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気の向くままに

形而上学・倫理学・法哲学・社会学・自然学・美学・その他諸々について書いてみたい幼稚園児のブログです。まあ、しかし焦らずにゆっくりと、気の向くままにいきましょう。

読書ノート

バウハウス(建築の家)の芸術家たち

末永照和(監修)『20世紀の美術』(6) 1919年に、ドイツの建築家ヴァルター・グロピウスは、ワイマールにバウハウス(建築の家)と呼ぶ国立の美術工芸学校を創設した。バウハウスは、…産業と芸術との融和と協同を図り、生活に応用する道を探った。…多く…

「囚人のジレンマ」と「安全保障」(部族間の縄張り争い)

加藤尚武『現代倫理学入門』(21) 第10章は、「正直者が損をすることはどうしたら防げるか」で、「囚人のジレンマ」と「アローの不可能性定理」が扱われている。今回は、そのうち「囚人のジレンマ」を取り上げる。 本書の「囚人のジレンマ」は、全然面…

監視国家とジマーマンのPGP

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(5) 暗号技術をネットに放流-PGP暗号 暗号と戦争の長きにわたる歴史が証明するように、暗号は政治的に重要な位置を占めている。とすれば、暗号技術の独占は軍事力のバランスを非対称にし、強者による弱者の支配に直結…

生命はいかにして誕生したのか?

木下清一郎『心の起源』(2) 今回は、「心が生まれてくるまでの道のり」で、「核酸の出現」、「細胞の誕生」をとりあげる。以降、「個体の誕生」、「心の誕生」、「利己的遺伝子」と話が続く。 本書の記述に従い(生物学の専門的なことに立ち入らないで)…

懐疑主義 デーモン仮説 水槽脳仮説 猿の尻笑い

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(7) 今回から、第3章 疑いの泥沼からどう抜け出すか-哲学的懐疑主義と文脈主義 である。 疑いだせばきりがない。どこまでも問い続けていくと、「宇宙の成立」や「物質と精神」の話にいきつく。「疑いの泥沼」にはま…

市場(2) 政府の失敗 市場の失敗

平野・亀本・服部『法哲学』(24) 政府の失敗 中央集権的な政府機能が効率的でないことを、通常「政府の失敗」という。主要なポイントは3点にわたる。 官僚機構が非効率…集権化された政府機能を果たすために組織運営費用がかかり、各部局の機能は配分さ…

不平等論(5) 「誰もが支え合う共生社会」のビジョン

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(10) 前回、立岩は、次のようなことを言っていた。 中央指令型の統制経済はうまくいかない。実際にうまくいかなかったし、理論的に正当化もできない。 協同組合主義は「参加」とか言っているが、なんか「だる…

キャバレーのピアニスト エリック・サティの音楽とは?

岡田暁生『音楽の聴き方』(15) ケージ美学のルーツ それだけではない。ケージたちの思想は決して単なる珍奇な思いつきではなく、ある歴史的必然性の中で出てきたものであることも理解しておかねばならないだろう。例えばケージ美学のルーツの一つとして…

普遍化可能性の議論(2) 「おい、山田君、そこの自転車をどけてくれ」

加藤尚武『現代倫理学入門』(20) 今回は、第9章「思いやりだけで道徳の原則ができるか」の続きである。加藤は、ヘア(1919-2002、イギリスの哲学者)の普遍化理論について、次のように述べている。 彼が挙げる例はだいたいこんな話である。私が大学の駐…

情報共有と情報秘匿  公開鍵 RSA暗号とは?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(4) 今回から、第2章 ハッカーと権力の衝突 に入る。テーマは、「情報共有と情報秘匿」である。塚越は、まず情報秘匿のツールである「暗号」について説明している。 https://tozny.com/wp-content/uploads/2014/11/cr…

心とは何か 瓢箪鯰(ひょうたんなまず)

木下清一郎『心の起源』(1) 本書の副題は「生物学からの挑戦」である。怪しげな本ではない。 心とはいったい何なのか。…いったい、心とはどこからやってきたものであろう。植物などを考えてみればわかるように、すべての生物が私たちと同じような意味での…

