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COVID-19:東京都の「重症者数」や「病床数」、おかしくないですか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(46)-Q&A(5)

Q&A[素人の自問自答]の5回目です。今回は、「重症者増大と医療崩壊」について考えてみます。

「重症者」の定義が、国(厚労省)と東京都で異なったままというのは果たしてどうなんでしょうか?

人口1000万人の大都市「東京」で、新型コロナ感染症が大問題になっているこの時期に、重症者用の病床数が150床しか用意されていないということを不思議に思いませんか?

逆に言えば、

これ位の病床を用意しておけば良いという程度の病気であるということなのかもしれません。

 Q9:「重症者」はどの程度増えているのでしょうか。

A9-1:厚労省のオープンデータ(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/open-data.html)にある「重症者数」をそのままグラフ表示すると、次のようになります。

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2020/2/5~11/27のデータです*1。これは「新規重症者数」でも「累計重症者数」でもない。「公表日時点での重症者数」であることに注意が必要です。前日との差異は求めることができますが、その内訳はわかりません。重症→死亡、無症状/軽症/中等症→重症重症→中等症/軽症等の内訳の公表はありません。(そのようなデータを把握していないのかもしれません)。きわめて重要な年代別の数字も分かりません。現時点の重症者の検査日、発症日、重症の経過日、基礎疾患の有無等も分かりません。このようなデータは公表する必要はないのでしょうか。

上記のグラフだけを見ると、過去のピークを超えてるね、くらいの事しか言えません。

 

A9-2:厚労省は「注記」をしています。

(※6)一部の都道府県においては、重症者数については、都道府県独自の基準に則って発表された数値を用いて計算しており、集中治療室(ICU)等での管理が必要な患者は含まれていない。

一部の都道府県に「東京都」が含まれることは多くの人が知っていると思いますが、他にどこがあるのか分かりません(細かくチェックすれば分るでしょうが…)。

この重症者の定義の違いについては後でふれますが、その前に次の数表をご覧ください。

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この表は、厚労省の「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査結果」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00023.html)より、東京都と大阪府を抜き出したものです。重症者数が3桁なのは、東京都と大阪府だけです。(この調査結果は、1週間に1回公表される)。

上表に示しませんでしたが、上記「調査結果」では、2020/11/25時点の全国合計の重症者数は、682人です。報道関係者に公表されているのは410人です*2。これは無視できないほどの差異(272人)ではないでしょうか。

主要な差異は東京都によるものです。東京都は54人と公表していますが*3、上記「調査結果」では250人で、196人の差異です。

 

2020/11/25の新型コロナウイルス感染症対策分科会(第17回)及び2020/11/27の新型コロナウイルス感染症対策本部(第48 回)では、次の資料が提出されています。

この「重症者」の数字は、冒頭の(A9-1)のグラフの数字と異なります。

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2020/11/25の東京都の重症者は250人です。また全国の重症者は682人です。(先の「調査結果」と同じです)。

マスメディアは、東京都の数字をそのまま報道し、対策本部・分科会の資料の数字を無視しています。東京都の定義のほうが正しいと考えているからでしょうか? (危機を煽るのであれば、多いほうがいいはずですが…)

 

Q10:「重症度」の定義はどのようなものでしょうか?

A10-1:上記の重症者数の違いは「重症者の定義」によるものですが、どういう内容かみておきましょう。(A2-1)で、重症度の分類を掲載しましたが再掲します。

f:id:shoyo3:20201130141859j:plain

20200902 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第3版 p.23

この重症度分類は、「医療従事者が評価する基準」であることに留意しておきましょう。

 

A10-2:東京都と厚労省の定義は、以下の通りです。

東京都の「重症者」の定義は、「人工呼吸管理または ECMO を使用している患者」です*4

  1. ICU在室者の全てが、必ずしも重症でない
  2. 人工呼吸管理下の重症患者が必ずしも、ICUに入室していない
  3. 集中治療の基準が病院によって異なる可能性がある
  4. 人工呼吸器やECMOの導入は、判断の差が出にくく、基準が明確

厚労省の「重症者」の定義は、「集中治療室(ICUでの管理又は人工呼吸器管理が必要な患者」です*5。「なお、実際には、その患者の状態に基づき、医師が入院治療や重症管理の要否を判断されるものであることに留意されたい」としています。

東京都の専門家によるモニタリング会議(2020/11/26)コメントとして、

国の指標及び目安における重症者数(集中治療室(ICU)、ハイケアユニット(HCU)入室または人工呼吸器かECMO 使用)は、11 月 25 日時点で 250 人、うち、ICU 入室または人工呼吸器か ECMO 使用は 74 人となっている。(人工呼吸器か ECMO を使用しない ICU 入室患者を含む)。

との記載があります。

国(厚労省)の基準による重症者数250人は、先の「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査結果」の重症者数と一致します。整理すると、以下のようになるようです。

  1. 人工呼吸管理または ECMO を使用している患者:54人 (東京都の基準)
  2. 人工呼吸器を使用せず、集中治療室(ICU)に入室している者:20人(=74-54)
  3. ハイケアユニット(HCU)等に入室している者:176人(=250-74) 

厚労省の基準は、この1.2.3.の合計で250人。

ハイケアユニット(High Care Unit、高度治療室/準集中治療室)とは、「ICUと一般病棟の中間に位置して、ICUと同等、または、やや重篤度の低い患者を受け入れる」(Wikipedia、集中治療室)。なお「等」とあるのは、「救命救急」の病室の意味でしょうか?

 

A10-3:では、東京都の定義と厚労省の定義とどちらが良いのでしょうか?

私は、「病床不足」(大げさに「医療崩壊」などと言うべきではない)を回避するためには、

<今後を見越して「重症者&中等症者」の病床を適切・柔軟に確保する>

という観点から、厚労省の定義のほうが良いのではないかと考えています。(太字にしたところに留意。詳細は、次回に)

「重症者」について、厚労省と東京都の定義が一致しないというのは、それぞれの専門家の意見が対立しているからと思われます。なぜ議論しないのでしょうか。「目的」を共有できれば、いずれが妥当かは明らかになると思うのですが…。

 

続いて、「フェーズ」(新型コロナウイルス感染症患者向けの病床及び宿泊療養施設を計画的に確保していくために定める段階)について見ていこうと思っていましたが、長くなりすぎたので、次回にします。

*1:例えば、オープンデータの2020/11/27の重症者数は440人ですが、「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年11月28日版)」では、2020/11/28 0:00現在の重症者数を440人として公表しています。冒頭には「11月28日現在新型コロナウイルス感染症に関する状況及び厚生労働省の対応についてお知らせします」とあります。PCR検査の実施件数では、「2月18日~11月28日までの…」とあります。

*2:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年11月26日版)」の数字です。

*3:東京都のモニタリング項目(7)重症患者数のテーブル表示に、日別の重症者数が記載されています。

*4:

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/435/7kai/202008207.pdf

*5:https://www.mhlw.go.jp/content/000614595.pdf