはっきりしておかなければなりません。マスメディアがいうところの感染者とは、検査陽性者のことです。厚労省は、毎日(報道関係者向けに)「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」を発表していますが、令和2年11月14日版では、最初に「国内での新型コロナウイルス感染症感染者は114,983例、死亡者は1,880名となりました」と述べ、国内の状況について「11月14日0:00現在、検査陽性者114,983例が確認されている」とし、数表も「陽性者数」としています。報道機関が一般向けにわかりやすく「感染者」といかえるのであれば、わからないでもありませんが、厚労省がこのような不正確な言葉遣いをするのはどうかと思います。…「無症状」の者が「感染者」だとされるのには違和感があるでしょう。 

A1-2:検査陽性であっても、軽い症状ですみ、数日間で治るのが大部分です。もちろん中には、重症化して、死に至る場合もありますが、そういう人たちを一括りにして(ごちゃ混ぜにして)「感染者」として扱うのは、あまりにも粗雑でしょう。「無症状」の人も人工呼吸器を必要とするような「重症者」もひっくるめて「感染者」と呼び、増えた・減ったと騒ぎ立てるのはどうかと思います。

Q2:症状の程度は把握していないのでしょうか?

A2-1:専門家ではないので、実態がどうなのかわかりません。ただ症状の定義はされているようです*1。「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱ」が注目されます。

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A2-2:厚労省は、毎日次のような数表を発表しています。

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「重症者」という項目はありますが、「軽症」、「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱ」の項目はありません。医師は、上記のような「総合判断」をしているはずですが、この数字が公表されていません。「無症状者」の公表もありません。何故なのかわかりません。

Q3:「無症状の陽性者」という捉え方が、なぜ必要とされているのでしょうか?

A3-1:正確には、「無症状病原体保有」といい、その定義は「症状を認めないが、SARS-CoV-2 が検出された者」です。濃厚接触者に病原体診断が行われた場合などが具体例としてあげられています*2

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A3-2:これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、「指定感染症」とされたことに関連しています。指定感染症になると、以下のような措置(一部のみ表示)が講じられることになります*3感染症法の詳細はみていないので、ここではこれ以上のことは言えませんが、要は「指定感染症」にされたので、「無症状病原体保有者」もきちんと把握する必要があるということのようです。

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Q4:「感染者数」のほかに、どのようなデータが必要ですか?

A4-1:最低限、次のデータが必要と考えます。

  1. 地域・性・年齢・基礎疾患有無別のPCR検査人数、陰性者数、陽性者数、死者数
  2. 陽性者の内訳として、(検査時点での)症状の程度:無症状、軽症、中等症Ⅰ、中等症Ⅱ

都道府県レベルでは、ある程度公表されているようですが、集計データが見当たりません。このような基礎データを把握・公表しないで、一体どのような対策をとろうというのでしょうか。

A4-2:PCR検査の信頼性の指標としてのCt値(ウイルス量の指標)も必要でしょう(PCR検査の必要性が声高に叫ばれているため)。Ct値については、下記を参照してください。 

shoyo3.hatenablog.com 

shoyo3.hatenablog.com

 A4-3:症状の経過、基礎疾患の内容(有無だけでない)、既往歴、処置内容、検査理由、発症日、推定感染場所……いろいろな項目が考えられるが、「防疫」の観点から、必要データを収集し、分析することが求められていると考えます。

Q5:インフルエンザ患者数が、例年より大幅に少ないと言われていますが…

A5-1:確かに大幅に少なくなっているのですが、国立感染症研究所は、全国的な流行に入る時期は年によって大きく違うから、引き続き流行状況に注意するよう呼びかけているそうです。しかし、論点はそういうことではなく、新型コロナとインフルエンザの同時流行があるのか否かというところにあるかと思います。

A5-2:しかし私は、そういう話(同時流行)ではなく、新型コロナ(COVID -19)の話は、感染症の一つとして捉えること、呼吸器疾患の一つとして捉えることが重要であり、感染症に分類される各種の疾病、呼吸器疾患に分類される各種の疾病の感染者数・死亡者数等の同時公表が必要であると考えています。

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https://edition.cnn.com/2020/03/05/asia/japan-coronavirus-infection-levels-hnk-intl/index.html

(続く) 

*1:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 改訂のポイント(https://www.mhlw.go.jp/content/000631551.pdf

*2:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き p.16

*3:新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令等の一部改正について(案)(https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000615582.pdf