デ・ステイル(共通性と普遍性をめざして) モンドリアンとドゥースブルフ

末永照和(監修)『20世紀の美術』(5) デ・ステイルとは、モンドリアン(1872-1944)、ドゥースブルフ(1883-1931)らが、オランダのライデンで1917年に創刊した美術雑誌およびそれに基づくグループの名称である。 スタイル(様式)を意味するオラン…

定義 ラクダ(駱駝)とは?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(6) 今回は、第2章「科学」だってこわくない の第6節「科学的に実証」はどれだけ信用できるかと、第7節 科学の思考法を日常に生かす をとりあげる。 最初に、「科学的に実証」はどれだけ信用できるか であるが、 科…

市場(1) 自由? 普遍性? 効率性?

平野・亀本・服部『法哲学』(23) 今回は、第4章 法と正義の基本問題 第3節 市場-効率性と倫理 である。平野は、「経済市場に対する法的規制の基本的な役割は何か。全体社会の中に市場を適切に位置づけるためには、どのような考慮が払われなければなら…

不平等論(4) 協同組合-市場経済ではない何か

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(9) 「仕事」は、金儲けのためだけではなく、それ自体「生きがい」でもあるという論点について、稲葉は次のように述べる。 稲葉 人に何か有意義な仕事を割り当てる社会が望ましいとは思っていても、その割り当…

ジョン・ケージとサウンドスケープ(音風景)

岡田暁生『音楽の聴き方』(14) 岡田がこれまで説明してきたのは、「構造的聴取」と呼ばれるものだそうである。 (構造的聴取においては)個々の音は、それこそ言語と同じように、意味の担い手である。音による言語的/建築的構築物のパーツだと言っても…

普遍化可能性の議論(1) 他人の痛みがわかりますか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(19) 今回は、第9章「思いやりだけで道徳の原則ができるか」である。 相手の気持ちになってあげることが道徳の基本だという考え方は、東洋でも西洋でも語られている。…「わが身をつねって人の痛さを知れ」と諺に言うのは、痛…

対抗文化 パソコンとジーンズ

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(3) インターネットの前身が米国防総省の高等研究計画局(ARPA、アーパ)が構築したコンピュータ・ネットワーク「アーパネット(ARPANET)」であることは、よく知られている。 注目すべきは、コンピュータ間の情報交換…

人間は宇宙で特権的な地位を占めてなどいない

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(31) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。今回は、6.警戒の自己と7.概念の自己と社会的自己である。(…

ロシア・アヴァンギャルド(シュプレマティズムと構成主義)

末永照和(監修)『20世紀の美術』(4) 今回は、第3章 抽象と構成 である。本章に出てくる絵画で魅力的なものはほとんどないので、スルーしようかと思ったが、いくつかの用語については、知っておいても悪くはないだろうと思い直し、採りあげることにし…

反証主義 「夫は浮気をしている」という主張は「妄想」である(?)

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(5) 科学と疑似科学の間の線を引く「線引き問題」(demarcation problem、境界設定問題)と呼ばれる問題は、哲学の中でも科学哲学という分野において長らく論争の的になってきた。これが科学哲学の主要問題だったのは…

自由(2) リバタリアニズムの根拠と問題点

平野・亀本・服部『法哲学』(23) 個人の尊厳と自己所有 平野は、リバタリアニズム(自由至上主義)は、論者によりいくつかの点で違いがあるが、次の3点に一致がみられると言っていた。(自由(1)リバタリアニズム 参照) ① 個人的自由の擁護 ② 拡大国…

不平等論(3) フェアプレイの精神

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(8) 前回、立岩は次のようなことを述べていた。(不平等論(2)効用の個人間比較を考える 参照) (1) とりあえずミニマル…基本は「自由放任」、但し、競争に負けても、飢え死にしない程度の水と食料は与えよ…

音楽…「言語からサウンドへ」のパラダイム転換

岡田暁生『音楽の聴き方』(13) 指揮者のアーノンクールは、19世紀に入って生じた音楽のパラダイム転換を、次のように定式化しているという。 「単純かつやや大まかではあるが、私は「1800年以前の音楽は話し、それ以後の音楽は描く」と言いたい。前者…

