浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2015-01-01から1年間の記事一覧

人間に関わるなにごとも、私にとって無縁ではない

川本隆史『現代倫理学の冒険』(1) 川本の「人間に関わるなにごとも、私にとって無縁ではない」という言葉に、私は社会科学者の良心をみた思いがする。川本はこう述べている。 「人間に関わるなにごとも、私にとって無縁ではない」との姿勢を崩さずに、し…

風土の樹液  マーク・トビー(Mark Tobey)

大岡信『抽象絵画への招待』(11) マーク・トビー(1890-1976)とは、20世紀西洋人名事典によれば, 米国の画家。元・コーニッシュ・スクール教授。ウィスコンシン州センタービル生まれ。シカゴ・アート・インスティテュートなどで学び、コマーシャル美術…

「神の存在」という幻想(2) 神秘体験(宗教)は、精神疾患である?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(13) 神秘体験(スピリチュアル/宗教体験)は病気(精神疾患)なのかどうかに関して、ラマチャンドランは、神経科学者として興味深い議論をしている。 大脳辺縁系のなかを神経インパルスの衝撃が大量…

フレデリック・デラリュー(Frederic Delarue)

YYJT(5) YYJTというのは、既存のジャンルでは、イージーリスニングとかニューエイジですが、そういう分類にはあまりこだわりません。キーワードは、「優雅」、「安らか」、「上品」、「知的」です。それらが感じとれる曲であれば、YYJTとします。 今…

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(5) SDGs 合意形成のプロセス

国連サミットは、2015年9月25日、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した(この中に一連の持続可能な発展目標(SDGs)が含まれる)。この持続可能な発展目標(SDGs)は、どのようにして合意に至ったのか。…これは、物事を決める手続きを考え…

法とは何か(5) 法化-規制緩和-老後破産

平野・亀本・服部『法哲学』(5) 前回は、経済社会の変動とともに、第1に、市場メカニズム(自由競争)が正常に機能するために、国家が法を通じて経済秩序に介入しなければならなくなった。第2に、近代法の基本原理である「人格の対等性」を確保するため…

自分の言葉で評することの放棄 → 芸術批評という胡散臭い職業の成立

岡田暁生『音楽の聴き方』(3) 音楽を「する」「聴く」「語る」の分裂 岡田は、「芸術批評」と言う胡散臭い職業が、一体どういう経緯で生まれてきたのかについて書いている。 封建時代の芸術創作は顧客(王侯ならびに教会)による芸術家の丸抱えであったの…

公共的価値と社会国家(1) 「誰も置き去りにしない」ために

齊藤純一『公共性』(9) 公共的価値と社会国家 「ニーズ解釈の政治」は、その充足を権利として要求しうるニーズの定義をめぐって争われる。新しいニーズ解釈は、民主的な意思決定の手続きを経て、そのニーズがやがて新しい権利へと翻訳されることを求めて…

志向性(1) 痛みの感覚は、X を表象している

金杉武司『心の哲学入門』(8) 今回から、第3章「心の志向性」である。「志向性」とはなにか。それはなぜ「心」の基本的特徴といわれるのか。 最初に志向性とは何々であるという定義から入るより、例示からのほうが理解しやすい。 「雨が降っている」とい…

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(4) 誰も置き去りにしない - 持続可能な開発目標(SDGs)

2015年9月29日のクローズアップ現代(NHK)は、「国連70年② "誰も置き去りにしない"世界を目指して」を放送した。http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3708.html 世界で激しさを増す過激組織の活動。今も止むことがない民族間などの対立。国連は、…

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(3) シリア内戦と国連

前回までに述べてきたこと、言いたかったことは、概ね以下の通りである。 日本の安全保障を考えるということは、世界の平和と安全を考えることである。自国のみの平和と安全を考えれば良いというのは、国家エゴである。 世界の平和と安全を達成するのに必要…

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(2) 誰のための、何のための戦いなのか?

難民キャンプにて www.youtube.com これは映画ではなく、「現実」である。自分が、この難民キャンプの食料を求める人たちの一人であるとしたら、どのように感じ、何を考えるだろうか。自分の子どもや親が、この難民キャンプの食料を求める人たちのなかにいる…

グローバルなコミュニティーの責任ある一員となる(1) 「国家の呪縛」と「シリア難民問題」

私は、時事問題を論ずるだけの勉強をしていないので控えているのだが、昨今の政治動向に無関心ではない証として、断片的ではあるがメモを残しておくことにしよう。 1.国家の呪縛 今般の安全保障関連法案の論議において、これを憲法問題、民主主義の問題、…

演技

北川東子『ジンメル-生の形式』(13) 芸術と大衆 ベルリン、1912年。ウンターデンリンデン通りのオペラハウスでは「ドン・キホーテ」がかかっている。古典的だ。劇場前の垂れ幕が冬の冷たい風にあおられてひらめくなかを、人々が着飾って次々と馬車で劇…

土俗の記憶とその昇華 - 菅井汲、利根山光人

大岡信『抽象絵画への招待』(10) ジャクソン・ボロック(1912-56) 菅井汲(1919-96) 利根山光人(1921-94)

