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COVID-19:超過死亡/過少死亡について(2)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(80)

※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000

西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当大臣)の発言(2021/7/8)に論評したいところだが、これは別途とし、もっと基本的なCOVID-19の危険性に関する議論として、感染研の「超過死亡」の分析を見ることにしたい。

今回の記事は、2021/5/24、「COVID-19:超過死亡/過少死亡について」前半の「日本の超過および過少死亡数ダッシュボード」(感染研)の更新版です。

 

COVID-19は、どれほど危険な病気なのか? 人がバタバタ死んで、日本全体の死者数が激増しているような状況ではないことは誰もが(直観的に)知っていると思われる。

仮に、COVID-19の死亡により、過去の平均的な死亡数を大幅に超過しているようであれば、危険な病気と言えるかもしれないので、「超過死亡」が参考になる。今回はこの「超過死亡」について見ていきたい。

感染研は、3月時点までの「超過死亡」及び「過少死亡」を算定している*1。前回見たのは1月時点までの「超過死亡」及び「過少死亡」だったので、その更新版である。今回は、前回にはなかった「主要死因別の超過および過少死亡数」が算出されているので、これも見ることにする。

 

すべての死因の超過および過少死亡数

週毎・死亡数(全国)

f:id:shoyo3:20210712161337j:plain

https://exdeaths-japan.org/graph/weekly/

  • 超過死亡数=観測死亡数―予測死亡数(上限)(グリーンの折れ線グラフ)
  • 過少死亡数=観測死亡数―予測死亡数(下限)(グレーの折れ線グラフ)
  • 予測死亡数:例年の死亡数をもとに推定される死亡数(点線)
  • 観測死亡数…青の棒グラフ
  • ⊕(+記号)は超過死亡の週、⊖(―記号)は過少死亡の週を示す。
  • 補正…都道府県の届出遅れ等があるので、都道府県別に遅延割合を算出した上で、速報データの最新3ヶ月分に対して補正を行っている。*2

2020年以降は、2020/2/9の週に過少死亡が見られるのみである。それ以降は、超過死亡も過少死亡もなく、予測死亡数の上限と下限の範囲内にある。つまり新型コロナの影響は何もないように見える。これは新型コロナ原因の死者数が他の原因による死者数と相殺されたのか、それとも都市圏の超過死亡が都市圏以外の過少死亡と相殺されたのか。

では、東京の数字はどうなっているか。

 

週毎・死亡数(東京都)

f:id:shoyo3:20210712161620j:plain

https://exdeaths-japan.org/graph/weekly/

 

東京都を見ると、超過死亡、過少死亡が目立つ。但し、新型コロナ以前から超過死亡、過少死亡が目立つので、これをどう解釈するか。

カーソルを動かすと数字が表示されるので、2021/2/7の週を見てみよう。

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超過死亡数と超過割合の欄の数字は、次の意味である。

 予測死亡数上限に対する超過死亡(A-C):93人

 予測死亡数に対する超過死亡(A-B):239人

 予測死亡数上限に対する超過割合(E1/A):3.3% (=93/2877)

 予測死亡数に対する超過割合(E2/B):9.1% (=239/2638)

 

累積・死亡数(全国&東京都&大阪府

上記は「週別」であったが、これを「累積」(2020/1~2021/3)で見ると、以下のような数字になっている。(グラフは省略)。なお、「全国」の数字は、都道府県ごとの超過死亡数/過少死亡数の積算として計算されている。(Q&A参照)

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Net死亡数は表示されていないが算出してみた。

「累積」(2020/1~2021/3)期間中の上限/下限に対する数字だが、東京はnetで132人の超過死亡、大阪はnetで22人の過少死亡、全国では3153人の過少死亡であった。すなわち、新型コロナの狂騒にもかかわらず、新型コロナ前の死亡数から予測される死亡数より、3153人も少なかった

これは、どう解釈したら良いのだろうか?

 

感染研の解釈

感染研は「すべての死因を含む超過および過少死亡数の解釈」を記述しているが、これは上記の全国及び都道府県の超過死亡/過少死亡の数字に対する解釈ではなく、解釈の際の注意事項と思われる。要は、

  • 「超過死亡がある」ことは「新型コロナウイルスによる死亡がある」ことを必ずしも意味するわけではない。
  • 「超過死亡がない」ことは「新型コロナウイルスによる死亡がない」ことを必ずしも意味するわけではない。

という当たり前のことを、詳細に(?)述べているに過ぎない。

私は今回の数字を見て意外に思ったことが一つある。それは、東京都の予測上限を超えた超過死亡数が15ヵ月(2020/1~2021/3)で、たったの614人で、予測下限を下回った過少死亡数が、482人もいたことである。

 

主要死因別の超過および過少死亡数

主要死因として、呼吸器系疾患、循環器系疾患、悪性新生物(癌)、老衰、自殺、新型コロナウイルス以外が対象となっている。

 

週毎・新別死亡数(東京都)

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2020/8/16の超過死亡数は、異常値(過去の分をまとめて計上)か。

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いずれも2020/11までのデータなので、何とも言えないのではないか。

 

累積・死因別死亡数(全国)

グラフ(省略)からひろった数字は、下記の通りである。

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感染研は、主要死因別の超過死亡/過少死亡について、次のように述べている。

新型コロナウイルス感染症間接的な死亡影響を評価するため、このダッシュボードでは主要な死因別の超過死亡数、及び死因別の過少死亡数の算出結果も報告します。過少死亡数を算出することで、新型コロナウイルス対策等、例年以上の感染症対策や健康管理の実施による健康への正の影響の評価に役立ちます。

「間接的な死亡影響」が何を意味しているのか明確ではない。新型コロナウイルス以外」や「主要死因別」の超過死亡/過少死亡を算定して、どのような「間接的な死亡影響」が明らかになるのだろうか