浮動点から世界を見つめる

「井蛙」には以って海を語るべからず、「夏虫」には以て冰を語るべからず、「曲士」には以て道を語るべからず

2018-01-01から1年間の記事一覧

私の居場所がない 社会的排除と包摂

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(3) 今回は、第3章 「つながり」「役割」「居場所」をとりあげる。 社会的排除 人の生には、金銭的・物質的な指標では測れない、「質の問題」があることも事実である。ある程度の水準の金銭的・…

<「Aとも言えるが Bとも言える」は、何も考えていないだけ>なのだろうか?

たまたま、<「Aとも言えるが Bとも言える」は、何も考えていないだけ。>という記事が目に入ったので、これについて少し考えてみよう。 ブロガーの「ちきりん」さん(以下、Yと呼ぶ*1)が、こんなことを言っているらしい。検索してみたら、<「Aともいえる…

ヒトゲノムの完全解読 その後は?

山口裕之『ひとは生命をどのように理解してきたか』(1) 今回から、『ひとは生命をどのように理解してきたか』を読むことにする。本書の構成は、 序章 生物学と哲学 第1章 生命科学の急発展と「遺伝子」概念の揺らぎ 第2章 生物学の成立構造 第3章 二つの…

Helene Fischer、Isgaard、Katherine Jenkins、五輪真弓

YYJT(15) 1.The Power Of Love/Helene Fischer The Power Of Love - Helene Fischer (with lyrics) 2.Liebe dich/Isgaard Schiller Ein schoner tag Live mit Isgaard 3.Home/Katherine Jenkins Katherine Jenkins - Home 4.恋人よ/五輪真弓 이…

生殖医療技術と生命倫理 夫のものではない精子、妻のものではない卵子を使って子どもを持ちますか?

立岩真也『私的所有論』(11) 第3章 批判はどこまで行けているか は、人工授精・体外受精等の生殖技術への批判の言説を検討している。前回は、その内容をみる前の予備知識の収集で終わった。立岩は、このテーマを「私的所有・自己決定、市場への境界設定…

デモクラシーとは何か?

平野・亀本・服部『法哲学』(50) 今回は、第6章 法哲学の現代的課題 第1節 デモクラシーとは何か である。 「デモクラシー」という言葉の原義は、「民衆による支配」である。デモクラシーという言葉は、その制度面に着目するときは「民主制」と訳され、…

目に見えない権力 パノプティコン

久米郁男他『政治学』(11) 今回は、第5章 国家と権力 第3節 権力をめぐる諸理論 である。*1 どのような国家観をとるにせよ、政治の問題を考える上で、権力の問題は、議論の中心的な位置を占めざるを得ない。しかしながら、権力とは何か、ということを巡…

千住博 美を生きる

千住博(1958-)の『ウォーターフォール』は、1995年のヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞した。次のような作品である。(以下、画像はすべて、公式サイトより。http://www.hiroshisenju.com/) THE 46TH VENICE BIENNALE 1995 Venice, Italy http://…

ブログのデザインを変更しました

このブログをはじめて4年間ほど同じデザインを使ってきましたが、やや不満な点がありデザイン変更してみました。実際には、「はてなブログ」が用意してくれているテーマの適用を変更し、ほんの少しカスタマイズしたという程度ですが…。(カスタマイズといっ…

幸せホルモン アタッチメント理論 皮膚感覚の身体化認知

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(16) 今回は、第10章 感覚 のうち、「皮膚感覚」である。 皮膚感覚は、全身の皮膚に感覚点が点在していて、そこにある受容器に接触する刺激があると、神経の信号として脳に伝えられることにより生じます…

いくらお金があれば、「健康で文化的な最低限度の生活」を送れるのか?

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(2) 前回の記事(ケンカツ(健康で文化的な最低限度の生活)、「ふつうの生活」)の続きです。 「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護の基準が、来年2019年度より見直される。生…

生きているとはどういうことか? もう一度根元的な問いを問い直すこと

木下清一郎『心の起源』(27) 第6章(最終章)は、「心の未来はどうなるか」である。 [前章までで]ひとまずの結果は得られたとして、筆を止めても良いのかもしれない。しかし、心の世界についてはなお気がかりなことが残っている。それは例えば、心の世…

フィオナ・ジョイ・ホーキンズ(Fiona Joy Hawkins)

YYJT(14) 目を瞑り、まわりの風景や雑音を遮断して、聴いてみてください。Fionaのピュアな音の世界が広がります。 http://www.fionajoy.com/mediareviews/90-sydney-morning-herald.html 1.A Winter Morning www.youtube.com 2.Crystalized Love www.youtube…

不妊治療 生命倫理

立岩真也『私的所有論』(10) 今回は、第3章 批判はどこまで行けているか 第1節 自己決定の条件 である。本章のタイトルにある「批判」とは、「生殖技術(特に代理出産)に対する(倫理的)批判」である。第1節は、この批判を「自己決定」の観点から検…

法と経済学 コースの定理

平野・亀本・服部『法哲学』(49) 今回は、第5章 法的思考 第3節 法的思考と経済学的思考 である。 「法と経済学」または「法の経済分析」と呼ばれる法アプローチは、法と経済のかかわりを説くというよりも、法学の内部に経済学的思考を導入しようとする…

強行採決で成立した法令は遵守する必要がない !?