正義論(2) 「正義の原理を、純粋な形式で決める」ということ

加藤尚武『現代倫理学入門』(18) 今回は、第8章「正義の原理は、純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか」の続きである。正義の具体的内容について論ずるものではない。前回述べたように、「倫理的な命題に関しても、体系的な思考、演繹的な思…

ハッカー ライフゲーム(生命の誕生、進化、淘汰)

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(2) コンピュータの可能性に魅了された人々はハッカーとなり、生きがいを与えられた。彼らはコンピュータに自分を委ね、コンピュータに自分を投影する。それは1957年にソ連によって打ち上げられた世界初の人工衛星スプ…

クオリア ホムンクルス(小人) デカルト劇場

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(30) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。今回は、4.記憶の自己~5. 統合された自己である。 体現化さ…

青の時代(ピカソ)、キュビスム、未来派

末永照和(監修)『20世紀の美術』(3) 今回は、第2章 空間と時間の分析=総合 である。西洋美術史を辿ろうという気はないが、キュビスムや未来派がどういうものか位は知っておきたい。 第1次大戦前の数年間に2つの前衛的な芸術運動が展開された。ス…

(権威に訴える論証)生物学者のKI教授によれば……

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(4) 今回は、第2章「科学」だってこわくない-科学と疑似科学のクリティカルシンキング である。 伊勢田は、①権威からの議論、②対人論法 について述べている。 ものごとを鵜呑みにしない、というクリティカルシンキン…

自由(1) リバタリアニズム

平野・亀本・服部『法哲学』(22) 今回は、リベラリズム(liberalism、自由主義)ではなく、リバタリアニズム(libertarianism、自由至上主義)の話であるが、その前に「自由」について簡単な説明がある。 私たちは特定の信仰を持つことを強要されない[…

不平等論(2) 効用の個人間比較を考える

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(7) 立岩 今の話で言うと、リソースと呼ぶかはともかくとして、それ[モノ・情報、身体的・精神的能力]は、結局何らかの形で人に使用され利用されるから意味があると考えるわけでしょ。これは要するに手段な…

正義論(1) 定言命法と功利主義

加藤尚武『現代倫理学入門』(17) 今回は、第8章「正義の原理は純粋な形式で決まるのか、共同の利益で決まるのか」である。正義論が、こんなテーマから始まるのはいささか奇妙な感じがするが、このまま読み進めていこう。(私の読書ノートは、できる限り…

ハッカーは、コンピュータ犯罪者なのか?

塚越健司『ハクティビズムとは何か』(1) Amazonの内容紹介より サイバーテロリスト? それとも正義の味方? ウィキリークスやアノニマスは新しい社会を生み出すのか? アノニマス活動により政府や企業にさまざまな被害が出たり、ウィキリークスによって各国…

私は「操り人形」か?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(29) ラマチャンドランは、「自己を特徴づける特性」について、ポスドクの研究生ウィリアム・ハ―スタインと、以下のようなリストを作った。 体現化された自己 感情の自己 実行の自己 記憶の自己 統合…

「音楽は国境を越える」というイデオロギー?

岡田暁生『音楽の聴き方』(12) いま読んでいる箇所は、第3章「音楽を読む-言語としての音楽」である。音楽を読むとは、音楽(クラシック音楽)は、言語的な構造を持つので、それは「読む」ものでもある、ということであった。 音楽は聴くものであると…

「思いやりの原理」で、話し合うこと

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(3) 「今度の休日にどこへ出かけようか」の楽しい話や、「新商品Aの販促にどういう手を打つか」のビジネス上の問題、さらには「難民をどう支援するか」のシリアスな問題など、話し合い(議論)を必要とする無数の問題…

功利主義(2) その問題点は?

平野・亀本・服部『法哲学』(21) 功利主義の考え方は、これまで様々に批判されてきたが、平野はこれを整理している。 ①個々人の別個独立性に真剣な考慮を払っていない。 功利主義の方法は、公平原則によって個人の善観念に等しい重要性を与えるから、そ…

不平等論(1) 「機会の平等」と「結果の平等」

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(6) 今回から、「第3章 なぜ不平等はいけないのか」に入る。 立岩 分配を考えるときに、それを強制を介さないで行うのがよいか、強制があってよいと考えるかで分かれる。…権利ということを少しだけでも強い意…

コルヴィッツの『農民』とミュラーの『ジプシー』

末永照和(監修)『20世紀の美術』(2) ケーテ・シュミット・コルヴィッツ(Käthe Schmidt Kollwitz、1867- 1945)は、ドイツの版画家、彫刻家。 ベルリンとミュンヘンで美術を学んだ後、1891年に貧民を治療する医師の妻としてベルリンの労働者街に住み…

ヒュームの法則は論駁されたのか?

