新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(60)
※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000
本日(2021/2/13)より、シネスイッチ銀座を皮切りに、全国各地で上映される映画がある。
尼崎の「町医者」長尾和宏の活躍ぶりを描いたドキュメンタリー映画「けったいな町医者」である。
うーん、今週末は慣れない仕事、頑張りまーす!
誰も観なければ1週間でお蔵入りかもしれないし。
でも、多くの人が観て、少しでも評判になれば、
僕は医者を辞めないといけないかもしれないし。
正直、複雑な気分。
でも、腹は決まった。
よくまあ、「映倫」が通ったなあ、と思い直す。
言いたい事をほぼ全て言っている恐ろしい映画。
(2021/2/10ブログ、http://blog.drnagao.com/2021/02/post-7485.html)
長尾が、なぜ「多くの人が観て、少しでも評判になれば、僕は医者を辞めないといけないかもしれないし。正直、複雑な気分。」と述べているのかは、長尾のブログやYouTubeを見ていればわかる。
「けったいな町医者」HP → https://itakunaishinikata.com/kettainamachiisha/
たった2か月であったが、ずっと長尾先生の後を懸命に追いかけた日々だった。
そこで確信できたことは、尼崎というバイタリティに溢れる街と人が、長尾和宏という「けったいな町医者」を求め、作り出したということだった。この町では「病」以上に、「人」と向き合わなければ医者として確実にボロが出る。この撮影を経て、今まで以上に人間が好きになれた。
そして今この瞬間も、胸ポケットに携帯電話を忍ばせて長尾和宏は患者たちとまっすぐにつながっている。
(毛利安孝(監督)、上記HPより)
思い返すと50年間、「人の家に行く」ということをやっています、今も。 現代医療は「ここに来い」が当たり前です。医療者にとっては「ホーム」でも、患者さんにとっては「アウエイ」です。しかし通院できない人には「アウエイ」に医療者が行くことは当たり前の行為です。在宅医療なんて後づけの言葉にすぎません。 病院の回診に相当する訪問診療のことを在宅医療だと思っている医師がいますが、間違いです。患者さんが「苦しい、先生来て!」と訴えた時に駆け付ける「往診」こそが医療の本質なのです。
往診は訪問診療の何倍も患者さんが喜んでくれます。なのに在宅患者さんからのSOSを受けても「それなら119番して救急車を呼んで!」で済ます医師がいるそうです。そもそも在宅医療の24時間対応の契約から逸脱しています。
往診をすれば、その人と病気が一発で分かります。「この場所にこの病気あり」というふうに生活の様子を見ればどんな病気になるのか大体分かります。病気の原因は職場か家庭にあるのです。それを診ることができる立場が町医者ですが、その人の生活状況に興味のない医師が多すぎます。検査データだけを見てたくさんの薬ばかり出す行為は医療と呼べません。医療とは、生活や人間を見たうえで病気の本質を見抜き、解決策を提案するプロセス、長い関係性です。
50歳からたくさんの書籍やメデイアで発信し医学部でも講義をしてきました。しかし所詮、町医者の戯言など白い巨塔には全く伝わりません。今回、幸運にも映画「痛くない死に方」の副産物としてこのドキュメンタリー映画を撮って頂きました。僕のカッコ悪い日常そのものです。僕が見ても「けったい」としか言えませんね(笑)。
これからの医療に期待することは何か? …医療の原点に回帰することです。iPS細胞、AI医療、ロボット手術、オンライン診療、革新的な薬剤の開発など科学技術は目まぐるしいものがあります。しかしその中で医療の本質がどんどん見失われているような気がしてなりません。
(2021/2/10ブログ、http://blog.drnagao.com/2021/02/post-7485.html)
往診と訪問診療について
在宅医療のなかで医師が患者さんの自宅などに出向いて行う診療が「往診」や「訪問診療」です。
医師が、診療上必要があると判断したとき、予定外に患者さんの自宅などに赴いて行なう診療が「往診」です。
これに対して、在宅医療を行なう患者さんで、疾病や傷病のため通院が困難な方に対し、医師が、あらかじめ診療の計画を立て、患者さんの同意を得て定期的に(たとえば1週間に1回あるいは2週間に1回など)患者さんの自宅などに赴いて行なう診療が「訪問診療」です。