浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

COVID-19:「新型コロナで死ぬ」とはどういうことか?(1)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するメモ(33)

※ 当ブログのCOVID-19関連記事リンク集 → https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2021/05/06/210000

まず、死者数の推移をみておこう*1。(厚労省の「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」の「年齢階級別死亡数」のグラフ数字から作成)

年齢階級別死者数(週別・新規)

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週別にみた死者数は漸増している。しかし、7/1までの累計973人に対して、7/2~9/2累計で298人(約3分の1)である。現在重症者が200人超いるので、7/2以降の累計は500人を超えると考えられる。ただ、この死者がいつ感染し(検査陽性)、いつ発症し、いつ重症になったのかは分からない

 

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2020/07/25の記事:COVID-19:新型コロナウイルス感染症の「死者」の定義、2020/08/21の記事:COVID-19:風が吹けば桶屋が儲かる -コロナで死ぬということ- で、「コロナで死ぬ」(COVID-19で死ぬ)とはどういうことなのか疑問を呈したのだが、今回はその続きである。

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https://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2020/07/283942.php

 

コロナの死の定義に関して、以下のような記事があった。

読売新聞(2020/6/14)*2によれば、調査の結果、自治体により「死者の定義」に差があったという。

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医師らが「死因は別にある」と判断した場合は、コロナの死者としてカウントしないというのは極めて真っ当な定義だと思われる。致死率を過大に算定することになるし、打つべき対策にも影響するだろう(目の前の患者の命を助けることが優先するはず)。

しかし、厚労省は、2020/6/18付の事務連絡で、「新型コロナウイルス感染症患者が死亡したとき」には、厳密な死因を問わず、「新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、入院中や療養中に亡くなった人」を死亡者数として厚労省に報告することを求めることとした*3。何故か。

それをみる前に、日経新聞(2020/8/14)の記事*4をみておこう。

  • 英政府は新型コロナウイルスによる死者数の定義を変更し、約5300人を統計から除くと発表した。11日夕時点の統計から反映する。人口の約85%を占めるイングランドでは検査で陽性になった場合、その後に別の理由で死亡しても死者数に数えていたこれを「陽性判明後、4週間までの死亡」に改めた結果、大幅な下方修正になった。
  • 英政府は当初の定義では交通事故や他の病気で亡くなった人まで、コロナの死者にカウントされているとして、7月中旬から定義の見直しに着手していた。
  • コロナ関連の死者数を巡っては国ごとに集計方法に違いがある
  • 人口あたりの死者数が世界最悪レベルのベルギーでは「死者の定義が広すぎる」との指摘も出ている。

WHOは、死者の定義をしていないのだろうか。

 

厚労省の死者の定義変更は、次のような理由による(事務連絡)。

  • 新型コロナウイルス感染症を原死因とした死亡数については、人口動態調査の「死亡票」を集計して死因別の死亡数を把握することになりますが、死因選択や精査に一定の時間がかかります
  • 厚生労働省としては、可能な範囲で速やかに死亡者数を把握する観点から、感染症法に基づく報告による新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、亡くなった方を集計して公表する取扱いとしています。

特に、人口動態統計との整合性が意識されているのではないかと思う。(続く)

長くなりそうなので、以下は次回に回す。

*1:児玉龍彦(東大名誉教授)は、参議院予算員会(2020年7月16日)で、「このままでは来月は目を覆うような惨状になる」と言っていたが、これが「目を覆うような惨状」なのだろうか。

*2:2020/06/14 「コロナ死」定義、自治体に差…感染者でも別の死因判断で除外も 参照

*3:2020/07/25 COVID-19:新型コロナウイルス感染症の「死者」の定義 参照

*4:2020/08/14 英、コロナ死者数5300人下方修正 発症からの期間見直 参照