加藤尚武『現代倫理学入門』(16) <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか の話の続きである。 加藤は、自然主義的誤謬批判の立場とサルトル(フランスの哲学者、1905-1980)の実存主義とは、まったく変わりがないとして、サルト…

悲劇のロザリンド嬢? データ盗用の「二重らせん」論文?

吉成真由美『知の逆転』(13) ワトソンの著作『二重らせん』の内容紹介 生命の鍵をにぎるDNAモデルはどのように発見されたのか? 遺伝の基本的物質であるDNAの構造の解明は今世紀の科学界における最大のできごとであった。この業績によってのちにノーベル…

「8の字ダンス」をしているミツバチは、「意識」があるのだろうか?

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(28) ミツバチは、いわゆるミツバチの8の字ダンスを含む、非常に精巧な形式のコミュニケーションをすることで知られている。偵察係のミツバチは花粉のある場所を見つけると巣に帰り、精巧なダンスを…

その主張(意見)の根拠は?

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』(2) 別に「論文」を書かなくても、自分の意見を言う場合に、どういう話し方をした場合に説得力があるか(合意を得やすいか)を考慮しておくことは有意義だろう。 前回宿題としたのは、「ある主張をしていて、文末(結…

功利主義(1) その特徴(特質)は何か?

平野・亀本・服部『法哲学』(20) 今回より、第4章 法と正義の基本問題(平野仁彦)に入る。第1節は、「公共的利益」である。 公共的利益とは、公の必要に関わる共通利益のことであるが、それには、平和、治安、秩序維持から、資源、環境、運輸、公衆衛…

市場万能論(3) 投資、投機、バブル

稲葉振一郎・立岩真也『所有と国家のゆくえ』(5) 立岩 この『「資本」論』[稲葉の著作]について言えば、ある種ポジティブな、いま考え中っていう以上のメッセージを受け取ってしまう。それは誤読であるということで終わるんだったら終わっていいし、そ…

野獣たち(フォーヴ) 色彩の奇行のなかで錯乱している

末永照和(監修)『20世紀の美術』(1) 最近、宇佐美圭司の「20世紀美術」を読み始めたばかりであるが、本書と並行して読むことにする。 ただ単に本書の内容を紹介・要約しようというのではない。本書の記述を参考に、「作品」を見て(WEB上でしかない…

自然主義的誤謬 ヒュームの法則 直覚主義(直観主義) 情緒主義(情動主義)

加藤尚武『現代倫理学入門』(15) 第7章 <……である>から、<……べきである>を導き出すことはできないか に入ると言いながら、本書を離れて、ウェーバーとシュモラーの「価値判断論争」を見てきた。しかし、あえて、その「まとめ」はしないでおく。 加…

本当の答えをみつけよう (ワトソン)

吉成真由美『知の逆転』(12) 今回は、ジェームズ・ワトソン(James Watson、1928-)に対するインタビュー。1962年、クリック、ウィルキンスと共に、DNA二重らせん構造の発見で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。インタビューは、2011年。 𠮷成…「…

クオリアの特徴 ためらいと決断

ラマチャンドラン,ブレイクスリー『脳のなかの幽霊』(27) クオリアの話の続きである。クオリアとは、主観的感覚(「痛み」「赤」「トリュフ添えのニョッキ」といった主観的性質を感じる生[なま]の感覚)のことであった。このような主観的感覚は、どの…

クラシック音楽 コース料理 さすらいの楽師

岡田暁生『音楽の聴き方』(11) 岡田は、多楽章形式の音楽とはコース料理であるという。これは分りやすい喩えだ。 普通に考えれば、四楽章の交響曲といっても、そこには四つの別々の「曲」があるだけである、なのに、どうしてそれらが一つになって、もっ…