「神の存在」という幻想(1)

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(12) ラマチャンドランは、局所発作(てんかんの発作)が大脳辺縁系に起こると、次のような症状になるという。 患者は、強い恍惚感から深い絶望、破滅のときが迫っているという気持ち、はては極度の怒…

法とは何か(4) 近代法から現代法へ マイクロソフトとアマゾン

平野・亀本・服部『法哲学』(4) 近代法の成立とその諸原理 近代法の限界と現代法の特質 Microsoftの独禁法訴訟 Amazonの労働環境 市場経済 自由競争 社会経済的弱者

彼岸花 & 彼岸花星雲

まず彼岸花に関する基礎知識から、 あちこちで、彼岸花が咲いています。毎年見事にお彼岸の頃に咲くので、この花はまさに「秋分の目印」といえるでしょう。彼岸花はなんとも不思議な植物で、葉が茂るのはなぜか冬の間だけ。春には葉を枯らして、夏の間は地下…

「ことば」を欠く者たちへの視線

齊藤純一『公共性』(8) 安保(戦争と平和)の現実と同様に、文末の参考1~3にあげたような現実もしっかりと把握しておくべきだろう。(彼らは「ことば」を欠く者たちではなかろうか)。安保を論ずる人たちは、この現実をどう論ずるのだろうか。 私たち…

クオリア(4) 説明のギャップ

金杉武司『心の哲学入門』(7) 「物的一元論」は誤りであるとする主張する議論に、「想定可能性論法」と「知識論法」があった。金森は、このいずれの論法も、論証としては不十分であると言っている。(私には、いずれの論法も、そしてそれが不十分であると…

存在の内の目立たない切片

北川東子『ジンメル-生の形式』(12) 創造的断片性 『哲学的文化』と名づけられた論集には、有名な「取っ手」をはじめとして、「冒険」や「廃墟」そして「流行」など、いかにもジンメル的な主題についての哲学的エッセーが収められている。雑多ともいえ…

富裕層はリベラルアーツを学ぶ(4) あなたは、どんな人ですか?

2015年9月9日、経団連は「国立大学改革に関する考え方」と題する声明を発表し、産業界は「即戦力を有する人材」ではなく、その対極にある人材を求めているとした。 IB(インターナショナル・バカロレア)が目指す学習者像。文科省の教育政策は、今後どうな…

風土と抽象 - アーシャル・ゴーキー (Arshile Gorky)

大岡信『抽象絵画への招待』(9) ゴーキー(1904-1948)について、藤枝晃雄は次のように述べている。 ウッチェロ、アングル、ピカソ、ミロ、カンディンスキー、ロベルト・マッタらの影響を受け、作風を転々と変えていったが、30年代の終わりになって自己の…

ラルフ・バッハ(Ralf Eugen Bartenbach)

YYJT(4) 私は、これらの曲を寝転がって聴いています。 今回は、Ralf Bach/Ralf Eugen Bartenbach です。(ヨハン・ゼバスティアン・バッハ Johann Sebastian Bachではありません。) YYJTとはちょっと違うかもしれませんが、そこは大目に…。 最初に聴い…

存在の耐えられない類似

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(11) 今回は、第8章「存在の耐えられない類似」である。最後のほうに出てくる「人種差別」、「アイデンティティ」についての言及は興味深い。脳神経科学の無味乾燥な説明にとどまらないところが本書…

法とは何か(3) 悪法問題-「悪法」でも、法は守らなければならないのか?

平野・亀本・服部『法哲学』(3) 簡単に言えば、「法は守らなければならない」。…あるルールを定めるということは、守られることが当然の前提となっている。ルールを定めるが、「守らなくてもいいよ」などと言っては、ルールを定める意味がないだろう。実…

ピアノ演奏のあるボタニカルカフェ

岡田暁生『音楽の聴き方』(2) 最初に岡田の話を聞き、その後ちょっと余談になるかもしれませんが、私にとっては本論のサロン音楽についてふれましょう。 神の代理人としての音楽批評 19世紀における音楽の神聖化と不可分の関係にあったのが、ロマン派の…

複数性と公共性(3) 「社会的なもの」への批判の陥穽

齊藤純一『公共性』(7) 齊藤の説明から察するに、アーレントは「社会的なもの」を、以下のような意味で使っているようだ。 ――社会にはさまざまな規則(法と言っても良い)がある。その規則は規範である(法は守らなければならないものである)。社会の成…

クオリア(3) 知識論法

金杉武司『心の哲学入門』(6) 金杉は、「物的一元論」が誤りであることを論証しようとする議論に、「想定可能性論法」と「知識論法」があると言っている。今回は「知識論法」の話である。 まず、心の状態に関する事実を「心的事実」と呼び、物理的状態に…

夏の風物詩スペシャル

今年ももうすぐ夏が終わります。特に何ということもなく季節が移り変っていきます。 特別に悲観することもなく、特別に楽観することもなく……。 ・いまこの瞬間における世界の断片 ・忘却 ・渦流のリアル