久米郁男他『政治学』(10) 今回は、第5章 国家と権力 第2節 近代国家とその正統化原理 である。 2013年以降、強行採決が以下の通り行われた。(Wikipedia) 特定秘密保護法(2013年) 安全保障関連法案(2015年) TPP承認案、関連法案(2016年) 介護保険…

エレクトリックバイオリン ヤマハのデザイン哲学

柏木博『デザインの教科書』(8) 前回までの色彩学の話はいったん中断し、別途あらためて再開することにしたい。 また本書の読書ノートも、本書の内容が私の期待するものとは異なったので、終了する。 では私の期待するものとは何であったか。 -----------…

におい(匂い、臭い)③ スメルハラスメント(スメハラ)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(15) 化粧品会社マンダムの調査によると、職場の「嫌だ」と感じるニオイは、1位は「体臭」で64.9%、続いて「口臭」59.3%、「タバコのニオイ」55.5%である。(2017/5/25、https://www.mandom.co.jp/releas…

におい(匂い、臭い)②  若い女性の「甘い香り」

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(14) ロート製薬の研究によると、女性には、若い頃特有の甘い香りが存在し、それは年齢とともに減少し、曲り角は35歳付近にあり、その正体は、ラクトンC10/ラクトンC11という成分であるという。(https:…

におい(匂い、臭い)① 納豆 シュールストレミング

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(13) 今回は、第10章 感覚 のうち、「におい」である。本書の説明は9行ほどあるが、全く面白くないので、テキストを、東原和成の「あなたの知らない「匂い」の力-食事から恋愛まで、嗅覚から見るよりよ…

入院生活 人の優しさ

先日、腰痛に関する記事を書いて数日後の夜、トイレに行こうと体を動かそうとした瞬間、腰に激痛が走り、全く身動きできないことに気づいた。幸い隣に妻が寝ていたので、救急車を呼んでもらった*1(一人で寝る時は、携帯など外部との連絡手段を確保している…

プラシーボ効果 現代の国民病「腰痛・肩こり」は、治療できません

私は、基本的に自分語りをしない方針なのですが、今回は自分語りから話を始めます。 先日、咳をしたとき、腰を痛めてしまいました(以前、ぎっくり腰になったこともあります)。長年のデスクワーク(姿勢の悪さ)による疲労が閾値を超えたものではないかと思…

ケンカツ(健康で文化的な最低限度の生活)、「ふつうの生活」

阿部彩『弱者の居場所がない社会-貧困・格差と社会的包摂』(1) 先週より、生活保護をテーマにしたドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)が始まった。 日本国憲法第25条 第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権…

心の世界 入れ子 壺中の天

木下清一郎『心の起源』(26) 今回は、第5章 心の世界を覗きみる 第6節「心は一つの世界をなしている」である。 「生物世界」と「心の世界」が、次のように対比されている。 生物世界 心の世界 特異点 核酸の出現 統覚の出現 基本要素 遺伝子 表象 基本…

人生いろいろ(男性歌手特集)

YYJT(13) 1.Not The Same Dreams Anymore/Oscar Benton www.youtube.com 2.Kill the Pain/Accept (painter:Pier Toffoletti) www.youtube.com 3.Googoosha/Maxim Fadeev www.youtube.com 4.Cuarto de la banda/The Sexican www.youtube.com 5…

私的所有の無根拠と根拠

立岩真也『私的所有論』(9) 本章(第2章)で、立岩が言わんとしていたことは何か。 何がある人のもとにあるものとして、決定できるものとして、取得できるものとして、譲渡できるもの、交換できるものとしてあるのか、またないのか。そしてそれはなぜか。…

法的正当化、解釈の検算、整合性、理性性

平野・亀本・服部『法哲学』(48) 今回は、第5章 法的思考 第2節 制定法の適用と解釈 第3項 解釈技法の使い方 の続きである。 法的正当化に対する制約 法的な正当化には、それを他の種類の正当化から区別する制約がある。第1に、法的正当化において援用…

三つの国家観

久米郁男他『政治学』(9) 今回は、第5章 国家と権力 第1節 三つの国家観である。 近代国家の定義 本書は、近代ヨーロッパが生みだした近代主権国家に限定した場合の近代国家を次のように定義する。 第1に、国境というかたちで明確に区切られた固定的な領…

ヒュートーンシステムとは?

柏木博『デザインの教科書』(7) 前回は、第6章 デザインを決める具体的な要素 第1節 色彩に関連して、本書ではとりあげていない「花嫁の母のドレスの色」と色彩学の基礎(光源色と物体色)についてふれた。今回はその続きであるが、入門者向けのすぐれた…

音感覚の心理学(声と種の存続、音の風景、BGM、錯聴)

長谷川寿一他『はじめて出会う心理学(改訂版)』(12) 今回は、第10章 感覚 のうち、「音を聞くしくみ」である。 音は、空気や水、物体などを伝わる振動である。音はさまざまな物理的な性質を持っているが、特に、1秒間に繰り返す振動の回数のことを周波…